ついに決着、グーグル対オラクルのJava訴訟--判決の意味を考察 - (page 2)

Forrester Research (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年04月09日 07時30分

リスク管理への影響

 リスク管理担当者も安堵のため息をついていることだろう。現在、法務チームやコンプライアンスチームは、ソフトウェア構成分析(SCA)ツールのライセンスリスク機能を利用して、オープンソースパッケージ(時には、私有のサードパーティーパッケージも)のコンプライアンス違反しているライセンスや高リスクのライセンスを特定している。多くのSCAツールは、オープンソースのライブラリーから開発者独自のソースコードにコピーされたコードスニペットやコードの断片も探す。スニペットの独自性によっては、この種のコピー&ペーストがライセンス違反となる可能性もある。当然、法務チームやコンプライアンスチームは、コードの所有権をめぐって潜在的な責任が生じるのは回避したいと考えているので、成熟した組織は、すべてのソフトウェアについて、記載されたライセンスに従って使用し、企業ポリシーに準拠したライセンスを持つコンポーネントだけを利用する。

 GoogleがOracleの著作権を侵害したと最高裁が判定していたらどうなっていたか、想像してみてほしい。所有権と責任に関する問題は、はるかに厄介になっていただろう。すべての組織がコードを再び精査して、同様のリスクを招くAPI宣言を探すことになっていたかもしれない。開発部門やコンプライアンス部門、法務部門は、コードの分析や誤検知の排除、経験に基づいてリスクレベルを推測する作業に多くの時間を費やすことになり、残業続きになっていた可能性もある。

 Oracleに有利な判決が下されていたら、ソフトウェア特許の分野で起きているような、いわゆる著作権トロールが引き起こされていただろう。巨大テクノロジー企業は、より強大な力を手に入れ、訴訟によって競合他社を廃業に追い込むこともできるはずだ。オープン標準の仕様は、今回の訴訟の争点となっているタイプのコードと同じように、インターフェースを表現しているため、訴訟の対象になるのではないか、という懸念も生まれていたかもしれない。訴訟への懸念から、テクノロジー企業各社はオープン標準をベースとするAPIの構築を避けるようになり、米国のテクノロジー業界のさまざまな部分が機能不全に陥っていた可能性もある。これは、連邦法が武器輸出管理法(AECA)の下で暗号化技術を軍需品として規制していた1990年代を思い出させる。AECAが原因で、暗号化技術をめぐるイノベーションの中心地は、そのような法律を持たない諸外国に移ってしまった。その結果、米国企業は1990年代半ばまでに何十億ドルもの潜在的な損失を被ったと専門家たちは推定している。同様に、もしOracleが勝訴していたら、訴訟を回避するために、より多くのイノベーションが米国外に拠点を置く企業に移っていた可能性もある。

APIは著作権で保護されるのか

 下級裁判所は、APIが著作権で保護されるべきと判断するのだろうか。最高裁は今回、それについて判断を示さなかったが、下級裁判所に対して、著作権保護の対象にはならないと判定するよう促すのではないだろうか。公開された判決文では、JavaのAPIを図書分類法の1つ「デューイ十進分類法」と言葉そのものにたとえている。さまざまなアイデアで構成される潜在的な世界を定義する一種の分類システムがあり、その分類システムによって、ユーザーは現実の世界で実際のタスクをうまくこなしていくことができるというものだ。ここから、APIはアイデアそのものであり、アイデアの表現ではないため、著作権で保護されるものではないという強い意思が読み取れるのではないだろうか。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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