――サービス設計のこだわりなどについて教えてください。
上形氏:サイトは中筋が作ったのですが、あまり「食」を強く訴求する感じではなく、ITプロダクトのLPのようなデザインイメージに仕上げています。
中筋氏:ケータリングサービスのWebサイトは料理があって華やかなイメージですが、同じように料理を並べてしまうと同質化してしまうので、そのアンチテーゼというか、あえて違う方向でクリエイティブを打ち出そうと考えました。食事を届けることだけがわれわれの価値ではなく、そこから生まれるコミュニケーションやつながりを目的にしているので、そういう思いを込めました。
現在は、申し込み履歴をメールだけでなくサイト上で幹事が確認できるようにしたり、参加者の回答状況を幹事が確認しやすいようにしたりと、オンライン飲み会を幹事が簡単に開けるようにつねにアップデートを進めています。
――今後はどのように開発を進めていく予定でしょうか。
中筋氏:オンラインでコミュニケーションを取るためにZoomやTeamsなどのツールがありますが、nonpi foodboxを利用してくださるお客様のニーズから、もっと適したツールがあるのではないかとも思います。まだどのような形になるか分かりませんが、そのツールを⾃社で開発しようと考えています。要するに社内コミュニケーションに特化したビデオ会議ツールですね。
ZoomもTeamsもしゃべっている1人にフォーカスが当たる1対Nのコミュニケーションですが、企業がしたいのはN対Nみたいなものだと思っており、そこをもっと使いやすくすれば面白くなるのではないかと考えています。
――ビデオ会議ツールは、どのくらいの規模感で開発する予定ですか?
中筋氏:N対Nのコミュニケーションが成立するのはせいぜい十数人だと思うので、そこが最初のターゲットだと思います。
――そのほかにはどういった取り組みをしているのでしょうか。
中筋氏:こういう状況下でも同じ食事を食べながらオンラインでコミュニケーションをとりたいということでやっているわけですが、経験則とか定性的には、そういったコミュニケーションの必要性は分かっています。でも、定量的な価値はそれほど見いだせていない。そこで従業員同士が食事を取ることでどんなコミュニケーション効果があるのかという研究を筑波大学と共同で進めています。より質の高いコミュニケーションを取るためにはどうすればいいかを可視化するといったことまで踏み込もうと考えています。
ビデオ会議ツールを作ったら、次は会の進行をするbotなどの案も考えています。たとえば人の書いたプログラムの間違いを人が指摘するより、コンピュータが指摘した方が人同士の衝突が起こらないといった話があります。
人が言うと角が立つけれど、コンピュータが言うと角が立たないので、たとえば「もっとしゃべってよ」みたいなのをbotがしゃべれば逆に面白くなるかもしれません。サービス的にやっていいかどうかは別ですが、居酒屋で飲み会をした場合は、みんなの顔をモニタリングして、つまらなさそうな人にbotが何か言う……なんてことはできません。でも、オンライン上ならできる可能性があります。
――新型コロナウイルス禍は終息の兆しが見えないため、この状況は2021年も続きそうです。事業として今後どのように進めていくのでしょうか。
上形氏:10年ぐらい前から「ソフトウェアによってすべての産業が変わっていく」と言われていますが、そんな中でも食事は「リアル」の世界でした。服のオンライン販売が始まったばかりの頃、私自身「服は試着したいから、服の購入はリアルに限る」と思っていました。しかし今ではほとんどの服をオンラインで購入しています。同じように、飲み会や食事も、10年後には当たり前のようにオンラインで行うような世界が待っているのではないかと考えています。コロナによって食事のオンライン化の流れが一気に速まりました。
日本における食のサービスは日本企業にアドバンテージがあると思っており、食の領域とソフトウェアを掛け合わせることで、新しい食事のコミュニケーションのあり方を作ることに挑戦したいと考えています。
また、コロナ禍の影響でオンライン飲み会が開催されるようになると、新たなメリットも生まれてきました。
――オンライン飲み会ならではのメリットというのはどういったことですか。
上形氏:もともとオンライン飲み会は「3密回避」で行われていたのですが、リアル飲み会のような情報漏洩リスクがないですし、アルハラなどのハラスメントもありません。
たとえば小さなお子さんがいて参加できなかった社員でもオンラインなら参加できるとか、地方に住んでいる人や出張中の人も参加できるといったメリットもあります。また、今はコロナ対策としてだけでなく「コミュニケーションツール」としてオンライン飲み会を楽しむ企業が増えているのを感じます。
中筋氏:あとはチームが、東京オフィスと福岡オフィスにメンバーが分かれているという場合もあります。実際にやってみると、オンラインでやる利点がすごく分かってきました。
上形氏:新しいコミュニケーションスタイルというか、食事のソフトウェア化のような形でマーケットを作っていきたいと考えています。
中筋氏:先ほどbotなどのアイデアを紹介しましたが、オフラインよりオンラインの方が盛り上がるよね、という世界を作りたいと考えています。居酒屋でやっても盛り上がらないけれど、nonpi foodboxで飲み会をやるとみんなの満足度が高まるし、盛り上がるといった感じです。
ネットに場を移したからこそできることが増えるということを強調したいですね。
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