SmartSafeでは、オンラインで、またはスマートフォンを使うときに自分の身を守る方法について、リソースや助言へのリンクが示される。また、写真や動画を記録する、メモを残す、音声を録音する機能もあり、そのデータはすべてタイムスタンプ付きでクラウドに安全に保存される。ユーザーは、こうした全データをこのアプリ内から取り出すか、任意のコンピュータでメールアドレスとパスワードを使って安全なサイトにログオンし、ダウンロードして、証拠として警察に提出することができる。
「法廷に立って証言するとき、いろいろと書類を探し回らなくて済む。スマートフォンを見せるだけだ」(Maguire氏)
このアプリは、アプリストアやスマートフォン上に表示されないようになっており、米CNETもその方法について情報を開示しないようDomestic Violence Resource Centre Victoriaから求められている。理由は明白だ。スマートフォンの利用も通信内容も、一切をパートナーに支配されている場合の監視の目を避けるためである。
アプリには、「感覚チェック」の機能もあるとMaguire氏は言う。暴力を認めず、被害者の方がおかしいと主張するパートナーもいるが、そんなときに被害者の被害妄想ではないという証拠になる。
被害者やサバイバー救済のツールは、SmartSafeだけではない。例えば、「RUSafe」というアプリは米国のWomen's Center and Shelter of Greater Pittsburghが開発したもので、女性が自分の体験を安全に記録することができる。
他にも、被害者やサバイバーに居住地での情報やサポートサービスを提供するアプリもあれば、ユーザーのデバイスと連携して緊急時に警察に通報するというフローを設定できる安全対策アプリもある。
この問題は、政府や議会でも真剣に注目され始めている。例えば、7月1日にはオーストラリアの連邦政府が、基金として120万豪ドル(約1億円)を支出すると発表している。テクノロジを悪用する虐待の発見に努める最前線のサポートワーカーに対する教育を増強し、被害者のためのプライバシー対策実施を補助するための資金となる。
DVが、たった1つのアプリでなくなるわけではない。根深い虐待は、支配的な行為を黙認して、DVから目を背け、被害者を無力なままにする文化が生むものだ。
DVの被害は目を覆いたくなるばかりで、無数の生活が犠牲になり、命が奪われているが、テクノロジを役立たせることもできる。
筆者が話を聞いた巡査長も、長年にわたって悲惨な事件を直接目撃し、それに対応してきたが、希望を捨ててはいない。
「テクノロジを生かせれば、被害者は一方的に被害を受けるだけではなく、罰する側に回れるようになる。そうなったらとても強力な味方だ」(同巡査長)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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