複数の現従業員と元従業員がGoogleに立ち向かった理由は同じだった。以前は不満を表明したら聞いてもらえると感じていたが、今は正規の手順を踏んで意見を表明しても無駄に思えるという。従業員の懸念を意味あるものとして検討しようとする姿勢が、Googleの経営陣からなくなったと感じたのだ。
Googleでの2018年最初の大規模な抗議行動の引き金となったのは、米国防総省の「Project Maven」に関連する同社の取り組みだった。Project Mavenは、人工知能(AI)を使って、ドローン映像の分析を改善しようとするプロジェクトだ。これに抗議するため、Googleの複数の従業員が退職し、4月には、4000人以上の従業員がプロジェクトの中止を求める請願書に署名して、Pichai氏に送ったことが報じられた。Googleは6月、Mavenに関する契約を更新することも、今後同様の契約を結ぼうとすることもしないが、米軍との協力関係は継続すると表明した。
Pichai氏は結局、AIの利用に関する倫理ガイドラインの全文を公表することになり、同社が兵器用のAIを開発しないことを明示した。
8月には、中国向けに検閲対応の検索エンジンを開発するプロジェクト「Dragonfly」が従業員を動揺させた。Dragonflyは、Googleが中国のインターネット検索市場への再進出を目指す計画の一部だった。同社は8年前、中国のハッカーがGoogleとそのユーザーを攻撃したことなどを受けて、中国市場から撤退していた。ソビエト連邦で育ったGoogle共同創設者のSergey Brin氏は、その要因の1つとして、中国の「全体主義」を挙げている。
このプロジェクトのうわさだけで、抗議活動が勢いを増し、退職者が増加した。8月、約1000人の従業員が、同プロジェクトの透明性をPichai氏に求める書簡に署名した。従業員はGoogleに対して、倫理的審査のプロセスを設け、上級幹部だけでなく一般職員の意見も反映させるよう求めた。11月には、Googleの何百人もの従業員(多くはソフトウェアエンジニア)が国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルと共同でPichai氏にプロジェクトの中止を求める書簡を公開した。だが、今回、Googleの従業員たちはその抗議活動において、自らの氏名を公表するという異例の方法をとった。
12月17日、Dragonflyに抗議していた人々が重要な勝利を収めたとThe Interceptが報じた。Googleのプライバシーチームは、エンジニアが北京を拠点とするウェブサイトのデータを使って、中国本土からの検索結果がどのように見えるかをシミュレーションしていることについて、幹部陣を問い詰めた。The Interceptによると、Googleはそのデータへのアクセスを遮断して、同プロジェクトをいわば凍結し、「実質的に終了する」ことを決めたという。
抗議者の中には、自分たちの取り組みがもたらした影響に驚いた者もいる。
MavenプロジェクトでのGoogleの役割を知って退職した元従業員は、「2018年に入って、Mavenについて知った後でも、あのストライキのようなことが起こるとは想像しがたかった」と語った。
だが、問題を発展させる必要があるなら、抗議活動はさらに拡大する可能性もあるだろうとも、この人物は述べた。
「次の展開が本当に楽しみだ。彼らはストライキを決行した。次は何をやるのだろうか。再びストライキを起こして、数日または数週間戻ってこないと脅すのだろうか」(元従業員)
それはまさに、一部の従業員が提案したことだった。
The Interceptが11月に掲載した記事によると、GoogleはDragonflyの開発に取り組んでいた頃、セキュリティチームとプライバシーチームを重要な会議から除外していたという。
Dragonflyの一件を受けて、エンジニアとしてGoogleで長年働いてきたLiz Fong-Jones氏は、従業員のストライキと大量辞職を提案した。
そのような組織的な計画が、他のテクノロジ企業でも応用される可能性があると専門家は指摘する。
スタンフォード大学教授のSaffo氏は、重要な要素の1つは、最近の抗議活動の多くが比較的若い従業員たちによって始められたことだ、と話す。
「ソーシャルメディアやインターネットと共に育った世代だ。その世界観は、10歳上の世代とも大きく異なる。発言権を持つことに慣れていて、自分の意見を聞いてもらうことを当然と考えている」(同氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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