「Googleアシスタント」は気分を察してくれるようになる--担当VPが語る“これから” - (page 2)

Richard Nieva (CNET News) 翻訳校正: 編集部2019年02月18日 07時30分

「Duplex」の衝撃

 Pichai氏が2016年5月、Googleの年次カンファレンス「Google I/O」で7000人の開発者にGoogleアシスタントを紹介する数日前、私は同氏のオフィスでこの製品についての説明を聞いた。Googleは、「Amazon Echo」と直接競合するスマートスピーカー「Google Home」を発表しようとしていた。GoogleアシスタントがAlexaと同じようなものだと見なされるであろうことは明らかだった。

 だが、Pichai氏は最初からGoogleアシスタントはAlexa以上のものだと主張した。当時Pichai氏は次のように語った。「Googleがユーザーに『こんにちは。何かお手伝いしましょうか?』と尋ねるのだ。自分だけのGoogleを構築すると考えてほしい」

 何度か指摘すると、少しいら立ちながらもPichai氏は最終的にはAmazonがこの市場を切り開いたことを認めた。「われわれが先行する分野もあるし、他の企業が先行し、われわれも参入する分野もある」と同氏。

 2018年には同社の野望がより明白になった。Pichai氏が5月に、Duplexを披露したのだ。人間の会話をリアルに真似る、驚くべきAIだ。このAIは、次に言うことを考えているかのように「ええと」や「ふむ」というような意味のない音や“間”を使う。実際にはその応答はあらかじめプログラムされたものであっても、だ。Duplexは現在、限定公開テスト中だ。

 Duplexの目的は、Googleアシスタントがユーザーに代わってレストランや美容院の予約をできるようにすることだ。だが、発表されるとすぐに、業界ウォッチャーやAI倫理学者、消費者が、対話相手の人間をAIが欺く可能性についての懸念を表明した。Googleはその後、対話相手がロボットであることが分かるようにすると述べた。

 それはGoogleにとって重要な瞬間だったとHuffman氏は言う。「私は人々の反応に驚いた。そうした社会的問題が今後どう重要になってくるかを明確に認識した」

規制法の亡霊

 デジタルアシスタントがますます賢くなっていく時代に、プライバシーはどうなるのかというのは、重要な課題の1つだ。

 シリコンバレーがプライバシー慣行に関するかつてないほどに厳しい精査に直面している現在、特に重要なことだ。Facebookは過去2年間、フェイクニュース拡散や大規模データ漏えいなど、危機に次ぐ危機の対処に追われた。1月には同社CEOのMark Zuckerberg氏がWall Street Journalへの寄稿で、データを大量に消費する同社の広告ビジネスモデルを擁護しなければならなかった。Googleは、Androidスマートフォンでの位置情報データ収集や、中国のような権威主義国家の市場への再参入をめぐり、プライバシーに関するスタンスが注目を集めた。Pichai氏は2018年12月、議会の公聴会に引きずり出され、「Dragonfly」と呼ばれる中国でのプロジェクトについての質問に直面し、Googleのユーザーの個人情報に関する全体的な取り組みについて答えた。

 ウェイクワードである「Hey Google」の入力を常に待ち受けるマイク搭載のデバイスをリビングルームに置くことは、事態をさらに複雑にする。

2018年12月、議会の公聴会で証言するGoogleのCEO、Sundar Pichai氏
提供:Alex Wong/Getty Images
2018年12月、議会の公聴会で証言するGoogleのCEO、Sundar Pichai氏
提供:Alex Wong/Getty Images

 コンピュータサイエンスの博士号を持つHuffman氏は、「Google HomeやAlexaは、個人向けではない初のデバイスだ。(中略)これらは共有環境で使うコンピュータデバイスだ。部屋に置くデバイスは複数の人間が利用する。では、プライバシーはどうなる?」と語る。

 Huffman氏は、AIに関する議題の設定でGoogleが既に果たした功績を指摘する。Pichai氏は2018年6月、GoogleによるAI技術の利用を管理する一連のAI倫理ガイドラインを発表した。このガイドラインは、Googleが米国防省と結んだドローン映像解析用AI開発の契約に従業員が反対した後に発表された。このガイドラインには、AIを武器用には開発せず、「社会的に有益な」技術を生み出すためにのみ開発するという誓約が含まれる。

 だが、同社をチェックするのは自主規制だけではすまないようだ。

 「正直に言って、デジタルアシスタントがどう生活に入り込むかを社会が理解していくにつれて、最終的には新たな法律が作られると思う。今では生活の一部になっている電話と同じだ。現在電話に関しては、多数の関連法がある」とHuffman氏は言う。

