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VRIコラム

米電気自動車テスラCEOのツイッター発信 ~米大手500社の4割はソーシャルメディアを利用する~

米山徹幸 / IRウォッチャー・埼玉学園大学大学院客員教授2018年11月22日 09時00分
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 今年の夏は、米電気自動車(EV)メーカーのテスラのイーロン・マスク会長&CEO(最高経営責任者)のツイートに始まる騒動に世界中のIR関係者は目が離せなかった。

ツイートで未公表の重要情報を発信

 8月7日、マスク氏はテスラを「1株420ドルで自社株を買い取って、非公開とする」「資金は確保した」と約2200万人(当時)のフォロワーにツイートした。

 米誌フォーチュンが選ぶ有力企業「フォーチュン500」の1つ、テスラのMBO(経営者による自社企業の買収)が実現すれば720億ドル(約8兆円)もの巨大ディールが目に浮かんだ瞬間だった。

 2週間を過ぎた8月24日、マスク氏は、同社サイトのブログで、アドバイザーや株主たちと協議の結果、株式公開にとどまることが「テスラに最大の長期的利益をもたらす」と確信するに至ったと発表。テスラを非公開するアイデアを撤回したのだった。

 話はこれで終わらない。9月27日に米証券取引委員会(SEC)が「マスク氏の誤解を与える誤った公的発言と不作為は、テスラの株式をめぐって市場に大きな困惑と混乱をもたらし、結果として投資家に被害をもたらした」として、ニューヨーク連邦地方裁判所に提訴したのだ。

 その2日後、当局とマスク氏が和解した。マスク氏とテスラはそれぞれ2000万ドル(約22億円)の制裁金を支払い、マスク氏はCEOを続けるものの、会長職から退くことになった。制裁金は、裁判所の承認を受けた手続きの下で被害に遭った投資家に配分されるという。

SECが認めたソーシャルメディアでの情報発信

 情報発信のプロセスやマスク氏の資質をめぐって、いろんな意見が出たが、見過ごせないのは、これがSNSによる情報発信だという点である。

 2013年4月、SECは企業やその経営幹部がソーシャルメディアを使用して未公開の重要な情報を発信するのは公平開示規則に準じるとした。その場合、事前にその旨を投資家に通知しなければならないとしている。

 もちろん、テスラも同年11月に下記の届け出をSECに行っている。

  • ①重要情報をブログやソーシャルメディアなどで発表する
  • ②マスクのツイッターをフォローするように

 つまり、マスクのツイッターもテスラのブログも情報開示の公認チャネルなのである。SECが事態の進展に黙っていられないのも当然だった。

米企業トップのソーシャルメディア利用は40%

 ところで、米企業の経営トップがどのくらい、ツイッターなどソーシャルメディアを利用しているのだろう。「フォーチュン500」に選ばれた企業のCEOによるソーシャルメディア利用に関する調査(’2016 Social CEO Report’:2017年5月発表)が参考になる。

 2016年1月~11月末の期間の調査結果(テスラは2017年6月発表の2017年版「フォーチュン500」に383位で初めて選ばれたので、この調査の対象となっていない。)を見てみよう。

 6つの主要なソーシャルネットワーク(ツイッター、フェイスブック、グーグル+、インスタグラム、リンクトイン、ユーチューブ)のいずれかを利用しているという回答は40%。そのうち複数のチャネル・ユーザーは69人、3つ以上の利用は15人にとどまる。

 5つのソーシャルネットワークを利用しているのは旅行大手エクスペディアのダラ・コスロシャヒCEO(同氏は、2018年7月、米配車サービス大手ウーバーのCEOに転じた)であった。小売大手ウォールマートのダグ・マクミランCEOやペプシコのインディラ・ヌーイCEO(2018年10月退任)も4つを利用している経営者だ。

ソーシャルネットワークで、いちばんユーザーが多いのはリンクトインの181人。

 フォーチュン500のCEOの間ではソーシャルメディアへの「入口」として好まれているという。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOやセールスフォース・ドットコムの創業者&CEOマーク・ベニオフ、米三大自動車で初の女性CEOとなったGMのメアリー・バーラなどの名前がならぶ。

 ツイッターは36人のCEOが利用。そのうちアクティブなのは25人。ツイッターは6つのソーシャルネットワークの中で、一番利用の頻度が高い。アクティブ・ユーザーの割合は、2015年62%、2016年は70%と増加している。ツイッターのフォロワー数が最も多かったのはアップルのティム・クックCEO(394万)。クックCEOのツイートは304回だが、そのリツイートは平均2000回といい、その影響力のある拡散ぶりがうかがえる。

 フェイスブック・ユーザーは40人とあったが、32人はあまり利用していないことから、いま一つのようだ。また、インスタグラムとグーグル+はあまり利用されていない。

 そして、2016年にソーシャルチャネルを最も多用していたのは、テクノロジー、小売、メディア、エンターテインメント業界のCEOだったという。

 以下は関係者から上がっている、ソーシャルメディアの利用に足踏みする理由である。

  •  ①多忙なCEOのスケジュール

  •  ②ソーシャルメディアを利用するROI(投資利益率 )が不明
  •  ③SNSのベストプラクティスがわからない、など

 これはどれもIR活動など企業の情報発信ではお決まりの言葉ばかりだ。昨日と変わらない今日を明日も繰り返す「ノーアクション、ノーエラー」の取り組みでは、ソーシャルプラットフォームが大きな影響力をもつ情報拡散の現実から目をそらしているに等しい。

 日本企業では、その傾向がもっと強い。この機会に、日本企業の広報・IR関係者は、いちど、テスラのイーロン・マスクCEOのツイートにアクセスしてみるといいと思うが、どうだろう。

◇ライタープロフィール
米山徹幸(よねやま てつゆき)
IRウォッチャー・埼玉学園大学大学院客員教授、全米IR協会(NIRI)会員。 大和証券(国際部)、大和IR、大和総研を経て、2010年埼玉学園大学大学院教授。 2017年4月より現職。主な著書に「大買収時代の企業情報」(朝日新聞社)、 「広辞苑(第六版)」(共同執筆、岩波書店)、「21世紀の企業情報」(社会評論社)、 近著に「イチから知る!IR実学」(日刊工業新聞社)。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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