「Googleアシスタント」は気分を察してくれるようになる--担当VPが語る“これから”

Richard Nieva (CNET News) 翻訳校正: 編集部2019年02月18日 07時30分

 550フィート(約168メートル)の上空から、GoogleのScott Huffman氏はラスベガスを見下ろしている。1月初旬のある晴れた午後、Googleはこの街を支配していた。

提供:Ben Fox Rubin/CNET
提供:Ben Fox Rubin/CNET

 Googleは、世界最大のテクノロジー見本市であるCESでの集中的なマーケティングのためにこの地に来ている。同社の使命はただ1つ。「Googleアシスタント」の宣伝だ。Googleアシスタントは、スマートサーモスタットを制御したり、フライト情報を知らせたり、ニュースを読み上げたりしてくれる、デジタルコンシェルジュだ。

 Googleアシスタントのエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるHuffman氏は、世界最大の大観覧車「ハイローラー」のガラス張りのゴンドラの中に私と一緒に立っている。われわれは観覧車の最頂部にいた。眼下には、ラスベガスコンベンションセンターの建物に表示されている巨大な文字「Hey Google」が見える。Googleアシスタントのウェイクワードだ。文字は、別の建物に一部隠れて「Hey Go」のように見える。

 これはGoogleにぴったりだ。「Go(行け!)」は恐らく、Googleアシスタントに関しての、Googleにとっての確固たる哲学だからだ。最高経営責任者(CEO)のSundar Pichai氏が3年前にこのソフトウェアをリリースして以来、同社はずっとAmazonのデジタルアシスタント「Alexa」に追いつこうと必死だ。Alexaは、Googleに先行して2014年に登場したAIアシスタントで、AIアシスタントの代名詞になっている。Googleアシスタントはまた、インターネットを検索可能で便利なものにするというレーゾンデートル(存在理由)を持つGoogleの生得権だと見なされている。

 市場シェアを見ると、Googleにはまだやるべきことがある。調査会社eMarketerの調査によると、Alexaを搭載するAmazonの「Echo」は、スマートスピーカー市場のほぼ70%を占める。Googleアシスタント搭載の「Google Home」端末のシェアはわずか25%だ。だが、別の調査会社Canalysは、2023年までにGoogleはAmazonからトップの座を奪うと予測した。

 Huffman氏は私に、次のように語った。「所有してみなければ、アシスタントの便利さは分からない。だからわれわれはこの2年間、Googleアシスタントを普及させるために力を注いできた」

 GoogleアシスタントやAlexaを何に使っているのかユーザーに尋ねれば、恐らく、音楽の再生、キッチンタイマーのセット、そして、もしスマートデバイスと連携していれば、照明の点灯だと答えるだろう。十分だ。だが、Googleはそれ以上のことを可能にし、Amazonを打ち負かしたい。Googleがこの1年にGoogleアシスタントに関して取り組んできたことはSFレベルであり、今後ますます魅力的になっていきそうだ。

 Googleは、独自の強力な機械学習技術、自然言語処理、その他の人工知能(AI)技術を駆使し、野心的な新機能を幾つか披露した。すなわち、「Duplex」と呼ぶプロジェクトでのユーザーに代わって予約する人間の声のロボットや、27カ国語対応のリアルタイムの通訳機能などだ。

 「照明をつけるのは、基本的な機能だ」と、世界有数のカジノ街の上空でHuffman氏は語る。「だが、AIがわれわれの差別化要因ならば、AIが可能にする、人々の生活を本当に変革するレベルの機能とはなんだろう?」

 私がHuffman氏のインタビューの場にラスベガス上空のゴンドラ内を選んだのは、この環境が哲学的な会話を触発することを期待してのことだった。世界を見下ろす状況が、「ライオン・キング」で誇り高き王ムファサがプライドロックの突端で王子シンバに「生命の輪」について語ったような時間を生み出すのではないかと。

Googleアシスタントエンジニアリング担当バイスプレジデント、Scott Huffman氏
提供:James Martin/CNET
Googleアシスタントエンジニアリング担当バイスプレジデント、Scott Huffman氏
提供:James Martin/CNET

 実際には、メディア慣れしたテクノロジー企業の幹部との会話がそれほどドラマチックになることはない。だが、私のもくろみはある程度功を奏したと思う。Googleに14年務めるベテランで、優しげな目とグレイのあごひげが印象的なHuffman氏は、私が質問したデジタルアシスタント時代のプライバシーの未来について考察した。同氏は最初、法律が必要になるだろうと語った。

 同氏はまた、Googleアシスタントの進化について語ることをいとわなかった。同氏が語ったことは、Googleが自社の最も重要な製品についてどう考えているかを明らかにした。

 Huffman氏は、Googleアシスタントは向こう5年以内に人間並みの自然な会話の基本を達成すると述べた。コンピュータサイエンスの観点からみれば、それは基本的なことにすぎないという。同氏は、「ヘイ」や「OK」などのウェイクワードは「非常に不自然だ」と語る。同氏は、Googleアシスタントが人間の気分を理解し、もし機嫌が悪ければそれも察知できるようにしたい。

 また、ユーザーと昨日交わした会話を正確に記憶し、今日はその続きから話せるようにしたい。

 私は10年後のビジョンを同氏に尋ねた。Huffman氏は、人間から語りかけられるだけではなく、移動して作業もするロボットが家庭用製品になり、そうしたロボットにデジタルアシスタントが搭載されるだろうと語った。

 観覧車での空中散歩が終わりに近づき、ゴンドラはゆっくりと地上に降りた。われわれはラスベガスモノレールの車両の横を通る。その車両にも「Hey Google」と描かれている。車両が駅を発車しようとしている。

 車両の文字も「Hey Go」に見えた。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]