11月、Googleの2万人以上のフルタイム従業員と契約社員が世界中の50のオフィスでストライキを決行し、セクハラや不正行為の疑いに対する同社の対応に抗議した。カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogleのグローバル本社では、そのうち4000人が、最高経営責任者(CEO)Sundar Pichai氏のオフィスがある建物の隣の中庭に集まった。行進してプラカードを掲げ、「時間切れだ!」「立ち上がれ!反撃せよ!」といったスローガンを連呼した。
Pichai氏はその日、オフィスにいなかった。「Soul searching: Technology's role in society」(自己分析:社会における技術の役割)というカンファレンスセッションに出席するため、ニューヨークを訪れていたからだ。しかし、従業員たちの声は間違いなく同氏に届いていた。Pichai氏は聴衆に向かって、「このような時に、われわれがこれまで常に正しかったわけではないことが示される」と述べた。
この一件は、これまで労働者が雇用主に抗議することを控えてきたテクノロジ業界では、前例のない出来事だった。特にこのように感情的に、そして公然と抗議するのは、考えられないことだった。Googleにとって、このストライキは、従業員の反対意見が噴出した1年を最も強く象徴する事件だった。2018年には、職場の文化から、米軍向けのGoogleのプロジェクト、中国向けに検閲対応の検索エンジンを開発する取り組みまで、さまざまな問題に従業員が異を唱えた。「邪悪になるな」という社是で知られるGoogleがその信条を実践していないと感じた社員たちが、1年間にこれほど行動を起こしたのは、同社の20年の歴史で初めてのことだ。
ストライキは概ね成功を収めたと言えるだろう。経営陣は、性的暴力や嫌がらせの疑いがある案件で告発者に訴訟権の放棄を強制する「強制的な仲裁」の廃止など、いくつかの要求に同意した。
だが、今回の抗議活動はGoogleだけに留まらず、広範囲に影響を与える可能性もある。この事例は抗議活動における戦術の手本として、テクノロジ業界全体に影響を及ぼすかもしれない。
スタンフォード大学の教授で、シリコンバレーの未来学者であるPaul Saffo氏は、次のように語っている。「これは重大な分岐点となる瞬間だ。事態が沈静化することはないだろう。むしろ、激化するはずだ」
Gooleはコメントの依頼に応じなかった。
Googleでは、社員と経営陣の間に常に意見の相違があった。だが、同社は問題を世間に知られる前に解決することを誇っていたと、Googleの複数の従業員と元従業員が筆者に話してくれた。この人たちはGoogleを代表して話す立場にないとして、匿名を希望した。
2017年夏、そうした状況は一変した。当時、GoogleのエンジニアだったJames Damore氏が同社の多様性について3000語にわたるメモを執筆し、議論を呼んだからだ。例えば、Googleに男女格差が存在するのは性差別ではなく、男女間の「生物学的」な違いが原因であり、それによって「テクノロジ業界や経営陣に女性が少ない理由の説明がつくかもしれない」とDamore氏は主張した。このメモはGoogleの社内フォーラムで大きな注目を集め、8月に報道機関にリークされた。アフリカと欧州で家族と休暇を過ごしていたPichai氏はこの危機に対処するため、旅行を途中で切り上げることを余儀なくされた。同氏は最終的にDamore氏を解雇することにした。
このメモの余波は、いくつかの点で同社に影響を及ぼした。例えば、極右勢力が、Googleは保守派の意見を抑圧していると非難する声に拍車をかけた。一方、元従業員の1人によると、社員の一部はDamore氏によるメモのようなメッセージに対して、組織として対抗することの価値を学んだという。
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