新しい「死」の形--デジタルで永遠の命は実現するか - (page 3)

Alison DeNisco Rayome (CNET News) 翻訳校正: 石橋啓一郎2020年06月25日 07時30分
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 では、人間を完全にデジタル化するためのデータはどうすれば手に入るのだろうか。「私たちは人間のディープフェイクを作ることができます。また、例えば3Dアバターのような関連技術を使って、人間の映像をモデルにすることはできるでしょう」とKuyda氏は言う。「しかし、心についてはどうでしょうか。今はまだ、人の心をキャプチャーできる技術はありません」

 何らかの形で死者のソフトウェアコピーを作ろうとする場合、最大の壁はデータかもしれない。写真や、テキストや、ソーシャルメディアプラットフォームは、永遠にオンライン上にあり続けるわけではない。これは、インターネットが常に進化し続けているからであり、オンライン上に投稿されたほとんどのコンテンツは、そのプラットフォームの所有物になっているためだ。運営企業が潰れれば、その情報にはアクセスできなくなる。

 「インターネットの情報は興味深く、新鮮なものが多いのですが、私たちの想像よりもはるかに短命です」とTroyer氏は言う。「デジタル世界の多くは消えていきます」

 出来事を記念に残すための技術は、時の試練に耐えられない場合が多いと同氏は言う。感謝の動画メッセージや、ソーシャルメディアのメモリアルページがその後どうなっているかを考えてみれば分かるはずだ。またTroyer氏は、クラウドにデータが保存されていても、将来誰もアクセスできないのでは意味がないとも付け加えた。Tim Berners Lee氏がHTMLを作るのに使ったコンピューターのエピソードなどもこれに当てはまる。このマシンは今も欧州原子核研究機構(CERN)にあるが、誰もパスワードを知らないため、中身を見ることができないのだ。「このエピソードは、一種の現代の寓話でしょう」と同氏は言う。

脳の保存

 死のデジタル化に関して、特にSF色の強いコンセプトの1つが、ベンチャーキャピタルのY Combinatorが投資しているスタートアップNectomeが提唱しているものだろう。同社は、将来何らかの手段で一時記憶を抽出する目的で、人間の脳を高度な死体防腐処理によって保存する事業を展開している。問題は、この処理を行うためには脳が新鮮でなくてはならず、心を保存したければ、安楽死を行う必要があるということだ。

 Nectomeは、医師による末期患者の安楽死が認められているカリフォルニア州で、末期患者の志願者を対象として実験する計画を立てた。同社は、技術が一般に利用できるようになったら(臨床試験が行われるとしても、ずっと先の話だろう)処置を受けたいという人々から1万ドルずつ資金を集めた。この資金は払い戻しも可能だった。MIT Technology Reviewによれば、2018年3月時点で25人が資金を供出していたという(この記事のためにNectomeにコメントを求めたが、同社は応じなかった) 。

 Nectomeは100万ドルの資金を調達したほか、多額の米連邦政府補助金を獲得し、マサチューセッツ工科大学(MIT)の脳神経科学者と共同研究を行っていた。しかし、MIT Technology Reviewに掲載された記事には、倫理学者や脳神経科学者から多くの批判が集まった。批判した人の多くは、脳組織から記憶を取り出し、コンピューターの中に人間の意識を再現できるのは、早くても数十年先の話であり、おそらくまったく不可能だろうと述べていた。MITは2018年にNectomeとの契約を打ち切った

 MITは発表文で、「脳神経科学は、何らかの脳の保存方法によって、記憶や精神に関するさまざまな生体分子を保存できるかどうかを判断できるほど進んでいない」と述べている。「また、人間の意識を再現することが可能かどうかも分かっていない」

脳のアップロードのイメージ
現時点では人間の脳の中身をクラウドにアップロードすることはできない。
提供:Getty/Yuichiro Chino

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