ラスベガスコンベンションセンターのセントラルホールのステージ脇に、背の高いディスプレイが設置されている。あらゆる年齢、民族性、性別の人たちが画面から微笑みかけてくる。画面に次から次へと映し出された人たちは、本物の人間であるように見えるが、実際には人間ではなく、「Neon」だ。
CES 2020で最も大きな話題になっている企業の1つ(社名もNeonだ)が、米国時間1月6日遅く、ここラスベガスでデビューを果たした。サムスンの研究開発部門Samsung Technology and Advanced Research Labs(STAR Labs)を母体とする、この謎に包まれた企業は自社のテクノロジーについて、「本物の人間のような外観と動作で感情や知性を示すことのできる、コンピューターで生成されたバーチャルな存在」と説明した。
基本的に、Neonは本物の人間のような外観と動作を併せ持つビデオチャットボットの開発を手がけている。Neonは、何でも知っているスマートアシスタントでも、アンドロイドでも、サロゲートでも、本物の人間のコピーでもない。本物の人間と同じように会話し、振る舞うように設計された。記憶を形成し、新しいスキルを学習するが、少なくとも現在のところは、物理的な実体を持たない。「目的のはっきりしたタスク」を助けたり、「人間味が必要なタスクを支援できるようにパーソナライズしたりすることが可能」だ。教師やファイナンシャルアドバイザー、医療供給者、コンシェルジュ、俳優、広報担当者、テレビアナウンサーの役割を果たすこともできる。
私たちがNetflixのSFドラマシリーズ「ブラック・ミラー」の領域に徐々に足を踏み入れていることは間違いなさそうだ。
Neonのこの人工人間は、同社独自の2つのテクノロジーで実現している。1つ目のテクノロジーは「Core R3」と呼ばれる。R3とは、「Reality」(現実)、「Realtime」(リアルタイム)、「Responsive」(優れた応答性)のことだ。Neonが人間と同じように迅速に応答できるのは、Core R3のおかげである。2つ目は、知性や学習、感情、記憶を担当する「Spectra」というテクノロジーだ。
ここまで読んで、よく分からないという人もいるかもしれないが、それは無理からぬことだろう。筆者もよく分からなかったので、7日午後、CES会場に設置されたNeonのブースで、最高経営責任者(CEO)のPranav Mistry氏の最初のメディアインタビューを担当するチャンスに飛びついた。あっという間に進んだ30分間のインタビューで、私たちは、人間が悪い態度をとったときのNeonの反応から、Mistry氏が「新たな種」と呼ぶものを生み出したことに対する道徳的責任まで、さまざまなことを語り合った。
だが、まずは基本的な質問からだ。Neonとは、正確にはどんなものなのか。
「Neonは本物の人間のような外観と動作を併せ持つバーチャルな存在だ。私たちの世界とデジタルの世界を結び付けてくれる。NeonはAIアシスタントではない、と断言できる」。Mistry氏は自社のブース内の小さな会議室で、そう答えてくれた。
この説明に困惑しているのは、筆者も同じだ。
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