「RICOH THETA」が不動産業界で示した存在感--BtoBでも広がる360度の可能性

 リコーの360度カメラ「RICOH THETA」がBtoB市場で好調だ。なかでも引き合いが多いのは不動産業界。今や不動産ポータルサイトの欠かせないコンテンツの1つになりつつあるVRでの内見の撮影カメラとして圧倒的な知名度を獲得している。

 360度撮影ができる、今までにない新しいカメラとしてRICOH THETAが登場したのは2013年。コンシューマ向けとして発売されたRICOH THETAがいかにして、不動産業界で活用されるようになったのか、また2018年に開始した新サービス「RICOH360–VRステージング」(VRステージング)が業界の仕組みをどんな風に変えていくのか。リコーSmart Vision事業本部DS事業センター事業開発部リーダーの稲葉章朗氏と重山美詠氏に聞いた。

リコーSmart Vision事業本部DS事業センター事業開発部リーダーの稲葉章朗氏(右)と重山美詠氏(左)
リコーSmart Vision事業本部DS事業センター事業開発部リーダーの稲葉章朗氏(右)と重山美詠氏(左)

発売直後から問い合わせ、プロ向け360度画像を手軽で身近に

 RICOH THETAは、幅約45mmのスリムボディで、ワンプッシュで360度撮影ができる全天球カメラ。「従来のデジタルカメラとは違う、少し“尖った”デバイスとしてコンシューマ向けに発売した」(稲葉氏)のがスタートだ。しかし発売直後から、旅行や教育関連などの業界から問い合わせがあり、なかでも不動産業界はいち早く導入を決めたという。

 「360度画像を使って取り扱い物件を案内したいと、登場後間もなく賃貸業界の方からお話をいただいた。内見は時間が取られるし、不動産会社の営業担当者も部屋を探しているお客様も、実際に人が動かなければいけない。VRでの内見はそうした問題をクリアできる」(稲葉氏)とBtoB事業開始時を振り返る。

 360度画像は以前から存在したが、複数のカメラをつなぎ合わせ、画像処理を施すなど、使うにはハードルが高かった。稲葉氏は「360度画像の高い、難しい、面倒くさいといったハードルを破壊したのがRICOH THETA。ワンプッシュで撮影ができ、本体価格も2~5万円前後と手頃。手軽さがBtoB市場に受け入れられた」と分析する。

 現在は、不動産ポータルサイトにおける360度パノラマ物件のコンテンツ制作、店舗におけるVRでの内見、CGを使って室内に家具を配置するVRステージングの3つの用途で活用されている。その背景には、カメラメーカーならではの画像処理技術が大きく役立っている。

 「リコーはカメラはもちろん、コピー機やプロジェクターといったオフィス機器も“忠実にあるものを再現する”コア技術を持ち、絵作りの技術や特許も数多く保有している。暗い室内を撮影すると、見えづらかったり、ノイズが出てしまったりするが、画像処理技術を使うことで、ノイズを消し、明るく見やすく補正できる。一部の画像処理技術はRICOH THETA本体にも搭載しているが、クラウド側での処理を加えることで、早く、より強力な画像処理が可能になる。この辺りのバランスも画像処理技術に長けるリコーならでは」(稲葉氏)と光学メーカーならではの強みを話す。

 実際に、カメラ事業部で画像処理を担当する技術部門と連携し、高画質撮影と処理を徹底。カメラメーカーならではの強いこだわりを見せる。

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