Googleの量子研究者は、研究が理論から実験の段階に進んだことで感無量というところだ。「はじめのうちは、全くの徒労のようだった。存在もしない機械のためにアルゴリズムを開発していただけだったから」と語るのは、Googleの量子ソフトウェア担当チームを率いるDave Bacon氏だ。それがついに、「実際に動かして、どうなるか確かめられる」段階になったのだ。
Googleが構想している実際の用途は、多岐にわたる。
Feynman氏は、1981年にこの最後の点に触れていた。「残念だが、自然は古典力学では扱えない。自然をシミュレーションしたければ、量子力学的に考えた方がいい」と、MITでの講演で語っているのだ。従来型のコンピューターでもシミュレーションで自然の近似値を得ることはできるが、Feynman氏が求めたのは、本当の姿を得られる量子コンピューター、「自然と全く同じようにふるまう」コンピューターだった。
量子コンピューティングでGoogleと競合するIBM、Intel、Rigetti Computingなども、シミュレーションの向上には意欲的だ。
量子超越性といっても、量子コンピューターが従来型コンピューターをあらゆる領域で凌駕するということではない。むしろ、決定的な処理の多くでは遅いくらいで、つまり従来型を置き換えるのではなく、併用されるということだ。
フランス、モンペリエ大学の物理学者Michel Dyakonov氏は、量子コンピューターが主流になるとは今でも考えていない。「実用的になるとは考えられない。『超越性』の探究はどこか作為的で、科学というより誇大広告の部類に入る。3×5とか、3+5とか、初歩的な計算を量子コンピューターでやってみせてほしい」(同氏)
IBMもGoogleの成果に異を唱え、Googleが言う1万年分は、スーパーコンピューティングでも手法を変えれば2.5日で済むと研究論文の中で反論した。とは言っても、IBMの研究者が「量子超越性」という主張を疑っているわけではない。テキサス大学オースティン校の量子コンピューティング研究者のScott Aaronson氏も、従来型としては世界最強であるIBMのスーパーコンピューター「Summit」を使っても、量子コンピューターとの速さの差は1200倍とブログで述べている。
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