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IT企業が世界最大の“レストラン運営会社”になるかもしれない--DXで変わる食の世界 - (page 2)

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話題になった無人コンビニも「実証実験から抜け出せていない」

 フードテックに携わる企業は、世界で4000社程度に達する。しかし、“テック”と言ってもほとんどが実証実験段階で、成長段階の域を超えておらず、使えるものだったとして高い技術だと意味がないという。なぜなら、コストに跳ね返ってしまうことで、逆に使いづらくなったりするためだ。

 話題になったフードテックのその後を追いかけてみると、そのほとんどがクローズしてしまっていると大野氏は指摘する。たとえば、スムージを作る自動調理器は、それを世話するために何人も必要で、人間がやったほうが断然効率的だったりする。また、中国のロボットレストランなどでは、最初だけ物珍しいものの飽きも早い。ロボットアームがコーヒーを淹れるマシンも、自販機のほうが圧倒的に早くて正確だ。

 無人コンビニも同様で、コストの問題などもあり、結局のところ実証実験から抜け出せていない。こうした成功しない理由の多くは、市場が未成熟あるいは存在しない、技術力が低い、クオリティが低い、ターゲットにあっていないなどが考えられる。未来を感じるテクノロジーはワクワク感があるものの、実用的ではないものが多く、寄せパンダだったり、投資資金を集めるなど、別の目的があったりするケースもあるという。

 大野氏は、「話題性だけが先行して、ユーザー目線での開発ができていないのではと思う。誰がいくら使って、どんな悩みを解決するためのものなのか。その目的を達成するためには何が必要かを考えるべき」と語った。

フードデリバリー市場がいま熱い理由

 そうなると、フードテックはビジネスとして難しいと思われるかもしれないが、きちんと解決方法はある。フードテックのなかで急成長していのが、先述したフードデリバリー市場だ。Amazon、Google、アリババ、ソフトバンクといったIT企業が参入しており、今では世界のデリバリー市場は10兆円規模と言われている。

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世界のデリバリー事業の規模は10兆円

 なかでも中国がダントツトップで、2017年は5兆円だった市場は、2020年には14兆円になると予測されている。注目企業としては、シンガポールやインドネシアを中心に急成長している「Grab」、日本でも展開している「Uber Eats」、レストランの料理をテイクアウトで届ける米国の「DoorDash」、Amazonが出資していて、アジアで成長している「Deliveroo」、Googleと連携するインド最大の配送プラットフォーム「Swiggy」、アリババのエコシステムを利用し、レストランの食事を数億人の配送者を通じて届ける「餓了」など多岐におよぶ。

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「餓了」はアリババのエコシステムを活用していて、圧倒的なユーザーが利用する土壌がある

 Googleもフード事業に積極的に参入してきており、今後は検索することで、近くの店舗から注文・デリバリーできるようになるという。現時点では米国のみのサービスで、日本ではまだ対応していないが、もし導入されれば、急激な市場の変化が起こると大野氏は予想する。

 「ぐるなびや食べログが急激にシェアを落としているのは、Google(検索やマップ)からレストランの予約ができるようになったことも要因の一つ。これまでのプラットフォームに行かなくてもGoogleで完結してしまうので、非常に成長する鍵になっている」と大野氏。

 フードデリバリーは「単なる出前でしょ?」と思われがちだが、それは入口に過ぎず、これからの食生活が大きく変わる可能性を秘めている。飲食店や宿泊業の廃業率は18.9%もあり、飲食店の経営は非常に大変だ。仕入れや原価管理、接客人件費、回転率といった日常の業務・経費に加え、立地や店舗の規模も決まっているため、お客の数にも限りある。

 そこでフードデリバリーを利用すれば、立地や店舗の規模といった制約がなくなるほか、特化することで接客が不要になり、設備投資も削減可能。それを進めていけば、料理を作ることに集中でき、店舗もいらなくなる。

 すでに米国には、「CLOUD KITCHENS」などがあり、設備投資や食材の共同購入などをサポートすることで、フードデリバリーだけでの運営を可能にしている。日本でも「キッチンベース」が同様のサービスを提供しており、現在、中目黒で7つの店舗を運営している。

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日本のクラウドキッチン「キッチンベース」は、デリバリーにUberEatsを活用している

 モビリティや配達そのものも進化してきている。ベースとなる部分はキッチンで作り、注文が入り次第、大型トラックで最終調理したあとに配達する米国のピザ屋「Zume Pizza」。自宅に届く直前に調理を完了させるのが特徴だ。

 これが進化すれば、キッチンそのものを移動させ、好きな場所で出店できるようになる。最初は人間が運転するが、最終的にはロボットが調理し、自動運転で届けることを目指している。トヨタとソフトバンクが共同で設立したMaaS企業「MONET」には、ホンダなど大手自動車メーカーも出資している。そこで提供する自動運転車はモジュール化されており、レストランやファッションといった、その時々に合わせて変化できるという。

 移動が変わることで、流通やモノの買い方、私たちのライフスタイルが大きく変わろうとしている。駐車場ビジネスにもその波が押し寄せており、人に商品やサービスを届ける場所として生まれ変わろうとしている。米国の「REEF Technology」は、空き駐車場にキッチンコンテナを設置し、デリバリー向け商品を展開。急激に拡大しているという。

 実は、フードデリバリーの未来に関わる領域に深く関わっているのはソフトバンクだ。フードデリバリー事業に重要な世界のライドシェア市場の90%を締めている。ロボットが自動調理する時代に備え、ロボット技術を開発する企業や都市型農園にも出資している。

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ライドシェア事業を牛耳っているソフトバンクはMONETにも絡んでいる
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コンソーシアムを作り、すでに400社が連携

 大野氏は、「これは偶然ではなく、食や流通の将来を見据えてソフトバンクは投資していると私は考えています。もちろん、GoogleやAmazon、アリババも積極的に投資しており、ソフトバンク以外の企業が成功する可能性もあるが、どの企業が成功しても、いままでまったく食とは関係なかった企業がナンバーワンを取ることになる。IT企業が世界No.1のレストラン運営会社になっているかもしれない。今までの常識はDXの力で大きく変わる」とし、「食の領域に関しては、この4社が台風の目になることは間違いない。フードテックはこれから必ず伸びる領域であり、ビジネスチャンスが必ずある。単独でやるのかパートナーと連携するのか、今後その判断が非常に重要なものになる」と締めくくった。

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