 例えば、令状がなければ電話の盗聴はできないと同氏は語る。「そうした法律は、電話世代のテクノロジー向けだ。AIが普及すれば、新たな法律下でAIを考える社会になるだろう」

 例えばどのような法律になるのかと尋ねたところ、Huffman氏は「法律ができるかできないかは私には分からない。私はそれを語るのに適切な人間ではない」と答えた。それを決めるのは社会だと同氏は語る。

 Huffman氏は法律の概要を推測しないが、スタンフォード大学Stanford Center for Internet and Societyのプライバシー担当ディレクター、Jen King博士は、AIに関する法律がどのようなものになるかについて考察している。同氏は現在、スマートスピーカーを通じて収集されたデータの種類を調査している。

 King氏は、法律は2018年5月に施行された欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)のようなものになると語る。その法律により、消費者は企業に提供する個人情報を従来より制御しやすくなるだろう。デジタルアシスタントに関しては、消費者がデータ削除を希望すれば、政府が企業にデータ削除ポリシーを強制できるようになるだろう。あるいは、個人データの具体的な使い道や、データを「永続的に」使わないことをユーザーが確認できるよう、従来より具体的なユーザーの同意が必要になるだろう。

 同氏は、Googleなどの企業が今後提供する各種デバイスの初期設定に注意を払うべきだと語る。知らない間に個人情報を提供してしまわないために必要なことだ。

 「Googleは、ほとんどの人にとってインターネットへの入り口だ。デジタルアシスタントはその役割をさらに強化することになる。Googleは人々の体験を作るが、Googleのためになるようにそうするのだ」(King氏)

「Pichai氏に怒鳴られることもあるよ」

 もちろん、デジタルアシスタントは不要だと決めてしまえばこうした心配は無用になる。

 Huffman氏とそのチームがGoogleアシスタントの機能を開発している間、Pichai氏もかなり細かいレベルで関わっている。Huffman氏によると、Pichai氏はバグや機能の非効率性について頻繁に報告するという。例えば、「Hey Google」と言ったときに意図しないデバイスが反応してしまうと報告した。また、家族の声を聞き分けられるようにする設定手順が複雑過ぎると指摘した。

 「時々怒鳴られることもある。当然なのだが。Pichai氏は本当にわれわれを後押ししている」とHuffman氏は笑いながら語る。

 消費者が実際にデジタルアシスタントを使っていることを証明しようと、AmazonとGoogleは1月、異例の行動を取った。ユーザー数を公表したのだ。

Googleは1月、Googleアシスタントの「Interpreter」(通訳)機能を発表した。現在ラスベガスの高級ホテル、シーザーズ パレスのコンセルジュデスクで試験的に使われている。
提供:James Martin/CNET
Googleは1月、Googleアシスタントの「Interpreter」(通訳)機能を発表した。現在ラスベガスの高級ホテル、シーザーズ パレスのコンセルジュデスクで試験的に使われている。
提供:James Martin/CNET

 Amazonは、Alexa搭載デバイスが累計1億台以上売れたと語った。それに負けじとGoogleは数日後、Googleアシスタント搭載デバイスが間もなく10億台に達すると発表した。だが、いずれの数字も全体像を説明してはいない。例えば、Googleの言う10億台のほとんど(Googleは具体的な内訳を明らかにしないだろう)は、GoogleアシスタントがプリインストールされているAndroidスマートフォンだ。Googleは当然、独自スマートフォンの「Pixel」にもGoogleアシスタントをプリインストールしている。

 私はHuffman氏に、Googleアシスタント搭載デバイスの主流がスマートフォン以外になるのはいつか尋ねた。同氏はいつになるかは分からないが、Googleは2つの分野、自動車と家が有望とみていると語った。

 Googleのスマートホームに関する競争計画についてはよく報じられている。同社はスマートスピーカー市場でAmazonとその製品であるEchoデバイスに対抗したい。また、サムスン、ソニー、海信(ハイセンス)など、可能な限り多くのスマートテレビに搭載したい。だが、Googleアシスタントの自動車への進出については、あまり語られていない。GoogleはCESで、自動車向けのGoogleアシスタントデバイスをいくつか紹介した。例えばAnker Roav製の、シガーソケットに接続するカーチャージャーだ。

 このアイデアは、Googleアシスタントを広範囲に普及させていくことを意図している。だが簡単にはいかないだろう。Huffman氏はラスベガスらしく、オッズを示した。

 「デジタルアシスタントは(Googleのものであれ他社のものであれ)、まだほとんどの人にとって『これがなければ生きていけない』レベルのものにはなっていない」と同氏は言う。従って、Googleにはやるべきことがたくさんある。「間違いなく、これは1つの賭けだ」

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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