熱烈招致のはずが--アマゾンのニューヨーク第2本社計画が頓挫した理由 - (page 3)

Ben Fox Rubin (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2019年02月21日 07時30分

 計画に反対していた進歩派の団体や政治家、そしていくつかの労働組合が、撤退の決定に称賛の意を表明している。他の組合(建設業など)は、10年以上にわたって組合員の仕事が保証されるとして、プロジェクトに賛同していた。

 全米食品商業労働組合は、反対派の一員だった。

 「今にして思えば、このプロジェクトの根底には、欲に目をくらませること、そして納税者は毎日Amazonの新しい本社に貢ぐべし、というJeff Bezos氏の貪欲な信念があった。Amazonは現在進行形で国内の膨大な数の小売業者を廃業に追いやっているというのに、だ」。同労働組合の組合長Marc Perrone氏は14日、声明でこのように述べている。

 この批判の前提となったのが、過去2年間で売り上げがほぼ倍増しているにもかかわらず、その間にAmazonは連邦所得税を1ドルも払っていないという報道だった。Institute on Taxation and Economic Policyが13日に発表した内容によると、米国内での収益に対してAmazonは21%の税率を適用されるはずだが、実際には減税措置や税額控除によって逆に1億2900万ドルもの税の払い戻しを受ける見込みだという。

後を引く影響

 ニューヨーク市長とニューヨーク州知事は、HQ2プロジェクトの招致を決定し、それがこれほど短期間で破綻したことで手痛い批判を浴びている。11月、Andrew Cuomo州知事は同プロジェクトをニューヨーク州にとって圧倒的な勝利だと評していた。このプロジェクトによって今後の25年間で275億ドルの税収が見込める、30億ドルという優遇対策の見返りとしては十分な巨額だという根拠だった。多くの財界人からも、ニューヨーク市にとっての新しい経済活性化要因だったHQ2を失ったことに、困惑の声があがっている。

 「ごく一部の政治家が、地域より、自分たちの狭い政治的利益を優先してしまった。Amazonをロングアイランドシティに招致することを、世論調査で何度も圧倒的に支持してきたこの地域の利益よりも。そして、州のこれからの経済と、この州の人々の利益よりも、だ」。Cuomo州知事は、14日の声明でこう語った。

 同知事によれば、プロジェクトの破綻については、そうした政治家たち、とりわけ州選出の上院議員が「責任を問われるべき」だという。

 HQ2撤退の決定が下されたのは、Bezos氏がタブロイド紙National Enquirerによる脅迫を受けたことをブログで明らかにしたちょうど1週間後のことだった。同紙への捜査を取り下げなければ、Bezos氏の半裸写真などを公開すると書かれていたという。

 これほど短期間で衝撃的な発表が続けば、さしものAmazonも成長戦略への専念に水を差されるおそれがある。

 Amazonによると、HQ2の入札を再開する予定はなく、代わりに米国とカナダの17の拠点で雇用を拡大する予定だという。

 今後は、企業の誘致をねらった高額の優遇措置について見直す都市が増え、今回のHQ2契約につながったような秘密裏の取り決めを禁止する動きも出てくる可能性があるというのが、Givan氏の考えだ。他の大企業も、AmazonをまねてHQ2のような派手なプロジェクトを計画するのを控え、もう少し静かに事を進めるようになるだろう。

 「今回の影響は、長引くのではないだろうか」(Givan氏)

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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