「Apple Watch」はいかにしてファッションからフィットネスの必需品になったのか

Shara Tibken (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2020年04月27日 07時30分

 218万円のモデル。試着するための予約。Vogueの表紙への掲載。2015年に登場したとき、「Apple Watch」はフィットネストラッキングデバイス以上のものだった。ファッションアイテムであり、ステータスシンボル。手首に装着する贅沢品だったのだ。

Apple Watch
Apple Watchは5年前の初代モデルから進化を遂げてきた
提供:Angela Lang/CNET

 2020年、Apple Watchは5周年を迎えた。現在では、世界中の多くの人々がApple Watchを装着して、会議中に席から立ち上がることや休憩を取ること、1日の最後にもう1回エクササイズをすることを思い出させるリマインダーとして使用している。かつてファッションアクセサリーだったApple Watchは、今では健康とフィットネスに欠かせないツールとなっている。

 Apple Watchが普及したからといって、ファッションに敏感な人々への魅力が失われたわけではない。市場調査会社のStrategy Analyticsによると、2019年、Apple Watchの販売台数はスイスの腕時計業界全体を大幅に上回ったという。同社は、Appleが2019年に推定3100万台を出荷した一方で、スイスのすべての腕時計ブランドの総出荷台数は2100万台だったとしている(AppleはApple Watchの年間販売台数について詳しく説明していないが、Apple Watchと「AirPods」を含むカテゴリーの2019会計年度の売上高が約245億ドルだったことを明かしている。前会計年度比で41%の増加だ)。

 「Swatchなどのスイス企業は、スマートウォッチ戦争で苦戦を強いられている」(Strategy Analytics)

 苦戦しているのは、スイスの腕時計業界だけではない。2015年にApple Watchが発売されたときは、テクノロジー業界の多くの大手企業やスタートアップがスマートウォッチやフィットネスバンドを作っているように思えた。サムスンやソニー、Fitbit、Pebble、Misfit、Jawbone、その他さまざまな企業がスマートウォッチを製造していた。サムスンのように、今でも販売を続けている企業もあるが、Pebbleなどのほかの一部の企業は他社に買収されたり、市場から撤退したりした。スイスの腕時計ブランド各社も、デジタルへの移行を試みている企業があるとはいえ、苦戦を強いられている。

 Strategy AnalyticsのアナリストであるSteven Waltzer氏は、「スイスの腕時計ブランドがスマートウォッチ分野で一撃を加えるチャンスは、ますます小さくなっている。SwatchやTissot、TAG Heuerなどが挽回するための時間は、もうあまり残されていないのかもしれない」と語った。

 Appleにとって、Apple Watchは最も成功した製品の1つになったが、その事業規模は高い人気を誇る「iPhone」には遠く及ばない。Apple Watchを活用するには、依然iPhoneが必要であり、Apple Watch自体の機能性は限られている。スタンドアロンのヘルストラッカーになるには、まだ多くの機能が不足している。それでも、Appleは2015年の時点ではほぼ不可能に思えたこと、つまり、新たなヒット製品を見つけるということを、何とかやり遂げた。

大きな賭け

 Appleが今日のスマートウォッチの売り上げに占める強大なシェアを見ると、Apple Watchがどのようにして始まったのかを忘れてしまいそうになる。同社が2014年9月に初代のApple Watchを発表したとき、成功は保証されていなかった。このデバイスが実際に発売されたのは、それから7カ月後のことで、動きの速いライバルたちはその間に対策を講じた。ユーザーが購入したところで、スマートウォッチが本当に必要な理由、あるいはその機能や使い道については、はっきりしていなかった。

 Appleの最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏にとって、Apple Watchは大きな腕試しの機会だった。Steve Jobs氏が指揮を執らなくても、Appleは魅力的で誰もが欲しがる製品を作り出せるということを、Cook氏は示さねばならなかったのだ。当時、完全な新商品として成功を収めたAppleの最後の製品は2010年の「iPad」で、この第1世代iPadは、2011年に亡くなったJobs氏によって発表された。

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