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「我々のビジネスはまだ1合目」 --ランサーズ秋好氏が語る上場への思い

阿久津良和 藤井涼 (編集部) 佐藤和也 (編集部)2020年01月02日 10時00分
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 フリーランス向けプラットフォーム事業を運営するランサーズは、2019年12月16日に東証(東京証券取引所)マザーズへの上場を果たした。くしくも同日はサービスを開始した2008年12月16日から数えて11周年であり、日本記念日協会が定める「フリーランスの日」に当たる。ランサーズ代表取締役社長 CEOの秋好陽介氏に上場の感想や今後の展開、また「経営は不確実だが、筋肉は裏切らない」として、体を鍛えている理由も含めて聞いた。

ランサーズ代表取締役社長 CEOの秋好陽介氏
ランサーズ代表取締役社長 CEOの秋好陽介氏

大企業に使っていただけるレベルの品質に近づけるかがポイント

——サービス開始日と同じタイミングで上場に至りました。2019年12月16日を上場日として選んだ理由などをお聞かせください。

 サービス開始日に上場できたのは偶然です。2019年12月というタイミングは予定していましたが、日付までは決めていませんでした。今回のタイミングは政府の働き方改革や、副業を解禁する東証一部上場企業が増えたことが大きいですね。3~4年前は20%程度でしたが、2019年に入って50%を超えるようになりました。フリーランスが正社員となったり、その逆の流れが起きるなど流動性が高まる追い風もあります。

 もちろん、もう1度資金調達したかったことも上場理由のひとつつです。何が正解かは分かりませんが、よく「VC(ベンチャーキャピタリスト)の都合ですか」と言われますが、ファンドの満期が近いといったこともなく、あくまでも弊社都合で上場しました。

——上場によるメリットをどのように考えていますか。また、情報開示責任などデメリットもあります。このあたりのお考えをお聞かせください。

 我々のサービスは、ユーザーから見れば「社会インフラ」です。このプラットフォームが健全に成長することでパブリック化し、その過程において内部統制やコンプライアンス、ガバナンスをしっかりと構築することは、中長期利用されているユーザーの方々に対する提供価値が最大化すると考えています。あと、未上場企業の資金調達は本当に大変です。確かに過去と比較すれば容易になりましたが、上場企業と未上場企業を比べると、資金調達の多様性は大きく異なります。

 我々のビジネスはまだ1合目程度ですから、今後も多くの資金が欠かせません。資金調達の多様化や信頼度の向上が重点項目になります。まだ、上場から5日(インタビューは12月20日に実施)程度ですが、問い合わせの内容や採用候補者数も大きく変わりましたね。上場直後で注目いただいているからかもですが。

 当然デメリットもあります。情報をすべて開示していない状態から、ほぼ丸裸に近い状態になりますから。株主なっていただく方々も増えますので、説明責任を果たさなければなりません。IRや四半期説明会の開催はもちろん、上場を維持するためのJ-SOX(内部統制報告制度)も必要になります。デメリットというよりも負担コストが発生します。社内も5~10人ぐらいの時代は気軽に進められましたが、この規模まで拡大し、上場企業ともなるとコンプライアンスに抵触しない取り引きになるよう、モニタリングやバランスを取らなければなりません。その分スピードは落とさなければなりません。

——スタートアップが上場すると、企業によっては“上場ゴール“と揶揄されることもありますが、この点についてお考えをお聞かせください。

 僕らは「上場ゴールだ」という人々を見てきた世代です。正しい表現か分かりませんが、反面教師にしている部分は大きいですね。近年上場したスタートアップ企業は、上場をゴールだと捉えていないと思います。確かに過去は「上場=ゴール」と考える風習があったかも知れません。

 あとは情報ですね。上場時のメリットやデメリットが回ってくるので、事前に準備するといったノウハウが流通しています。上場企業になって初めて知るよりも、未上場時に上場した同年代の企業家が身近にいることは大きいです。推測ですけど、20年前は上場企業の社長が起業家の周りにおらず、上場時や上場後のトラブルに出くわして業績が芳しくなり、統制の不備が発生してしまうからこそ、上場ゴールという流れが生まれたのかも知れません。

——2019年12月に上場したスタートアップ企業を見ると、2010年代のインターネット業界を作り上げてきた方々ばかりです。そこに運命的なものを個人的に感じています。2010年代のIT市場の振り返りつつ、各スタートアップ企業とのエピソードはありますか。

 2010年前後はゲーム市場が大きく盛り上がりました。そこから社会的な課題に向き合ってきた5社(メドレー、freee、スペースマーケット、マクアケ、ランサーズ)だと思います。たとえばスペースマーケットや弊社はシェアリングエコノミーですし、マクアケのクラウドファンディングも社会的に新しいサービスでしょう。どれも地味で派手ではありませんが、世代が変わりビジネスが変わり、社会的企業の上場が増えていますね。

 また、マクアケの中山さんとはサウナに行く仲ですし、スペースマーケットの重松さんとは一緒に地方創生団体を作り、2016年ごろは地方へ行きまくってました。freeeの佐々木君は同い年なので、大阪で串カツを食べにも行きました。そんな仲間たちの企業がみんな上場するのは嬉しいですね。一方で僕が普通の人なので頑張れていることは感慨深く、もっと若い人も努力すれば結果につながると思います。

——ランサーズは、それまで世の中に存在しなかった「クラウドソーシング」という市場を日本で作り上げてきた代表的な1社だと思います。創業当初から現在まで、社会的なポジションはどのように変わったのか。また、課題があれば聞かせてください。

 僕らは2008年に起業しましたが、当時はインターネットで仕事を発注するという文化もなく、発注相手と会わずに仕事を受注する文化も当然ありませんでした。最初の3年間は本当に苦労しました。クライアントからは「怪しいね」と言われ、ワーカーからは「顔の見ない人の仕事をやるのは怖い」と言われました。そこから東日本大震災を経て働き方に対する注目が集まり、少しずつ弊社と類似したサービスも登場し始めました。スタートアップ企業が、フリーランス向けプラットフォームに発注するという文化が生まれだしました。

 現在も認知度は低く、IT業界以外のエスタブリッシュメントな企業に行くと「ランサーズ?何それ?野球チーム?」と言われてしまうほどですから。まだまだ、というのが正直な感想です。経済同友会に参加していますが、メンバーは大企業ばかりなので弊社の認知度は10%程度だと思います。

 国に働きかけるような規制といった課題はありませんが、僕ら自身が大企業に使っていただけるレベルの品質に近づけるかがポイント。追い風は感じていますが、ゆっくり成長していくと思います。「明日から転職」となったときに、そのタイミングでランサーズを思い出していただければと。

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