「今日一番のお気に入りは何でしたか?」
9月、Amazonがシアトルで「Alexa」を搭載する新型ガジェットを多数発表したときに、少なくとも5人の同社幹部がその質問を尋ねるのを筆者は耳にした。
筆者には、その答えが見つからなかった。Amazonが、初めてAlexaをわずか50ドル(約5700円)の「Echo Dot」サイズのスピーカに詰め込んだときと違って、新たな大ヒット商品になりそうだと感じられるものは見当たらなかった。その代わりに、「Echo」の名を冠したあらゆる製品が登場し、さまざまな方向に迷走しているように感じた。
念のため言っておくと、Alexa搭載製品は、リビングルームの至る所に既に存在している。筆者が数えたところ、Amazonはこれまでに21種類(間違いではなく、本当に21種類)のAlexa搭載スピーカ、ガジェット、およびアクセサリを発表している。これには、Alexaを搭載する「Fire」タブレットや「Fire TV」ストリーマーは含まれておらず、Amazon製ではない、サードパーティーの多数のAlexa搭載デバイスもカウントされていない。
Alexaはあらゆるところに存在し、2018年夏の時点で、米国スマートスピーカ市場の約70%のシェアを獲得している。4種類のスピーカしか提供していないGoogleは、大きな差を付けられての2位で、シェアは24%だ。
だが、この数字は誤解を与えるかもしれない。24%という数字はGoogleにとって急速な成長を意味する。同社はスマートスピーカ市場に参入してからまだ比較的日が浅く、1年前に独自の50ドルのスマートスピーカ「Google Home Mini」を発売したばかりだからだ。よく言っても、焦点が曖昧なAlexaの全方位戦略とは異なり、Googleのデバイスラインアップ(「Google Home Hub」というカメラ非搭載の魅力的なスマートディスプレイも追加された)は、消費者が実際に求めているものに照準を合わせているように思える。
それでは、9月の製品発表時に筆者がすぐに感じ取ったことは何だろうか。それは、何よりも、Amazonが不安になっているのではないか、ということだ。
AmazonがGoogleを恐れる理由は十分にある。Home Miniの見た目がかわいいことだけがその理由ではない。とはいえ、実際にHome Miniの見た目はかわいい。その要素に加えて、前世代のEcho Dotよりも優れた音質という要素が相まって、初めてのスマートスピーカ購入という重要な機会でAmazonではなくGoogleを選ぶ人が増えているのかもしれない。その結果として、短期間のうちに、AmazonがGoogleの射程圏内に入ってきたのだ。
9月にシアトルで開催された混沌としたイベントで、Amazonは息せき切って新しいAlexa搭載デバイス群を発表したわけだが、筆者はそのとき、不安に駆られたAmazon関係者が「もっと速く動かなければ」とつぶやく姿を容易に想像できた。新たに発表されたものの多くは、Amazonのユビキタス性という攻撃的戦略に新たな材料を提供するだけだが、アップデートされたEchoスピーカ群(特に見た目が改善され、音量も大きくなった新型Echo Dot)は、勢力を拡大する「Googleアシスタント」からAlexaの縄張りを守るための純然たる策略であるように思える。
新しい第2世代の「Echo Show」についても同じことが言える。前世代のEcho Dotと同様、初代のEcho Showも実用性を過度に重んじたデザインだった。レノボやJBLが提供するGoogleアシスタント搭載スマートディスプレイ、Google自身が先頃発表したHome Hubといった見栄えのよい製品と比べると、特にそうだ。ディスプレイが大型化され、デザインが大幅に改善された新型Echo Showでは、それらの問題が修正された。しかし、ユーザーインターフェースに関しては、Googleアシスタントを搭載する競合製品のスマートで洗練されたデザインにまだ追いつけていない。
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