Surface Duoは、同社が積み重ねてきた、驚くほど多くの失敗の上に立つ製品だ。その裏には、買収、混乱、行き詰まりによって生じた巨額の損失が隠れている。
スマートフォンに関する失敗は、Nokiaの件と「Windows Phone」だけではない。ティーンエイジャーを意識したスマートフォン「KIN」もある。2008年に、5億ドルとも報道された額でスマートフォンメーカーDangerを買収して生まれたデバイスだった。2010年に発売されたものの、一向に販売が振るわず、わずか2カ月後に店頭から姿を消している。
スマートフォン以外で目立つMicrosoftの失敗といえば、「Bing」も挙げられる。Googleに対抗すべく2009年に立ち上げた検索エンジンだ。現在、その市場シェアは、Googleの86%に対してわずか6%にすぎない。
皆さんはお忘れかもしれないが、「iPod」の向こうを張ろうとしたメディアプレーヤー「Zune」というのもある。Microsoftとしては、忘れてくれていた方がいいのかもしれない。
幸いなことに、Windows、Office、「Azure」事業およびストレージサーバーでの高収益は続いており、そうした損失を穴埋めしている。6月の時点で、Microsoftの現金保有高は1330億ドルだった。新型コロナウイルスの世界的大流行に伴う経済的な打撃があったにもかかわらず、である。
現在、タブレットPC「Surface」シリーズは好評で、その端末で動くソフトウェアとサービスも期待に応えている。
問題は、開発に5年以上の年月を要し、語られることのない額の資金を費やしたSurface Duoが、Office並みのヒット作になってSurfaceのように高い評価を得られるのか、それともNokiaと同じ金食い虫で終わるのか、ということだ。
「これはまだ、新しいフォームファクターを追究する全く新しい試みの始まりにすぎないし、Microsoftだけでなく、どの企業にとっても新しい試みだ。私としては、素晴らしいことだと思う」と語るPanay氏。
同氏とそのチームは、Surface Duo設計の原動力となった哲学が評価されることに、とりわけ期待をかけている。
もちろんPanay氏は、手放しで期待しているわけではない。誰もが発売初日に列を作って買い求めるほどでないことは、同氏も承知している。理由のひとつは、特異なデザインと、業務タスク重視という点だ。搭載するカメラは11メガピクセルで、サムスンやAppleのスマートフォンと比べて特に優れているわけではない。ステレオスピーカーも搭載していないので、Dolby対応のステレオスピーカーを搭載し、メディアの視聴に最適とうたわれている最高機種の前では見劣りする。
128GBモデルで1399ドルというトップクラスの価格を考えると、平常時でも簡単に売れそうにないことは、言うまでもない。それに加えて、近代史上でも最大級の経済危機をもたらしているコロナ禍のまっただ中に登場したというタイミングは無視できない。
案の定、特に12日に1399ドルという価格が発表されてからは、Surface Duoを疑問視する声が上がっている。
Panay氏も、Surface Duoの販売が難航することは予想している。そのうえで、Surfaceの薄型デザインとキーボードカバーが、メーカー各社のPCおよびタブレットのあり方を変えたように、Surface Duoがスマートフォンに刺激をもたらすことになれば幸いだと述べている。それを証明するかのように、MicrosoftはGoogleと協力して、Surface Duo向けに開発した技術をAndroidにも提供しようとしているという。デバイスメーカー各社が同様のガジェットを開発できるように、だ。2画面を並べて管理し、その間でアプリケーションを動かすためにMicrosoftが開発したソフトウェアなどが、そうした技術の一例である。
「製品は、作った人たちを映す鏡のようなものだ。そういう製品には、われわれの魂と愛が込められている。ユーザーにそれを感じとってもらえるといい」(Panay氏)
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