ARで“超能力”を身につける未来--「HoloLensの父」A・キップマン氏に聞く - (page 3)

Scott Stein Ian Sherr (CNET News) 翻訳校正: 石橋啓一郎2019年03月15日 07時30分

--視線トラッキングにはどんな課題やチャンスがあると思われますか?

 私の考えでは、その話は最終的に、AIに人間や、場所や、ものをどう認識させるかという問題に帰着します。人間が会話するときには、相手が発しているシグナルをできるだけ多く手に入れたいと思うでしょう?あなたをどこかに瞬間移動させるためには、あなたが何をしているかを知る必要があるし、あなたを十分に理解する必要があります。そのために、あなたの顔の表情を知りたいわけです。わたしは目や、目の周りに表れる表情に非常に注目しています。そこには、より没入感が高く、より快適な体験を生み出すための情報がたっぷり詰まっています。

 それからわたしは、ARデバイスのセキュリティについてもよく考えています。そこに最先端の虹彩認識システムを入れたいと思っているんです。HoloLensに虹彩認識システムを組み込んで、安全なバイオメトリクスシステムを実現すれば、すべてのデータ、快適さに関するすべての情報、すべてのカスタマイズ情報を安全に扱えるようになります。

 それからもう1つ重要な要素があります。HoloLensは常に、デバイスと目の相対位置を把握した上でホログラムを作成しています。この情報がなければ、正確な画像を表示できません。表示される画像に誤差があれば、その分、ユーザーの目と脳が情報処理を行い、誤差を補正することになります。そうすると、長時間デバイスを利用すると疲れてしまいます。目の位置が分かっているからこそ、人間が動いてもその情報処理の大部分をデバイスに行わせてホログラムを調整し、よりシャープで、没入度が高いホログラムを作成できるのです。

--HoloLensはほかのARヘッドセットと違って、手で物理的な操作をする手段が用意されていませんが、コントローラや触覚フィードバックは利用しないのですか?

 触覚フィードバックは大好きですよ。この取り組みを始めた11年前には、まず入力に取り組みました。Kinectは要するに、エッジに環境を観察するセンサーを持たせて、人間や場所やものについて理解しようとするものでした。Kinectは入力のイノベーションでしたが、HoloLensでは入力に出力が加わりました。

 究極の形は、エネルギーのやりとりができることです。0と1が光の信号になるだけではなくて、実際にエネルギーになり、ホログラムを押すと、反作用が感じられるところを考えてみてください。ホログラムを手に持てば、そのホログラムの温度が感じられたりするわけです。こういうものもまた、触覚フィードバックの一種です。従来考えられていたものよりもはるかに進んだ形ではありますが、これももう1つの没入感の形です。わたしからあなたにホログラムを投げつけて、あなたがそれを受け取ったときにその衝撃を感じられたとしたら…。没入感は大きく高まるでしょう。ホログラムを手に取って、その温度を感じられるようになれば、没入感のレベルも、体験のリアル感も大きく変わります。

 もちろん、これはまだ夢の中の話ですが…。それから、われわれは人間は道具を作る生き物だとも考えています。わたしなら、医者に道具を使わずに素手で手術をして欲しいとは思いませんし、フォークとナイフなしでごはんを食べたいとも思いません。「両手に何かを持ってはいけない」というような考え方は持っていないのです。

 実際HoloLensでは、人間が手にものを持つことを前提としています。例えば道具や、コントローラーですね。HoloLensの中だけで使えるデバイスも考えられますが、ご存じかどうか知りませんが、AR用のライトというものもあります。そのライトを点けると、現実のものだけではなくて、ホログラムにも光が当たるのです。これは大した体験ではありません。しかし、そのデバイスの赤外線版を作って、明かりを見えないようにすることも簡単にできます。また、われわれの計画の中では、ユーザーが道具を手に持つことも考慮されています。これは、Microsoftが作るデバイスだけの話ではありません。ユーザーが本物の金槌を持っていることもあるでしょう。本物のコーヒーカップを持っていて、その状態でホログラムを触りたいということもあるはずです。

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