米国のNational Network to End Domestic Violence(NNEDV)が2014年に米国で実施した調査でも、似たような数字が報告された。同調査によると、「匿名性」が虐待加害者にかつてないほど大きな力を与えているという。
筆者が話を聞いたオーストラリアのある警察官によれば、大勢の虐待加害者がソーシャルメディアに群がるのだという。所属する州警察の意見を代表する立場にないとしながらも、その刑事課巡査長はデジタルプラットフォームによって虐待加害者が大胆になっていると語った。
「相手から遠く離れた場所、ましてキーボードの後ろ側にいるのであれば、誰でもとても強気になれる。脅しや人の心を操るのが実際に始まるのは、そうしたときだ」(同巡査長)
あるテクノロジがダメなら、加害者は別のテクノロジを利用するという。
オーストラリアのDomestic Violence Resource Centre Victoriaで最高経営責任者(CEO)を務めるEmily Maguire氏は、「加害者はFacebookで被害者にアクセスできなければ、Twitterを試すだろう。Twitterがダメなら、電話。電話もダメなら、被害者の友達に接触する」と話す。
Al-Alosi氏は、元恋人に対して接近禁止命令を取得した女性について語ってくれた。接触手段を断たれた元恋人は、罵るメッセージを残すためだけに、その女性の銀行口座に10セントを振り込み、取引の説明欄にメッセージを入力していたのだという。
DVの被害者となり得るのは、異性および同性のパートナー、さまざまな人種や社会経済的集団、子どもである。だが、DVに関するオーストラリアの調査報告書によると、「性的暴力やDVの被害者になる最大のリスク要因は、女性であること」だという。DVでは、女性が男性によって苦しめられるケースが圧倒的に多い。
国際連合(UN)の推定によると、世界中の女性の3分の1以上は親密なパートナーによる暴力、またはパートナー以外の人間による性的暴力を経験したことがあるという。また、米疾病管理予防センター(CDC)によると、毎年、米国で殺害される女性の半数近くは、現在または過去の男性パートナーによって殺されているという。オーストラリアでも、平均で1週間に1人の女性が現在または過去のパートナーに殺されている。Lisa Harnumさんは2011年7月の最後の週にその1人になってしまった。デジタルな監視によって、Harnumさんは死への恐怖を感じていたかもしれない。
裁判記録を見ると、Harnumさんが死亡するまでの数カ月、Gittany被告はHarnumさんの動きを逐一追跡していたようだ。Gittany被告はマンションの室内に2台のカメラ、玄関の外側に1台のピンホールカメラを設置していた。警察によると、ピンホールカメラは「外からほぼ見えない状態だった」という。Gittany被告は、テキストメッセージを監視するプログラムをHarnumさんのスマートフォンにインストールしていた。
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