NTTドコモと電通は1月16日、DOOH(Digital Out Of Home:デジタル屋外広告)の配信プラットフォームを手がける新会社「ライブボード」を設立することを発表した。同日に開かれた記者説明会では、新会社を設立するに至った経緯や、両社の取り組みが説明された。
ライブボードの代表取締役社長に就任予定の神内一郎氏によると、屋外広告(OOH)市場は世界的に見ると年間の平均成長率が5%、DOOHに限ると13%と、高い成長率を誇っているという。ただし、日本のOOH市場を見ると、広告市場の8%と安定的なシェアをキープしているものの、年平均成長率が0.6%と低成長が続いていることに加え、DOOHが占める割合が20%と、50%を超えるイギリスやシンガポールなどと比べて遅れていると指摘する。
その要因として神内氏は、日本のOOH市場が抱えているいくつかの課題を挙げた。1つはOOHのオーディエンスデータが整備されていないこと。広告主は投資効果が分かるメディアに予算を投資する傾向が強まっているが、OOHは交通、屋外などそれぞれの分野で閉じている状況であるため、他のメディアと効果を比較できる指標が整備されていなかったという。
そしてもう1つ、神内氏は「日本のOOHがロングテール」なことも、大きな課題になっていると話す。イギリスではOOHを手掛ける媒体社が上位4社の寡占市場となっているが、日本では非常に多くの媒体社が存在する。そのためOOHの空き枠を確認するだけでも多数の媒体社に問い合わせる必要があり、非常に煩雑である上に広告のフォーマットが統一されておらず効率が悪い状況なのだという。
さらに神内氏は、OOH業界全体の課題として、太古の壁画時代、つまり4万年前からビジネスモデルが変わっていないことを挙げる。絵からポスター、ネオン、サイネージへと広告自体は変化しているが、朝と夜とではその前を通過する人の属性が変わるにもかかわらず、同じコンテンツを出し続けている状況は変わっていない。
そうしたOOH市場が抱える多くの課題を解決するべく設立されたのがライブボードだという。出資比率はNTTドコモが51%、電通が49%だが、広告に関する事業が主となるため、電通出身の神内氏が社長職に就いたとのこと。同社ではDOOHの広告をオンラインで購入できるプラットフォームを提供するというが、その特徴は大きく3つあると説明する。
1つ目は、ドコモが持つデータ資産を生かすことにより、オーディエンスデータを把握し投資効果を広告主に伝えられるようにすること。ドコモのプラットフォームビジネス推進部 マーケティング事業推進担当部長である伊藤哲哉氏によると、同社は携帯電話の利用状況を基にした人口分布変動データ「モバイル空間統計」を持つだけでなく、決済や送客などに関するさまざまなデータを自社のDMP(Data Management Platform)に蓄積しているという。
ライブボードではそうした複数のデータを掛け合わせることにより、場所や時間に応じた正確な広告の視聴者数を推計することで、日本で初となるDOOHのインプレッション販売を実現するとのこと。また複数のデータを組み合わせることにより、特定のターゲットに対して訴求できる価値の高い広告も提供したいとしている。
2つ目は、DOOHに関する全ての作業を完全自動化すること。ターゲットやセグメント、予算や出稿期間などを指定することで、広告のプランニングや配信などを全て自動で実施し、効率を大幅に上げることで人件費やコストを削減できるとしている。
そして3つ目は、プレミアム・アドネットワークの展開だ。これは複数の媒体をアドネットワークによって束ねることにより、DOOHの集合体として広告を販売するアドネットワーク。オンライン広告同様、多くの人が集まる場所に効率のよい出稿できることが特徴になる。
その規模について神内氏は、「まずは屋外広告からスタートし、2〜3年のうちにデジタルサイネージの面数を200、300獲得したビジネスを考えている」と話す。ゆくゆくは、2019年のプレ商用化が見込まれている5Gを活用し、場所を選ぶことなく高画質の広告動画をリアルタイムに配信していけるようにしたいという。
当初はOOHのデジタル化と自動化、そしてアドネットワークの構築を目指して事業を進めていくが、将来的には広告を見た人に対して詳細情報をスマートフォンにプッシュ通知する広告など、スマートフォンとDOOHを連携させた商品開発などを進めていきたいとしている。インプレッション広告を主体に展開しつつ、DOOHの商品付加価値を高めていきたいと神内氏は話した。
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