量子コンピューターは、実用性に大きな制約を抱えている。量子情報処理の基本単位である量子ビットは、攪乱されやすいため、絶対零度からコンマほどしか高くないというほど超低温の複雑な冷却ユニットに格納しておかなければならない。コアハードウェアを取り扱うために動作を停止するには、損傷せずにシステムの温度が上がるまで2日以上かかるし、再起動のときも超低温になるまでまた2日かかる。量子コンピューターがノートPCのサイズになる日は、そう簡単には来そうにない。
量子ビットの安定性が上がれば、量子コンピューターの連続動作時間は長くなる。Googleの量子研究科学者Marissa Giustina氏によると、今のところ、量子ビットの有効寿命はおよそ1000万分の1秒で、同氏は「これが延びることを期待している」と話している。
量子コンピューティングには、費用の問題もある。GoogleのSycamoreコンピューターは数百本のケーブルを使って量子チップに制御信号を送っているが、そのケーブルは1本が2フィート(約60センチ)あたり1000ドルもする。量子コンピューターを日常的な計算業務に使うには、まだ何年も継続的に、大規模な研究開発への投資が必要になるだろう。
2019年の報告書で、米国科学アカデミーは、実用的な量子コンピューターの登場に10年以上かかると予測している。
それでもGoogleは、自分たちが正しい道を歩んでおり、量子コンピューターの進歩は従来型コンピューターを追い抜くだろうと考えている。性能は、従来型コンピューターについてムーアの法則が示してきたように、単に指数関数的に向上するだけでなく、二重指数関数的に向上すると期待しているからだ。
Googleがこれから対応しなければならない課題は多い。量子ビットが誤りを発生させずに稼働する時間を延ばすことも、そのひとつだ。誤りが発生すると、量子ビットが誤った情報を記録して計算を妨げてしまうため、量子誤り率を改善することが今後の最優先目標だと、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者John Martinis氏は語っている。同氏は、Googleの量子コンピューティングハードウェアチームの責任者でもある。
「われわれがめざしている最優先事項は、コンピューターの量子誤りを改善することだ。これまでは、量子超越性を実証するために、それを無視してきたようなところがある」。Martinis氏は、巨大な5台の量子コンピューターがぶら下がる中で、そう語った。
今後、量子ビットの不安定性を回避する量子誤り訂正技術など、さらに根本的な変化が訪れるだろう。Googleの研究者たちは、量子ビットが54個から100万単位になる日まで、これから何年もかかる計画に臆することなく臨もうとしている。しかも、忍耐強く。
「10年に及ぶこの工程には、理論、エンジニアリング、実際の物理を超えたイノベーションが必要になるだろう。そうなることは覚悟している」(Bacon氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する