いまこそ再考すべきメールマーケティングの効果

橋本勇人 (チーターデジタル)2019年07月19日 15時25分

 マーケティングオートメーション(以下、MA)は、2014年に日本に登場して以来、デジタルマーケティング市場で大きな注目を集めています。MAの活用により、多くの企業が大きな成果を達成しています。

 しかし、企業がMAを導入した当初は混乱も起き、一部のベンダーは、従来のメールマーケティングに代わる魔法のツールであると強調しました。どのMAプラットフォームもコミュニケーションチャネルとしては電子メールの機能を提供しており、ほぼすべてのクライアントは電子メールを使用していますが、MAの機能の複雑性やその他の特性から、決してメールマーケティングに取って代わるものとは言えません。かつて米国の専門家は「そうなる」と断言してはいましたが、そうはならないでしょう。

 実際、従来型のメールマーケティングに復活の兆しが見られます。これを新たなソーシャルチャネルと呼ぶ人もいます。例えば、当社チーターデジタルの顧客で言えば、リクルート様やTSUTAYA様、ベネッセ様といった日本企業が挙げられます。顧客や見込み顧客とのやりとりにデジタルマーケティングを利用している市場において、最近従来型のメールマーケティングが脚光を浴びるようになった理由をこれから説明します。

 なによりも、簡単であることが挙げられます。メールマーケティングは、チームの体制が十分でなくても実施できるものであり、今すぐにでも始められます。マーケティングの具体的な施策であるキャンペーンは、送付先として設定するメールアドレスすべてに同じ内容を配信するという意味でシンプルである電子メールの特色を生かすことで成功するケースが多く、ビル・ゲイツ氏がつぶやいたともいわれる「コンテンツは王様(Content is King)」という言を裏付けるものです。企業がキャンペーンを開始しようとすると、そこには、画像サイズが大き過ぎるといった単純なものからより複雑なものに至るまで、メール送信の失敗を引き起こす無数の技術的な原因があります。それでも電子メールを使い、効果を上げようとする際に、コンテンツは企業が最も確実に成果を計算できる要素の1つなのです。

 メールマーケティングは、メディアへの露出度を上げる上で重要な役割を果たします。最近は、FacebookやTwitterといった企業がデータを持つようになり、ソーシャルメディアマーケティングにおいて、どの消費者がいつどんなコンテンツを見るかを、これらの企業が決めるようになってきています。

 しかし、ソーシャルメディアとは違い、マーケターは電子メールで消費者と直接つながっているため、消費者との関係を持つより多くの機会があります。顧客獲得効率も大切な要素です。消費者は不要な電子メールであれば受信を拒否するので、メールの送付者は購入する意思のない顧客にコストを投下してしまうリスクが減ります。

 メールマーケティングは消費者の利便性を高めるものです。近年ソーシャルメディアプラットフォームでのデータ漏えいやデータの売却が多く見られたため、人びとは情報の提供に躊躇しています。電子メールの場合は、メールアドレスを提供するだけで済み、他には何もいりません。顧客はインターネットで広告やその他のプロモーションに追跡されているという気味の悪い感覚に陥ることはないのです。そのような追跡で、どれほどプライバシーが犠牲にされているか分かりません。言うまでもなく、評判の高いESP(メールサービスプロバイダー)はメールマーケティングを実施する際に、メールの配信において、消費者データを保護するためのセキュリティ対策を講じています。

 メールマーケティングを強化した理由を語ってくれたクライアントがありました。結果がすぐに分かるのがその理由です。メールの受信者にすぐに行動を促せるので、瞬時に結果が得られるといいます。ソーシャルメディアチャネル同様に、メールマーケティングのマーケターも、人びとがまさにいる場所にリーチできます。しかも、その運用費用は、他のマーケティングチャネルを利用した場合よりも低いのです。

 誤解を避けるために言及しますが、消費者との良い関係を創出するためのチャネルとして、メールマーケティングのみを利用することを勧めているわけではありません。それでは対応できる市場が狭くなり、テクノロジーをベースにした本当のデジタルマーケティング戦略が実施できなくなります。どの技術とチャネルを利用する必要があるかはエンドユーザーが決めることです。ただし、ソーシャルメディアチャネルではますます多くのデータが他者と共有されるようになっており、かつては費用対効果の高い「1対1マーケティング」という売り込みがなされていましたが、今では「多対1」モデルの度合いを高めています。他方で、メールマーケティングは依然として真の1対1マーケティング戦略です。

橋本勇人

チーターデジタル株式会社 社長

チーターデジタル日本の社長。チーターデジタルは「マーケター専門」の世界有数の独立系マーケティングテクノロジー企業です。橋本は10年以上にわたり日本法人を率いてきました。クライアントがデジタルマーケティングのあらゆる側面から、顧客と有意義な関係を持つための支援に重点を置いています。チーターデジタルは、訪問営業の際に会うチームが、そのまま実装などのクライアントへのサービスとサポート、専門サービスを実施する数少ないESPないしMA企業のひとつです。

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