DVのサポートワーカーによると、このようなスパイウェアの使用は驚くほど当たり前になりつつあるが、法執行機関はようやくこの問題に真剣に取り組み始めたところだという。
2014年、米司法省は「StealthGenie」と呼ばれるアプリの開発者を起訴した。米政府によると、これはモバイルスパイウェアアプリの広告と販売に関連する初めての刑事訴訟だったという。
加害者は、被害者の知らない間にスマートフォンにインストールしたStealthGenieを使って、全ての通話とテキストメッセージ、電子メールを監視したり、スマートフォンに保存された写真や動画を閲覧したり、通話を盗聴したりすることができた。通話中でないときも、スマートフォンのマイクを通して被害者が話していることを録音することも可能だった。
StealthGenieはもう提供されていないが、検索すればそれを模倣した無数のアプリやプログラムがすぐに見つかる。その多くは、常時監視機能だけでなく、物理的な追跡機能も提供するとうたっている。
Domestic Violence Resource Centre VictoriaのMaguire氏は、「そうしたアプリはよくあるし、非常に簡単に見つけることができる」と話す。
スマートフォン監視アプリを販売する、あるオーストラリアのサービスは、「数メートル以内の精度でいつでも正確な位置を特定できる、リアルタイムGPSトラッカーと盗聴器」の2in1機能も宣伝している。このサービスは配偶者の浮気を暴く手段として自社製品を宣伝しており、潜在的な購入者に「真実を知りたいと思うのは悪いことでない」と告げている。
筆者が話を聞いた警察官によると、こうしたテクノロジがDVの事件で使われることがますます増えているという。最前線で働くその警察官は、「相手をストーキングして、誰と時間を過ごしているのか確認するために自動車に取り付けられたGPS機器、隠された監視カメラ、被害者のオンラインアカウントにアクセスするためにコンピュータにインストールされたキーロガー」などを見てきた。郊外でこうした監視技術が使われていることに驚く人もいるはずだ。
それらのテクノロジは発見されない場合もある。監視ソフトウェアは、本質的にその存在を隠すように設計されているため、加害者は簡単に発見を免れることができる。
「GPS追跡が行われている頻度に関する最新のデータはない。自分がGPSで追跡されていることが分からない場合が多いので、そうしたデータを収集するのは非常に難しい」(Maguire氏)
Al-Alosi氏によると、虐待するパートナーと過去に交際していた女性にとって、GPS追跡は特に問題だという。
「GPSで追跡されていることに全く気付いていない被害者もいる。被害者がそれに気付くきっかけはただ1つ。どこに行っても過去のパートナーに遭遇すること」(同氏)
筆者が話を聞いたDV担当ケースワーカーによると、虐待加害者はパートナーやその子どものために購入したスマートフォンにスパイウェアをダウンロードして、その親子が安全のために引っ越しした後も追跡するのだという。自動車やベビーカーにまでGPSトラッカーが取り付けられていたという事例もあった。
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