LINEは6月28日、年に一度の大規模カンファレンス「LINE CONFERENCE 2018」を開催した。同日には複数の新サービスとともに、LINEが向かう今後の方向性などが示された。
7年目を迎えたLINEは、「Redesign(リデザイン)」をテーマに、FinTech、AI、エンターテインメント、Eコマース、メディア、広告など各分野の新たな取り組みを発表。特にフィーチャーしていたのが、“決済革命”をうたったモバイル決済サービス「LINE Pay」の新施策や、トークンエコノミー、仮想通貨取引所「BITBOX」といったFinTech分野だ。
LINE Payでは、SMB(中小・個人事業主)をターゲットに、スマートフォンがあればQRコードで決済できる店舗向けアプリの無償提供、店舗決済手数料0%(8月からの3年間、アプリ利用のみ)、クラウド会計サービスなどを手がけるfreeeとの提携を発表。また、ユーザー向けには「QUICPay」対応による決済店舗の拡充、QRコードでの決済で最大5%のポイント還元(8月からの1年間)を実施。積極的にキャッシュレス決済領域を攻めようとしている。
また、トークンエコノミーでは、LINEのサービスに貢献したユーザーに対して独自トークンで還元することで、サービスの成長とユーザーベネフィットをより結びつけようとしている。“And more” として発表されたBITBOXは、日米を除いた全世界でサービス展開する仮想通貨取引所。ビットコインやイーサリアムなど30のコインに対応しており、7月から提供を開始する予定だ。
決済革命からブロックチェーンに至るまで、FinTech分野を果敢に取り組む理由について、同社代表取締役社長CEOの出澤剛氏に聞いた。
――今回、テーマとして「Redesign(リデザイン)」を掲げました。このテーマにはどういった意味があるのでしょうか。
リデザインは、LINEがリリース時から大事にしているコンセプトです。LINEは当初、PCの延長線上のサービスとして検討していましたが、スマートフォン時代を見据えたところ、本質が全く異なる事に気づいたのです。PCは、ディスプレイが主体となっており、自宅やオフィスにあるPCに人間が向かう関係でした。一方、スマートフォンは、初めて人間の手と一体化したディスプレイです。1人1台持っていますし、24時間使うことができ、サイズも小さいので完全に人間が主体となりました。
そうすると、コンテンツの消費の仕方も、縦スクロールであったりと変わってきますので、頭をゼロにリセットして、インターフェースを一から変えていく必要がありました。場合によってはビジネスモデル自体も変えないといけませんし、根本に立ち戻ってデザインする必要がありました。
当時、「スマホ最適化」が叫ばれていましたが、前提が違います。今あるものを最適化するのではなく、根本から作り直さないといけません。このコンセプトはずっと生きていて、LINEが伸びてからは、スマートフォンならではの使い方として、LINEの主要機能であるコミュニケーションをベースにさまざまなものを組み合わせ、新しい付加価値をつけてコンテンツやサービスを再定義できないか、この7年間追っていました。リデザインはずっと重要なキーワードなのです。
――なぜ、もう一度リデザインをテーマにしたのでしょうか。
LINE自体も7年が経過し、ひょっとしたらレガシーな存在になってしまうのではないかという危機感からです。自分たちで一度LINE上のサービスを崩して、リデザインする必要があるのではないかという自身への問いかけが一つと、AIやブロックチェーンなどスマートフォン革命に匹敵するぐらい大きな技術的パラダイムシフトが起こりつつあるなかで、われわれが7年前にPCではなくスマートフォンを見たような、まっさらな目で新しいテクノロジに向き合う必要があると感じました。
イノベーションのジレンマといいますか、かつて強かったプラットフォーマーやデバイスが、技術のトレンドが変わった瞬間に消えていくのを見てきました。新しい技術に対してまっすぐに捉え、われわれがやってきたことをもう一度やろうという意味合いがあります。
――今回の発表において、最もリデザインに注力した領域はどこでしょうか。
もちろんすべてに注力しましたが、ブロックチェーン技術を使ったトークンエコノミー構想に関しては、2017年に「Clova」を発表したときと同じような、未来に対しての重みが非常にある内容だと思います。今すぐにトークンエコノミーが普及するとは思いませんし、もう少し時間がかかるでしょうが、未来への布石、未来への第一歩としては、コンセプチュアルだったものの、今の事業のなかで最もインパクトがあったと思います。
もう一つ、このタイミングで世の中に貢献できるものとしては「決済革命」に関する新施策ではないでしょうか。SMBの小売店向けに店頭用アプリを提供し、初期の導入費用と店舗側の決済手数料をゼロにしたほか、ユーザーには最大5%のポイントを還元します。
大手には、すでにさまざまなソリューションが入っていますし、オンライン決済も進んでいる領域ですので、この部分はJCBと組んで「QUICPay」に対応しました。一方、日本で現金が使われる要素の一つとしてSMBの店舗側のキャッシュレス化が進んでいません。そこに対して、ユーザーも店舗も動く座組を作れました。あとは実行のみです。
――LINE Payの“決済革命”では、店舗向けの手数料ゼロは3年間、ユーザー向けの最大5%ポイント還元は1年間の限定施策となっていますが、施策終了後の展開についてはいかがですか。
3年後の手数料などは今後公表する予定です。中国でAliPayやWeChat Payなどの事例を見れば、長期トレンドでの手数料は下がってくると思います。
われわれは、ビジネスモデルとして決済手数料で儲けようとは思っていませんし、メガバンクが取り組んでいると報じられているQRコード決済の話など、世の中としてこの方向に進むと考えています。中国の事例では、手数料は1%を大幅に下回るとされていますし、経済産業省でも手数料低減を目指すべきという話も出ています。
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