未来学者として著名なRay Kurzweil氏は何年も前から、人間のようなAIが2029年には出現すると主張している。だが、同氏はそれをロボットによる世の終末の始まり(故Stephen Hawking氏を含めて何人かが言っているように)ではなく、むしろ人間が生物としての限界から解放される新しい時代だと考えている。
Kurzweil氏は、2005年の著書「ポスト・ヒューマン誕生 コンピューターが人類の知性を超えるとき」で自身のビジョンを説明しているが、同氏はそれ以来この考えを再三強調している。発達したAIとナノテクノロジーが人間の身体を補完し、脳を強化するというのがKurzweil氏の基本的な考えだ。しかも、それでサイボーグ化するのではなく、自分自身の高みを極めて、面白く賢く、魅力的で、病気にも強くなれるのだという。だが、それはほんの始まりにすぎない。
Kurzweil氏によると、これがすべて2029年までに起こるという。その後の新しい時代では、人間は頭の中身をアップロードして完全にソフトウェアベースとなり、肉体を離れて、クラウドで永遠に生きるのだ。
もっとも、これは2030年代についての予測なので、はたしてこの予測がどうなるのか、これから10年をかけて確かめていかねばならない。
遺伝子工学の魔神が、瓶から放たれてしまった。中国で、遺伝子操作された胚から双子が生まれた(双子はその後、中国内で匿名のまま生育しているという)と言われている、その瞬間のことだ。
これより反道徳性の低い遺伝子編集技術、例えばCRISPR/Cas9(DNAに対して、分子のハサミのように機能する)は、治療の一環として発展し続けるだろう。だがそこには、親の欲求や軽い気持ちに合わせて遺伝子を操作された赤ん坊、いわゆる「デザイナーベビー」が当然になった時代に発生する倫理的な問題ものしかかってくる。
2020年大統領選に向けた指名をめぐってトランプ大統領と争っている共和党候補でもある、著述家のZoltan Istvan氏は、体外配偶子形成という新しい関連技術が、近いうちに不妊治療や子作りのアプローチを変えうると話している。個人の幹細胞から精子や卵子を作り出す技術である。
「体外配偶子形成の技術は、女性の生き方を変えうる。タイムリミットに縛られなくなり、年齢を問わず子どもを持てるようになるからだ。この技術は男性にも使え、子どもを持つためにパートナーさえも必要なくなるかもしれない」(Istvan氏)
Istvan氏は、2~4年以内にこのアプローチを人間に試し、2027年までには商業利用が実現するかもしれないとしている。
一方、男性用の避妊ピル、記憶力を強化する脳内埋め込みチップ、3Dプリンターで形成した臓器など、医療でのイノベーションにも注目だ。
楽観的な結果だけを探すのは容易だが、暗い展望にも目を向けないわけにはいかない。われわれは既に悲劇的な場面の幕開けをいくつも目撃しているのかもしれない。それは次の10年間にも深刻になりうる問題なのだ。ほんの数例だけ挙げておこう。
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