1997年のメジャーデビューから20年近く、日本の音楽シーンの第一線を走り続けるロックバンド「Dragon Ash」。そのボーカルとして圧倒的な存在感を放ち、2015年にはソロ活動も開始したKjは、ファンの間ではSNSを使わないことで知られているが、その一方でテクノロジを愛する一面も持っている。
10月18日には、KDDI ウェブコミュニケーションズが運営するビジュアルブログ「g.o.a.t(ゴート)」のバージョンアップにあわせて、Kjを起用した新たなプロモーションビデオ(PV)も公開された。モーションキャプチャなど最新のテクノロジを詰め込んだ、従来のDragon Ashのミュージックビデオとはテイストの異なる作品に仕上がっている。
今回、Kjにインタビューする機会を得た。「音楽×デジタル」という切り口で、インターネットを使った音楽の届け方や、映像も含めた視聴方法の多様化、SNS時代に音楽が果たす役割などについて聞いた。
普通にロックバンドをしていたら、(モーションキャプチャ用のウェアは)絶対に着られないコスチュームなので、企画書を見せてもらった時からワクワクしていて、撮影も楽しめました。
(デジタル活用は)いいと思います。何でもそうだけど最初は慣れないもんだし、長く同じことをやってると、そういうことを嫌がりがちなので。アーティストがそういうものを提示して、ユーザーがそれを面白いか、面白くないか決めるということだよね。ただ、安室奈美恵ちゃんと、普通のロックバンドのビデオの製作費はゼロが2個くらい違うから、俺らはできないけどね(笑)。やれる人はバシバシやった方がいいと思います。
アプリは音楽ものが多いかな、マニアックなものが。曲の制作まではしないけど、触るのは大好きですよ(「Dance with Apps」の楽曲制作でアプリを一部使用)。機械に強いわけではないけど、日本ではかなり早いタイミングでMacも導入していたし。
俺は結構、CD買ったりライブに行ったりする方ですよ。でも、iTunesで買う音楽もあるし、Apple Musicで月額制で聴いてる音楽もあるし、すべての選択肢を使ってるかな。音はやっぱり良い方がいいから、ラップトップのスピーカーでは聴かないけど。ヘッドホンか、最低限クオリティコントロールされてるスピーカーで聴くことが多いかな。
SNSはやらないです。そんなに第三者に自分の思っていることを提示したいとは思わないから。それが俺の場合は、作詞だったり音楽だったりする。よく言っているのが、音楽家じゃない人がブログを書くような感覚で俺は曲を書いているのかもしれない。こういうことがあったなと感じたことを閉じ込めるために曲にしてみたり、想いを忘れないために曲にしてみたりって感じかな。
(現代でも)音楽は変わらないよ、やっぱり。音楽のない人生とある人生だったら、傍らに音楽がある人生の方が豊かに決まってるし、20年も30年もロックバンドを続けているやつがいるってことは、それだけ人生を賭したとしても辿りつけない頂きみたいなものがあると思って、奥深いから探求しているわけだし。俺たちは労働ではなく生きがいとして音楽をやっていて、聴く人も音楽が大好きで傍らに置いて生きていきたいから、ピックアップするわけだし、そこは変わんないよ。
iTunesとかもあるから、音楽は聴かれてると思うけど、CD普及率はもう破滅的に下がってる。ただ、日本のリスナーは、アーティストに対してめちゃめちゃ愛があるし、日本ほど誰かのコンサートとかライブであんなに涙流したり、踊り散らかしたりする国はないと俺は思ってる。ヨーロッパでもアメリカでも、こんなにアーティストを愛してくれる国はないんじゃないかな。
(演奏する)当事者だから、また捉え方が違うんだけど、やっぱりライブとかお芝居って生のものじゃない。パッケージングできない良さがあって、写真で見ても実際に行かないと風景が分かんないのと一緒だからね。
別にCD普及率が高かった時代も、ライブ自体は絶対に価値があるものだったし、それはもう変わんないんだよ。もし、360度動画で家でライブが観られるようになっても全然違うと思う。大勢の人の渦の中で、喋れないほどの大音量の中で、アーティストとかオーディエンスの汗が飛び散ったり、涙流したり、みんなが大声で歌ったりっていうのは、そこにいないと絶対体験できないものだから。だからお金払っても来てくれるんだよ。
いいと思うよ。音楽ってそれこそ、幼稚園児でもできるし、70歳の人でもまだやってるし、全員にやる権利があるわけだから。一部の限られた人たちだけが、人に聴いてもらえることを許されるなんてことは絶対にあっちゃいけないし、多分、世に出てるミュージシャンって言われてる人たちの何倍も才能がある人たちがいるはずだから、その人たちが少しでも評価されるチャンスが増えるならいいと思う。
ライバルが増えるって観点ではちょっと競争率が上がるけど、面白いことを考えて誰かを楽しくさせたり、誰かの心や体を動かしたいって人が1人でも多い方が、聞いてる人は楽しくなると思うよ。
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