「ここはいわばトップシークレットの施設で、ここにあるものはすべて当社が独占権を有している」。積み重ねられた10個の出荷用コンテナを前に、Zelkind氏はそう語った。この施設を目にした記者は筆者が初めてだそうで、Zelkind氏、Livingston氏、Haders氏の3人とも声をひそめつつ、興奮した様子で技術のことを話してくれる。他の屋内農場も技術を利用しているが、80 Acres Farmsは商業的にもっと包括的なアプローチをとっているという。その一環として、出荷する作物を積み下ろしする全自動ロボットと、作物を監視し、照明時間を管理するコンピューターシステムを使用している。
80 Acres Farmsは、集中的に試行錯誤を繰り返しながら、5年をかけてこの農場を築き上げた。他社の技術を導入し、独自の技術も開発して実験を重ねながら、できるだけ「最適な」屋内農場を目指している。新しい農場を作るたびに、その前に学んだ経験を生かしてきた。そして、ハミルトンのこの農場が、最も新しく、最もハイテクな施設だ。
「意気込みも不安もあるが、誰よりも先の地点にたどり着いた。といっても、そこには何の保証もない。これで十分でないことは分かっているし、過去を振り返っているひまはない。われわれは未来を目指している」(Zelkind氏)
80 Acres Farmsのハミルトンの農場には、長さ40フィート(約12m)、幅と高さそれぞれ8フィート(約2.5m)の出荷用コンテナが10個ある。それぞれが4~6層に分かれていて、およそ4000株の作物を収容できるので、コンテナ全部がいっぱいになれば4万株を出荷できる。この農場で生産しているのは、主にレタスなどの葉物野菜だ。
ミシガン州立大学で園芸学の教授を務めるErik Runkle氏の説明によると、80 Acres Farmsなどの屋内農場が、主として葉物野菜を扱っているのには理由があるという。本来は旬があるにもかかわらず、需要は1年中あるからだ。そのうえ、葉物野菜は、もともと傷みやすいにもかかわらず、長距離輸送されることが多い。出荷中に栄養価が落ちていくという理由もある。
ここで疑問が生じる。実際のところ、屋内農業は経済的に採算がとれるのかということだ。結論から言うと、まだ答えは出ていない、とRunkle氏は言う。同氏をはじめ、ミシガン州立大学や他大学の研究者が、米農務省(USDA)からの助成金を受けて、まさにそのテーマの研究に取り組んでいる。だが、Runkle氏によると、4年間の研究を経てもなお、単純に「イエス」か「ノー」で答えを出せるには至っていないという。
米国で、商用の屋内農業が始まったのは、8~10年ほど前だった、とRunkle氏は説明を続ける。同氏の推定では、米国の農産物のうち屋内農業で生産出荷されている割合は現在、1%にも満たない。早期に参入した企業のうち、ほとんどは既に撤退しているが、ニュージャージー州のAeroFarmsなど、著名な会社はまだ存続している。
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