2018年1月、最終候補地が20まで絞られたところで、公式の誘致プロセスは秘密の舞台裏交渉に移る。報道機関にも地元市民にも、入札の多くのことについて、基本情報すら入らなくなった。
HQ2が1つの都市には大きすぎると認識したAmazonは、プロジェクトを2つに分けたうえで、2018年11月に建設地を発表する。待望のゴールドチケットを手にしたのは、バージニア州アーリントンと、ニューヨーク市クイーンズ地区のロングアイランドシティで、それぞれに25億ドルをかけてキャンパスが作られることになった。
公式発表がある前から、ニューヨークキャンパスに対する反対運動は始まっていた。地元の進歩的な政治家数人が、民主社会主義者であるAlexandria Ocasio-Cortez氏の下院当選という余勢を駆って、プロジェクトへの批判を始めた。Amazonに対する30億ドルもの優遇対策は、特にBezos氏が世界有数の資産家ということもあって、同社に対する福祉と揶揄された。
Amazonはおそらく、本拠地シアトルの行政との関係ほど対立的にならないことを期待して、「企業にやさしい環境」を提供してくれる候補地を求めていたが、その期待に応える候補地はなかった。
「Amazonは、自分たちの大盤振る舞いが拒絶されるとは思ってもいなかった。だが、ふたを開けてみると、労働組合の町として適正な仕事を求める、というのがニューヨーク市民の答えだった」、とGivan氏は指摘する。
12月と1月に開かれたニューヨーク市議会では、Amazonの労働状況と、従業員の労組加入に関する中立の拒否をめぐって、同社幹部が糾弾されている。市議会がHQ2の建設プロセスから外され、計画がニューヨーク州に移されたことから、Amazonに向けられる対立感情はさらに悪化することになった。
一方、バージニア州のプロジェクトは、それほどの反対を受けていない。おそらく、同州の優遇措置が5億7300万ドルとだいぶ小規模であることも一因だろう。
市と州の政治家による反対が予想以上に激しくなると、Amazonの上層部はそうした政治家がプロジェクトの長期的な成功を危うくすると判断した、とAmazonの計画に詳しい関係者が語っている。地元政治家とのプライベートな会合も何度か開かれたものの、対立は公聴会と同様に激しく、Amazonの撤退を求める声は一貫していた。ここに及んで、Amazonには選択の余地がほとんどなくなった、と関係者は言う。この見方は、反対派の政治家何人かから寄せられたコメントとは対照的だ。Amazonは、妥協した契約でプロジェクトを続行するよりも撤退する方を選んだというのが、反対派政治家たちの見解だった。
権利擁護団体や一般市民からも反発はあったが、Amazonはそうした問題への対処をシアトルで経験済みであり、これらの団体の中でも支持層を作り出そうと、支持獲得の活動を続けていた。
政治家による強硬な反対が、おおむね好意的だった世論調査とあまりにかけ離れていることをAmazonは危険信号と受け止め、最終的に撤退を決めることになった、と関係者は話している。
もうひとつ懸念材料として大きかったのは、Michael Gianaris上院議員が、2月はじめにニューヨーク州公共機関管理委員会メンバーに任命されたことだろう。同委員会は、Amazonのプロジェクトを拒否する権限を持っているからだ。
ニューヨーク市のプロジェクトを撤回するという決断は、数日前に下されたばかりだ、と関係者は話している。14日の発表は、Amazonがニューヨークからの撤退を検討中か、という8日の報道を受けたものだったが、その時点ではAmazonはまだ「近隣地域との関わりに注力」していると応じ、同プロジェクトにまだ取り組んでいることを示唆していた。
Amazonは、ニューヨークで5000人以上の従業員を既に抱えており、14日の撤退発表ではそのチームの拡充を続ける予定だと語った。
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