IT企業が世界最大の“レストラン運営会社”になるかもしれない--DXで変わる食の世界

 食に関する先進的な取り組みを紹介する「CNET Japan FoodTech Festival 2019 “食”の新世界に挑戦するイノベーターたち」が10月30日、東京ベルサール御成門タワーで開催された。本記事では、各セミナーの中でも「DXで変わる食領域〜国内海外の実例紹介」をお伝えする。登壇したのは、ソフトバンクや上場会社などで新規事業案件を手がけ、現在は独立して大手企業の戦略をサポートするスペックホルダー代表取締役の大野泰敬氏だ。

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スペックホルダー代表取締役の大野泰敬氏

6つの分野で急激に伸びるフードテック

 フードテックは、製品、流通、マーケティングなどの生産から最終商品社に届くまでの一連の流れの中で構成されるエコシステムを効率化、高度化しようとするテクノロジーの総称。その範囲は広く、新しい取り組みが次々と進められている。

 しかし、食の業界の人に話を伺うと「食品業界は変わらない、我々には関係ない」や「まだ大きな変化は起こらないだろう」いった反応が多いという。「食の業種は異業種が参入しにくいと考えられてきましたが、それはもう過去の話。DXの力で大きく変わりますし、それに対応していけない会社は淘汰されていく」と大野氏は訴える。

 DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のこと。進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変えるイノベーションを指す。その結果、いままで参入してこなかった巨大IT企業が続々と参入してきており、食品業態全体に革命を起こそうとしている。

 では、一体どんなことが起きているのか。主要フードテックのなかから6つのカテゴリーについて紹介する。

アグリテック

 農業とテクノロジーを組み合わせた造語。従来の農業における課題をドローンやブロックチェーンなど、テクノロジーを使って解決し、農業の効率化や収益性を改善することを期待している。このなかで注目カテゴリーは、上記以外に生産管理、農業バイオ、新型ファームなどが挙げられる。

 生産管理は、テクノロジーを活用して、農場すべてのタスクを管理、整理、最適化するもので、ブロックチェーンの高いトレーサビリティ性能により、生産から販売までの流通をすべて可視化。これを発展させたスマートコントラクト、労働者の生活向上への取り組み、金融調達なども含まれる。新型ファームでは、品質や収穫量を高めAIも活用して、美味しい食品を作る都市型農園が生まれている。

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都市型農園「Plenty Inc」。屋内で最適な水耕栽培をすることで、美味しい食材を一年中収穫できる

フードサイエンス

 昆虫食や代替肉、卵を使用しないマヨネーズなど、健康的で環境にも優しい食品づくりを目指す分野。完全栄養食もその1つで、人間に必要な栄養素だけを食べられるようにしたもので、海外で伸びてきている。また、パッケージも簡素化し、土に還るプラスチックなどを使用して、環境に優しい食品づくりを目指している。ほかに、アプライアンス/調理家電でも、効率的に調理できる器具やアプリの開発、ユーザーごとに調理を最適化するパーソナライズ化も進められている。

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マルコメの「大豆ミート」。肉や小麦粉の代わりに大豆を使った代替食が生まれている

フードサービス

 人手不足や管理の手間に時間が割かれている店舗向けのソリューション。予約プラットフォームやデリバリー、調理ロボットなどが注目されている。予約プラットフォームの「TORETA」は情報化が遅れていた飲食業界に、予約・テーブル状況の管理、顧客情報の一元管理などをITの力で実現している。

 なかでも大野氏が注目するのが自動販売機だ。海外で急激に伸びてきている市場で、サラダやフレッシュなスムージなどが無人で購入できる。単に販売するのではなく、AIが搭載されたものや生体認証が入ったものが登場し、ユーザーの好みに合ったものを勧める機能のものもある。

 米国では、新鮮な食材を販売する自販機もあり、販売されなかったものは寄付される仕組みとなっており、フードロスをなくす仕組みが取り入れられている。日本では、自動販売機というと飲み物が中心だが、海外ではさまざまな食品の販売に使われ始めている。

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アメリカのWilkinson Baking Companyが開発した「BreadBot」。5種類の食パンを全自動で焼き上げられ、そのまま自動販売機で売られる

コーチング

  パーソナライズが進み、食事面から健康を促す仕組み。蓄積した情報からAIがレコメンドしたり、日本ではまだまだではあるが、海外では遺伝子系が伸びてきている。また、レシピは動画で説明するサービスが増えてきており、スマート家電との相性もいい。レシピというとクックパッドが有名だが、動画レシピサービス「DELISH KITCHEN」は、すでに1500万人が利用している。大野氏は「グリーでゲームを作っていた吉田氏が起業したエブリーのサービスで、たった数年で日本最大級に上り詰めています。これまで食の知識がゼロだった人でもITの知識を駆使して、一気に王者になれる時代になっている」と語った。

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エブリーの「DELISH KITCHEN」。掲載しているレシピは専門家がつくったオリジナルのもの

フードデリバリー

 商品の配達やショッピング、レストランでの食事も、ミールキット、フードデリバリー、サブスクリプションサービス、配達ロボットなどが登場。なかでも伸びているのがフードデリバリーだという(2ページ目で紹介)。大野氏は、これに小売業を入れた6つの分野でテクノロジーを取り入れた変革が起きていると解説した。

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「UberEats」はアプリで注文し、配達してくれるサービス。配達者はUberに登録することで、好きなとき好きな場所で働ける

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