熱狂的な“ファン”を育てる「ファンマーケティング」のコツ--よなよなエールやH&Mが語る - (page 2)

ファンが感じる“魅力”を明確にしようとするプロント

 プロントコーポレーションの矢野氏は、プロントの顧客構成について「一見さんが8割、リピーターさんが2割。そして2割のリピーターさんが7割の売上をもたらしてくれる」と、ほとんどそのままパレートの法則に当てはまる様子を解説した。

プロントコーポレーション 営業本部 営業企画部の矢野純子氏
プロントコーポレーション 営業本部 営業企画部の矢野純子氏

 プロントコーポレーションは1988年創業で、31年目に入る企業だ。矢野氏は「いままで30年間来ていただいたお客さまが一番のロイヤルカスタマーと考えていたが、本当に時代が変わり、消費者の価値観も変わってきた」と語り、「1年前から、これからもっとプロントを愛してもらうにはどうしたらいいかと考え直し、メディアの使い方やツールなどを見直して、顧客向けのスマホアプリも導入した」と説明した。アプリでは、商品へのこだわりや、裏話なども提供して、新しいファンを開拓することも狙っているという。

 そして、その一環として顧客インタビューを始めて実施したという。その結果「これまでの、毎朝コーヒーを飲みに来てくれるファンとは違う姿のファンが現れつつある」ことが分かったという。矢野氏は「プロントにはコーヒーだけでなく、パスタもあり、夜はお酒が飲める。いろいろな使い方ができる店舗だが、その点に気づいて、プロントを選んで使ってくれるファンがいることが分かった」とその結果を説明する。

 ここでモデレーターの金子氏が、「つい先日、初めてプロントで夕食をした」と話し、「ピザやパスタは美味しくて、サイゼリヤとはちょっと違ってアダルトな感じというか、そういう何かがある」と感じたエピソードを披露した。

モデレーターを務めたヤプリ 執行役員 CCO 兼 エバンジェリストの金子洋平氏
モデレーターを務めたヤプリ 執行役員 CCO 兼 エバンジェリストの金子洋平氏

 矢野氏はそれに応じて、「その『何か』を明確にして文字の形で発信したいと思って、必死にやっている」と打ち明けた。新たなファン層が生まれつつあり、そのファンが感じる魅力を明確に捉えようとしているが、まだ難しいということだろう。

会員プログラムを軸にファン拡大を狙うH&M Japan

 H&M Japanでは4月6日に会員プログラム「H&M CLUB」をリニューアルし、「H&M MEMBER」という名称で再スタートを切ったところだ。そして、H&M Japanではこの会員プログラムを起点に、ファン拡大を狙っているという。

 H&M Japanの田原氏は、ファン拡大のために「お客さまとの接点をなるべく多く作って、それぞれの接点で良い経験をしてもらい、関係を作ろうとしている」と語る。その接点づくりと、接点で良い経験をしてもらう上で、会員プログラムが役に立っているという。まずは、会員プログラムによって取得できた顧客の属性や購買データなどを見て、個々の顧客に合わせて、それぞれが本当に必要とする情報だけをメールなどで送信しているそうだ。

H&M Japan メディアマネージャー 兼 H&M MEMBERマネージャーの田原美穂氏
H&M Japan メディアマネージャー 兼 H&M MEMBERマネージャーの田原美穂氏

 そして、顧客が来店した店舗で大きな変化が発生したという。田原氏は「会員プログラムを導入し、個々の顧客に合わせた情報や特典を提供することで、来店客と店員とのコミュニケーションが発生するようになった」という。特に、特典を用意したことでアプリの説明や、現在提供している特典の説明など、来店客に伝えることができたことが大きいとも語る。その結果、店舗の店員から「顔見知りのお客さんができるようになった」という声も受けたという。

 そして、H&M Japanではイベントも開催しており、その参加者がSNSなどで発信するコメントや写真が新たなファン開拓に役立っているとも言う。例えば同社は、海外で開催するファッションショーに「ファン」を送り出しているが、田原氏は「これまでファッションショーは一部のVIPや有名人しか参加できなかった。しかし、VIPや有名人がファンになって商品を買ってくれるわけではない。ファンにこそファッションショーに参加し、体験してもらって、独特の雰囲気を味わってもらいたい。そう考えて送り出すことを決めた」という。

 ただし、会場が海外になるため、送り出せるファンの数は1〜2組に限られることから、応募してもらう際にはその理由をしっかり記入してもらい、1つ1つ確認して選定しているという。さらに、応募者のSNSへの投稿内容なども見て、送り出すファンを決めているそうだ。

 その結果、選ばれたファンがファッションショーに参加してSNSに投稿するコメントが、本当に感激していることが強く伝わってくる内容になっているという。そして、このコメントには新たな顧客を呼び込む効果も期待できると田原氏は語った。

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