「屋内農業はどうしても、通常の屋外農場での育成よりはるかに高価になる」と、Runkle氏は付け加える。同氏は、屋内農業が従来の農業に取って代わることは、すぐにはないだろうし、ひょっとしたら永遠にないかもしれないと考えている。だが、水の便が悪く、かんがいが不可能もしくは非現実的な場所では、解決策の候補になるだろうという。
幸い、技術の進歩によって屋内農業のコストは下がってきており、10年前に比べれば、少なくとも少しは実用に近づいている。
80 Acres Farmsの運営を可能にした、最も重要な技術革新のひとつが、LED照明だ。従来の照明は費用もエネルギーもかかり、植物にとっては周辺温度が上がりすぎてしまう。それがLEDになったことで、80 Acres Farmsはカスタマイズ可能な自動照明システムを導入し、さまざまな色温度の疑似的な昼光を作り出せるようになった。省エネと省コストにつながるうえ、植物にとっても望ましいという。
80 Acres Farmsの農場では、重量物の運搬に2台のロボット、「Sam」と「Barney」も利用している。作物の載ったパレットを、所定のスケジュールに基づいて、または必要に応じて随時、出荷コンテナに積み下ろしするのが、この2台の仕事だ。他社はまだ、シザーリフトを上下させて重いコンテナを運搬するために人を雇っている段階だとZelkind氏は説明している。
各コンテナの内部にはカメラも設置されているので、いつでも作物の状態を確認できる。80 Acres Farmsは、害虫、変色、規格外サイズといった作物の異常を認識できるように、機械学習の開発も進めている。そうなれば、生産者が24時間365日の態勢で監視することも不要になる。
カメラで異常が見つかると、その情報は80 Acres Farmsの全チームに共有されるので、潜在的な問題をいち早く特定し、解決に向けて対策を立てることができる。
「こうした(テクノロジー)すべてを利用するのは、生産者に取って代わるのではなく、生産者を支援するためだ」、とZelkind氏は言う。今日のAI技術は、生産者の仕事を奪うまでにはまったく至っていないが、技術を導入することで、生産者の作物とのかかわり方は明らかに変わってきた。80 Acres Farmsは、技術の利用方法を従業員に指導するトレーニングクラスまで用意している。
制御環境農業は、アリゾナ大学、コーネル大学、ネブラスカ大学など多くの大学の農学部でも、研究対象として広く取り上げられつつある。
Tim Brobbeck氏は、3年前に80 Acres Farmsで生産者として働き始め、現在はプラントマネージャーを務めている。同氏によると、簡単に昇り降りして様子を確認できないので、特定の作物の状態を調べるのが困難な場合があるという。カメラは役に立っているが、それでも何が起こっているかを完全に把握するのはまだ難しいことがあるのだ。こうした技術を、使い慣れながら学んでいくことこそ、Infinite AcresのCEOとしてLivingston氏が注力しているものだ。
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