ビールなら1分--電子レンジ感覚でワインボトルまで冷せる「JUNO」の開発背景を聞く - (page 3)

将来はB2B向けのカスタマイズや自動販売機も

 JUNOは先述のように、まるで電子レンジのように手軽に使えるのが大きな魅力だ。

 「冷蔵庫の中で未開封の飲み物を冷やし続けていることも多いと思うが、JUNOがあれば常温で保存しておき、飲む前に素早く冷やして楽しめる。コンビニエンスストアで購入した食品を電子レンジで温める一方で、電子レンジと同じようにビールを冷やすといった使い方ができる」(Douglas Tham氏)

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 こうした特徴を武器に、一般消費者向けに市販していくだけでなく、B2Bの展開も見据えているという。

 「ありとあらゆるホテルにあるミニ冷蔵庫を取り除いて、JUNOを導入してもらいたい。朝起きたらコーヒーメーカーでコーヒーを入れ、夕方はワインをJUNOで冷やして楽しんでほしい」(Douglas Tham氏)

 JUNOの消費電力は約200W程度の見込みとのこと。350ml缶なら1〜2分、ワインのビンなら3〜5分もあれば冷やせるとのことなので、1回の冷却にかかる電力量は3.3〜16.7Wh程度で、電気代としては1回1円もかからない計算になる(1kWhあたり27円で計算)。庫内容量40Lのとある冷蔵庫の定格消費電力は60Wだが、1日中稼働すると1.44kWhになり、電気代としては約49円かかる。同社の試算通りなら、ではあるものの、ワインなら1日あたり80本冷やしてもミニ冷蔵庫より省エネになるというのだから驚きだ。

 「動作時だけ電力を使うというのがホテルへの導入を進めていきたい理由だ。ホテルの部屋にある冷蔵庫のほとんどは、人がいなくても24時間365日稼働している。ここに展開することで、無駄に消費されている電力を大幅に抑えられるのではないかと考えている。ビールメーカーやワイナリーなどにもニーズはあるため、JUNOのようなシステムをベースにカスタマイズして提供していきたい」(Douglas Tham氏)

 そのほかに狙っているのが「自動販売機」だ。

 「日本には自動販売機がたくさん設置されており、それらも24時間365日稼働している。JUNOをベースにすれば1分ほどでしっかりと冷やした飲料を出せるため、自動販売機も大幅に消費電力を抑えられる。全種類1本だけ常に冷やしておき、購入されたら新たな缶を冷やす仕組みにすれば、すぐに冷たいドリンクを購入できる。また、大きなきょう体にすれば、より短時間で冷やすことも可能だ」(Douglas Tham氏)

 JUNOはコンシューマー向けのコンパクトなモデルだが、「24本のビールを一気に冷やして提供できるようなB2B向けのモデルも考えている」(Douglas Tham氏)という。

 JUNOはビンや缶に加えて水を入れる必要があるが、自動販売機となると同じ仕組みにするわけにはいかない。その点はどうなのだろうか。

 「家で使うJUNOの場合、さまざまなサイズや形のビンや缶にアジャストしなければならないため、媒体として水を使っているが、自動販売機などの場合は基本的な設計が異なる。特許の問題もあって詳しくは話せないが、同じ形状の缶などを販売する自動販売機の場合はアイデアがまったく異なり、水を使わなくても冷やせる」(Douglas Tham氏)

 JUNOは「何度まで冷やす」というスタイルではなく、最もシンプルな電子レンジのように時間を設定して冷やすスタイルになっている。

 「電子レンジと同じような使い勝手を実現するために『時間で冷やす』というスタイルにしているが、B2Bだけでなくコンシューマー向けでも『何度まで冷やしたい』というニーズがあることは理解している。B2B向けのカスタマイズや今後のファームウエアアップデートなどによっては、設定温度まで冷やすといった形にすることも可能だ」(Douglas Tham氏)

 JUNOの消費者向けへの販売をスタートした後には、どのようなプランがあるのだろうか。

 「現在、自動販売機やレストランのキッチン、スタジアムなど、さまざまなニーズがある。将来的にはJUNOユニットを統合した冷蔵庫も作りたい。アイスディスペンサーとウォーターディスペンサーに加えて、ボタンを押すだけで1分弱でキンキンのビールを楽しめるというものだ。まずはこの形からスタートして、最終的にはいろいろなものに応用していきたいと考えている」(Douglas Tham氏)

 B2Bでの展開を見据えて、現在はプロテインシェイクやスムージー、フルーツジュースなど、粘度の高いドリンクを冷やすテストなども行っているとのことだ。

 「女性からはメイク道具を冷やしたい、フェイシャルマスクを冷やしたいといった声も聞いている」とDouglas Tham氏は語る。Indiegogoで支援を募っているセットではタンブラーも付属しており、飲料以外のものも冷やせるようになっている。

 地球温暖化対策についての議論が進む一方で、多くのコンビニエンスストアやスーパーマーケット、自動販売機の中ではたくさんの飲料が冷やし続けられている。ほんの1〜2分、しかも省エネで飲料を冷やせる機械がより身近になれば、「保存がきく飲料を冷やして提供するのはナンセンス」という時代が来るのかもしれない。

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