2018年秋に開催されたFacebookの開発者会議、「Oculus Connect」に筆者は参加できなかったが、このとき初めて発表され、デモも公開されたのが、間もなく登場するスタンドアロン型ヘッドセット「Oculus Quest」だ。2019年春の発売が予定されており、ヘッドセットとコントローラの一式で400ドル(約4万3600円)を切る。しかも、PCベースの今の仮想現実(VR)機器と違って、煩わしい壁センサも、他の付属品も不要だ。
そのOculus Questを、2019年1月はじめに開かれた「CES 2019」でようやく試すことができた。Facebookが、前回チャンスを逃した人に向けてか、控え目にデモを行っていたのだ。ちょうど、筆者がHTC「Vive Pro Eye」のデモをいろいろと試したのと同じ日だった。
Vive Pro Eyeのアイトラッキング(視線追跡)は、VRと拡張現実(AR)の可能性が次に向かう高みを示すものではあるが、そこで筆者が試したことも、Oculus Questの体験には比ぶべくもなかった。
それどころか、CES 2019全体でも、Oculus Questほど刺激的なものはなかった。ラスベガスで、コンベンション会場に正式には出展していなかったが、筆者の個人的ベストだと言ってもいい。しかも、CESに並ぶ多くの製品と違って、これはあと何週間かすれば登場する。数年も待たされる(そのあげく製品化されない)ことはない。そして、Oculus Questはホンダの「シビック」など、いろいろなものにたとえられているが、初めて体験した筆者からすると、これまで筆者が試したVRデバイスというより、「Nintendo Switch」を思わせるものだった。
But Oculus Quest is so great. I loved the motion in Superhot and a tennis game. I nearly ran for a ball and into a wall. #CES2019 pic.twitter.com/LUg2ysXrtV
— Scott Stein (@jetscott) 2019年1月8日
Oculus Questは、399ドルと決して安くはないが、家庭用ゲーム機の価格帯だ。Nintendo Switchより100ドル高いものの、衝動買いしそうな範囲でもある。Facebookは、Amazonが展開するハードウェア並みの価格でモバイルVR体験を提供することに力を入れているらしい。VRを体験する人を増やせば、それだけVRの価値が上がるからだ。
その戦略はともかく、現在のVRおよびAR市場で出回っている製品の価格と比べてみよう。「Magic Leap One」は2295ドル(約25万円)。スマートグラス、例えば「Vuzix Blade」などは、ゲームもそれほどできないのに999.99ドル(約11万円)だ。「PlayStation VR」をはじめとする他のVRハードウェアは、200ドル台と安価だが、何かと付属品が必要になる。
Googleのように、(やや)低価格のVRヘッドセットを模索してきた企業もあり、2018年にレノボが発表したスタンドアロン型の「Mirage Solo with Daydream」は399.99ドル(約4万3600円)だった。だが、VRにおけるGoogleの野望、そしてその実績は、これまでのOculusほど一貫してはいない(とはいえ、Googleは既に、さらに発展したスタンドアロン型VRにも着手しており、今後の動きがFacebookに並ぶかどうかは注目だ)。
実のところ、Oculusは完全スタンドアロン型のVR製品を、既にOculus Questの半額ほどで送り出している。2018年に出た199ドル(日本では2万3800円)からの「Oculus Go」がそれで、VR体験の入門には最適だ。だが、Oculus Questで特筆すべき点は、6自由度(6DoF)が加わったことにある。ヘッドセットが、空間でのユーザーの動きを、3軸の両方向つまり上下左右前後のすべてで感知するということだ。しかも、それを感知するセンサはヘッドセットに組み込まれており、高価で煩わしいセンサを室内に設置する必要もなくなる。この違いは決定的だ。
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