Matthew MacNeilさんが「Android」スマートフォンで音声文字変換機能を使用すると、話した内容と全く異なる文が表示される。
「こんにちは。私の名前はMatthew MacNeilです。オンタリオ州ティルソンバーグに住んでいます」と話すと、「こんにちは。私の名前はMaster MacNeilです。オンタリオ州トラフィックに住んでいます」という文章に変換されてしまう。
MacNeilさんは30歳で、ダウン症を患っている。スマートフォンに搭載された「Googleアシスタント」などの音声テクノロジーが自分の言っていることを理解せず、いら立ちを覚えることがよくある。2人のルームメイトと共に自立した生活を送っており、地元のスーパーマーケットSobeysで毎週働いた時間を記録するため、あるいは、自宅でのエクササイズのタイマーを設定したりするために、デバイスの音声アシスタントを利用している。
だが、そのテクノロジーが思い通りに機能してくれないことがある。
「自分の話したことが自動修正されることがよくあって、そのたびに、『そんなこと言ってない。こう言ったのに』と不満を覚える」。MacNeilさんは、米CNETとのインタビューで、そう語った。
多くの人にとって、Amazonの「Alexa」やAppleの「Siri」などの音声アシスタント、あるいは「Google Home」などのデバイスは、気温を確認したり、即興のダンスパーティーのためにお気に入りの楽曲をキューに追加したりする作業を簡略化してくれるツールだ。だが、ダウン症患者にとって、それは人生を変えるテクノロジーになる可能性もある。
音声アシスタントは、スケジュールを管理したり、友人や家族と連絡を取り合ったり、緊急時に助けを呼んだりするのを支援してくれるツールだ。簡単に言えば、より自立した生活を送れるようにしてくれる。それでも、多くのダウン症患者にとって、自分の言っていることを理解してもらうのは、容易ではない。そのせいで、彼らはこのテクノロジーを最大限活用することができない。
MacNeilさんにとって、この問題の本質は、技術的な不具合を修正することだけではない。ダウン症患者や、なかなか理解してもらえなくて苦しんでいるそのほかの人々も公平に扱い、取り入れるということだ。MacNeilさんは、自分はほかの人と何も変わらないと言う。学校を卒業し、今は働いている。余暇は友人たちと一緒に過ごす。そして、大手テクノロジー企業が自分にも使える製品を作るようになってほしいと考えている。
「そうなれば、間違いなく、もっと自分は自立していると感じられるだろう。ほかのすべての人と同じようにテクノロジーを利用できるようになりたい」(MacNeilさん)
MacNeilさんは、より多くの人にそう感じてもらえるように、行動を起こしている。Googleとカナダダウン症協会(Canadian Down Syndrome Society)による共同のプロジェクトで、Googleアシスタントテクノロジーを改善するためにダウン症患者の音声サンプルを集める「Project Understood」に参加しているのだ。このプロジェクトは、2019年の「Google I/O」で発表された、「Project Euphonia」から派生した。同プロジェクトでは人工知能を使用してコンピューターを訓練し、発話障害者の話し方を理解できるようにすることを目指している。
これは、Googleの音声認識製品だけの問題ではない。MacNeilさんや、発話明瞭度が低い人々は、音声アシスタントに正確に認識してもらえないことがよくある。その理由は単純だ。人工知能(AI)テクノロジーの訓練に使用されるサンプルは、一般的な話し方をする人々のサンプルで構成されていることが多いからだ。まだ研究開発段階にあるこのGoogleのプロジェクトでは、コンピューターやスマートフォンを訓練して、発話障害のある人々や、一般的でない話し方をする人々の話し方をより正確に理解できるようにすることを目標としている。
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