オーストリアのリンツを拠点とする世界的クリエイティブ機関アルスエレクトロニカと、グランフロント大阪を拠点とするナレッジキャピタルのコラボレーション展示「PLAYWEAR--アルゴリズムでつくる遊び展」が、1月16日から3月31日まで「The Lab.みんなで世界一研究所」で開催される。
両組織によるコラボ企画は今回で9回目。2名のアーティストとアルスエレクトロニカのR&D部門「フューチャーラボ」による作品がそれぞれ展示される。
テーマの「PLAYWEAR」は、アルスエレクトロニカと同じような活動をしているスペインのラボラと2007年に開催したプロジェクトから生まれた言葉。当時は普及しはじめたコンピュータが、遊びそのものや遊び心に与える変化について取り上げていた。今回はそれが10年かけて社会に浸透し、どのように影響を与えているかを見せる作品が選ばれている。いずれも参加者が自由に動かして体験でき、内覧会ではアーティストによる作品紹介も行われた。
カナダのモントリオールにあるデザインスタジオのデイリー・トゥレジュール(Daily tous les jours)の作品「ミュージカル・シャドウズ(Musical Shadows)」は、床に埋め込まれたデバイスに影を作ると録音された人々の声が発せられ、動きにあわせて楽器のように音楽を奏でることができる。影あそびをしながら作曲ができ、複数人でプレイするとまるでミュージカルを演出しているような気分が味わえる。本作品は3年前に米国のアリゾナ州のメサ・アーツ・センターに設置され、今でも市民を楽しませている。
デイリー・トゥレジュールはテクノロジーを都市環境に有効活用し、街と良い関係を築く作品づくりを目指して活動している。創設メンバーの一人であるモウナ・アンドラオス氏は「パブリックスペースに新たなコミュニケーションを生み出し、見ず知らずの人同士がコラボレーションするきっかけになる作品づくりに情熱をかけている。その地域特有の物語を取り入れつつ、多くの人たちに共通するユニバーサルなアイデアにしてきたい」と述べる。会場ではデイリー・トゥレジュールが手掛けたその他の作品もビデオで紹介され、現地でどのように設置されているかを知ることができる。
もう一人のアーティスト藤木淳氏は、アルゴリズムを使ったコンピュータゲームのような作品を展示。「P055E5510N(憑依)」は、動き回るたくさんのヒト型キャラクターの中から自分が操作するキャラクターを見つけたり、次々に違うキャラクターに憑依させたりするといった、シンプルな操作で楽しめる4つの作品シリーズが体験できる。
「OLE Coordinate System」はディスプレイに描いた3次元オブジェクトの上を動くキャラクターを、画面の見方を変えながらコントロールするというエッシャーのだまし絵の世界をインタラクティブに体験できる作品。プレイステーション用のパズルゲーム「無限回廊」
フューチャーラボの「フラワー・オブ・タイム(Flower of Time)」は、花の形をした速さが異なる時計の針の周りに、それぞれの時間の使い方のアイデアを書いた花びらを参加者が貼っていくという研究実験的な作品。キュレーションを担当したアルスエレクトロニカのアーティスト兼リサーチの久納鏡子氏は「設定されている時間は、人が最も有効的にエネルギーを活性化できる時間といった学術的な研究に基づいたもので、その数字を人々が実際にどう感じているかを再研究する目的を持っている」と説明する。
アルスエレクトロニカは40周年を迎え、社会とテクノロジーとアートをテーマにしたフェスティバルでは、AIやロボット、バイオなど最先端のテクノロジーを取り入れた多くの作品を紹介してきた。最近では社会企業家やスタートアップの発表の場として世界からの注目度が高まっており、日本からの参加者も増えている。ナレッジキャピタルは創設当初からアルスエレクトロニカとのコラボ展示を行っており、現地と同じく実際に作品に触れられる貴重な機会となっている。参加費は無料で、会期中は10時から21時まで自由に入場可能だ。
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