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降谷建志が語る「音楽とテクノロジー」--単独ロングインタビュー - (page 4)

藤井涼 (編集部)2018年10月17日 11時00分
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 そうだね。俺も毎週のように細美っちと会うから、その当時はよくエルレの話とかしてたけど、会場(ZOZOマリンスタジアム)の外で入れなかった1万人くらいの子が、一度は見られるくらい(ライブを)やったらいいんじゃんって言ったけどね。もともと、「これで終わりじゃないからね」っていう約束を果たすためにやっていて、10年前にそれを言われていて、外にいた子もいただろうから。

——私も復活ライブのチケット争奪戦に敗れた1人なので、ぜひもう一度ライブをしてほしいです。

消費されていくアーティストは「その程度」

——次のテーマは『音楽と消費者の関係性』についてです。Apple MusicやLINE MUSICなどの聴き放題サービスが浸透していくことで、音楽と消費者の関係にも変化が起きています。先ほどのスマートスピーカの話にも近いのですが、プレイリストなどによって新たな音楽との出会いの機会は増えたと思うのですが、1つのアーティストを深く聴く人は減っているのではないかと感じています。

 おっしゃる通りだと思います。やっぱり、めちゃくちゃ手軽に音楽が手に入るから、1曲に対しての愛着は薄まっていくよね。今の人たちは、何か1つに費やす時間が短くなってきていると思う。別にそれが悪いわけじゃなくて、浅く広くにしろ知識は豊富に取り入れられるわけだから、本当に掘り下げたいものを自分でピックアップするジャッジ能力みたいなものが必要だよね。

 俺には子どもがいるんだけど、いま9歳の男の子だから、俺でいうところの絶賛「ドラクエ3」くらいの年頃なんですよ。でも、スマホだと毎日のようにゲームが出るから1週間もしたら新作ゲームだらけ(笑)。1回触って「これは何系、これは何系」ってどんどん消していくんだけど、そうするとやっぱり、1つのゲームでレベル上げしてやろうとか、コンプリートしてやろうみたいなやつってなかなか現れないよね。だから、親でそういうものを完全に制限する人もいるだろうけど、(ゲームで遊ぶ)本人たちが悪いんじゃないなって思うよ。

 そうやってすぐ手に入る便利なものって、必要だから作っているわけじゃないじゃん。これがあったら楽だなという考えで作られているから、本当に必要なものじゃないんだよね。でも、そんな便利なものや楽なものが人間は大好きだから、ポンポンピックアップして「これは無駄だな、無駄じゃないな」って必要なものだけを残していく。

 でも、それでいいんじゃないかな。音楽でも10種類くらいのロックをバーっとお勧めされて、片っ端から聴いて、「好きじゃない、好きじゃない」って振り分けて、その中に好きなものが1つでも残ればいいだろうし。

キャプション

——私はどちらかといえば、特定のアーティストを深く聴くのが好きなので、音楽が浅く広く“消費”されてしまうことに悲しさも感じてしまいます。

 消費されていくやつらはその程度のバンドなんじゃない?別にそんな中でも第一線でずっと深く愛してもらって、ライブを見ている人たちが涙を流すようなバンドは腐るほどあるからね。そういうやつらは、どの時代だってやっぱりライブに力があるから、その程度でファンとの関係が浅くなったりしないよね。そんなもので絆は壊れないと思うし、だからこそみんな代価を払って遠いところまで夜行バスで行くわけだから。

 今はCD普及率がどんどん下がっているから、CDの歌詞カードを手に取るなんてさ、もうマニアじゃん。俺らの頃はCDしかないし、自分のお金で何枚も買えるわけじゃないから、それこそカセットテープ世代が言う“擦り切れる”まで聴くみたいなことじゃん。超マニアックな箸休めみたいな曲の歌詞ですら1番から全部歌ってくれる子はいるし、そういうアーティストになればいいんじゃない。それに文句があるんだったら配信しなきゃいいしね。(配信しないアーティストも)それはそれでプライド持ってやってる姿がカッコいいじゃん。それでも人気があればCDが爆発的に売れるわけだし、それも正義だよね。

——そうですね。先程のYouTuberの話とも少し被ってしまいますが、近年は「TikTok」のように楽曲に合わせてユーザーが踊ったり口パクをしたりするサービスも生まれています。これも新たな音楽と消費者の関係ではないでしょうか。

 もうTikTokのスターがいるもんね、YouTuberみたいに。まぁ、俺はやらないし興味もないけど、エンタメだしそれも新しい職業なわけでしょ。その中でスターになって、何をしたいかが決まっていればいいと思う。たとえば、ゲームYouTuberだったらゲームという大好きなことを生業にして、本来は1人でやるゲームを配信して、チャットをオープンにして攻略方法を話したりするから、見ている人たちとのつながりが生まれる。筋肉YouTuberだったら、自分のトレーニングを赤裸々に見てもらうことで、フィットネスとかボディメイクというものを広げていこうということだし。目的があれば手段なんてそれぞれでいいんじゃないかな。

 ただ、いろいろなものが増えるのはいいんだけど、たとえば楽器が弾けないのにバリバリのバンドマンにはなれないよね。下手上手いじゃなくて、まったく楽器ができないのにナンバーワンギタリストにはやっぱりなれないわけじゃん。技術介入度があって初めてプロって存在すると思うし、その競争率が高ければ高いほどスターダムの頂点はすごい景色なんだと思う。YouTuberはスマホで自撮りするだけでもなれるし、ちゃんとライトを仕込んで編集をがっつり入れてもYouTuberだから、ミュージシャンと同じで高みを目指すということがないと、その職業はなくなってしまうと思うんだよね。

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