「ググる就活」が生んだ罪--元Google人事が抱く「日本の就活」の違和感 - (page 2)

草深生馬(RECCOO COO兼CHRO)2021年07月02日 09時00分
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いまだに「落とす選考」をしていませんか?

 だからこそ、企業側には「見出す姿勢」が強く求められます。

 「一般解」で凝り固まってしまった学生の思考をほぐし、その個人に徹底的に注目すること。あらゆる角度から掘り下げ、機会を提供することで才能の開花を信じ続けること。これが、私が唯一信じている新卒採用のあるべき姿であり、今後の日本の就活が進むべき方向性です。

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 そして、これを実現するためには、採用の現場に立つ一人ひとりが、「個」として学生と相対すことが不可欠です。もちろん、会社の業務として採用活動をするわけですが、選考で学生と対峙する時は「一人の人間」として向き合い、全力でその人の才能を見出そうとする姿勢を貫くことこそ、プロの仕事です。

 たとえば、グーグルでは学生のプロフィールを面接官に渡す際、学校名を省略するといった取り組みが試験的に導入されたことがありました。学歴が本質的に意味のある「選定要件」ではないと、現場の社員たちも含めて認識していたからです。また、私自身が採用担当をしていた部門の事業部長から「N大学出身の方との面接ばかりが続いているが、応募学生の母集団はどうなっているんだ?」とツッコまれたことがあります。

 その大学は誰もが認める高偏差値の大学でしたが、事業部長としては採用チームが偏った採用広報活動を行っている結果として「多様性が失われているのでは」と危惧していたのです。N大出身者が増えたことは、ただの偶然に過ぎませんでしたが、現場リーダーがこうした危機感を強く表現したことは示唆的でした。そして、今まで採用実績のない大学の学生が最終面接などに上がってくると、ひどく喜んでくれたものです。

 「グーグルバンザイ!!」と言う気など毛頭ありませんが、外的なフィルターを外して「一人の人間」とトコトン向き合う例として紹介させていただきました。

「個の可能性」にこだわり抜く本当の理由

 私がここまで「個の可能性」にこだわるのには理由があります。私の中には「どんな人も驚くような可能性を秘めている」「どんな人にもその可能性が花ひらく瞬間がある」という信念があるからです。

 私は長野県北部にある小さな山村に生まれました。自然豊かな環境であった一方、教育という観点では、たとえば4年制大学を卒業した人が家族含め周囲にほぼいないような世界でした。

 そんな中、私にとって刺激的だったのは、両親が営んでいた民宿に日本中から訪れるお客さんの存在でした。お客さんにとってはただの他愛もない話ばかりでしたが、村での生活しか知らない当時の私にとっては刺激に満ちていて「もっと広い世界を見たい」と自ずとに思うようになりました。

 その後は新しい世界への挑戦として、村から離れた高校へ通いながらの一人暮らしを開始。東京の大学を受験し進学。卒業後は外資系企業に就職して海外の仕事にも携わるようになり、さらにグーグルに転職して素晴らしい出会いにたくさん恵まれました。

 機会を得るたびに挑戦し、成長することで、私自身の世界も大きく広がり今に至るわけですが、これらすべての経験は、私が生まれ持ったものだけでは決して実現しなかったと思います。数えきれないほどの幸運な刺激を、人との出会いを通じて与えられた結果として、今の私があるのです。

 こういった原体験が自分の中にあるからこそ、「就職活動」という人生の大きな節目に、学生一人ひとりの可能性が最大化するような経験をしてほしいと切に願いますし、それを引き出すことのできる企業・人事が社会に増えてほしいと日々仕事をしているわけです。

「若い才能」を応援する人事仲間を増やしたい

 では、どうすれば日本の新卒採用マーケットにおいて「個の才能」を最大化できるか?この大きな問いに答えていくことが、今日から始まる連載のテーマです。

 2020年からの新型コロナウイルスの蔓延により、就活の変化は一気に加速しました。オンライン化により地理的制約が解き放たれ、知名度や規模感によらずとも的確にアピールできれば「優秀な学生」にリーチできるようになりつつあります。そう、今年からの1〜2年は日本の就活を変革するまたとないチャンスなのです。

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 そこで、まず最初の数回の連載では、外資人事の目線で見たときの日本の就活の違和感など、「仕組み化」が進んだ日本の就活ならでは課題について取り上げたいと思います。その後、各企業が各採用プロセスにおいて、どのように「才能」と向き合い、見出し、自社にあった「才能」を獲得・育成していけばよいかを具体案を交えてご紹介していきたいと思います。

 少子高齢化が進み、労働人口の減少は本当に大きな問題となっている日本にとって、若い才能をいかに見出し育てるかは、本当に重要なテーマです。少しでも多くの企業のみなさまにとって、私の知見がお役に立てれば幸いですし、新卒採用に関わるすべての人と手を携えて一緒に若い才能を全力で応援できればと思います。

草深 生馬(くさぶか・いくま)

株式会社RECCOO COO兼CHRO

1988年長野県生まれ。2011年に国際基督教大学教養学部を卒業し、IBM Japanへ新卒で入社。人事部にて部門担当人事(HRBP)と新卒採用を経験。超巨大企業ならではのシステマチックな制度設計や運用、人財管理、そして新卒採用のいろはを学んだのち、より深く「組織を作る採用」に関わるべく、IBMに比べてまだ小規模だったGoogle Japanへ2014年に転職。採用企画チームへ参画し、国内新卒採用プログラムの責任者、MBA採用プログラムのアジア太平洋地域責任者などを務めるかたわら、Googleの人事制度について社内研究プロジェクトを発起し、クライアントへの人事制度のアドバイザリーやプレゼンテーションを実施。

2020年5月より、株式会社RECCOOのCOO兼CHROに着任。「才能を適所に届ける採用」と「リーダーの育成」を通して日本を強くすることをミッションに掲げる。現在は経営層の1人として自社事業の伸長に取り組みつつ、企業の中期経営計画を達成するための「採用・組織戦略」についてのアドバイザリーやコンサルテーションをクライアントへ提供している。

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