大手携帯3キャリアは、次の成長をどこに求めるか--2017年度の決算を読み解く - (page 2)

KDDI高橋新社長に問われる足元の業績

 KDDIの2017年度決算は、売上高が前期比6.2%増の5兆419億円、営業利益は5.5%増の9627億円と、好調な業績を記録。依然として主力のauの契約数減少は続いているものの、2017年7月より開始した新料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」の契約数が700万を突破するなど好調であるほか、傘下企業のMVNOの伸びが業績に貢献。法人や海外など、すべての事業で増益を達成している。

 しかし、KDDIは4月より、その好業績をけん引してきた田中孝司氏から、高橋誠氏へと代表取締役社長を交代。2018年度はまだ3か年の中期計画の途中ではあるものの、法人ビジネスやインフラなどを主に手掛けてきた田中氏から、コンテンツや新規事業などを多く手掛けてきた高橋氏に体制が大きく変わることから、同社が今後どのようにして好業績を維持していくのかが注目される。

新社長就任後初の決算会見となった、KDDIの高橋誠氏
新社長就任後初の決算会見となった、KDDIの高橋誠氏

 高橋氏は、5月10日に実施した決算説明会で、来期の業績予想とともに、同氏が力を入れる通信とライフデザインの融合について説明した。通信からdポイントへと事基盤を移すドコモに対し、KDDIはあくまで通信を軸としながら、au IDやau WALLETなどを活用して顧客に付加価値を提供する方針を維持する考えのようだ。

 その上で、今後の軸となる5GとIoTを活用した体験価値創造に力を入れ、収益の拡大を図ると高橋氏は説明。社内やパートナー企業のリソースを活用し、同氏がこれまで注力してきた、先端技術を活用した新規事業創出を積極的に推し進めるという。

 そして、高橋氏が最も力を入れると感じさせるのが、その新規事業創出の部分である。まだ同氏の体制になって間もないながら、4月26日には米ODGと提携してxR技術を活用したスマートグラスの開発を進めることを発表するなど、ここ最近KDDIは先端的な取り組みを打ち出す機会が増えているように見える。

KDDIは4月26日、米ODGとxRスマートグラスの開発で提携を発表。高橋氏の体制となって以降、先進技術の取り組みに向けたアピールが増えている
KDDIは4月26日、米ODGとxRスマートグラスの開発で提携を発表。高橋氏の体制となって以降、先進技術の取り組みに向けたアピールが増えている

 ただし、そうした取り組みの芽が出るのは先のこと。当面求められるのは足元の業績向上であり、KDDIは2018年度、利益1兆円超えを目指すとしている。そのために必要な取り組みとして挙げられたのは、依然として減少傾向が続くauの解約率を下げること。そしてもう1つはライフデザイン事業の拡大で、高橋氏は2018年度、au経済圏の流通総額と売上高を前年度比1.3倍に拡大するとしている。

 しかし、同社のライフデザイン事業戦略で大きく欠けているのが、UQ mobileやBIGLOBEモバイルなど、傘下企業のMVNOで獲得した顧客基盤の活用である。ライフデザイン事業でKDDIが重視しているのはあくまでauユーザーのみであり、傘下MVNOは低価格を求めるauユーザーの受け皿という位置づけから脱することができていない。

auの契約数は減少する一方でMVNOの契約数は伸びているが、その顧客基盤をいかに活用するかという部分が、KDDIの戦略上大きく抜けている部分でもある
auの契約数は減少する一方でMVNOの契約数は伸びているが、その顧客基盤をいかに活用するかという部分が、KDDIの戦略上大きく抜けている部分でもある

 高橋氏もこの点については「MVNOの上にわれわれのライフデザイン経済圏を乗せていくことを考えていかないといけない」と、問題意識は持っているようだが、具体的な施策については「検討を進めている」との回答にとどまっている。dポイントに軸を移したドコモ、ワイモバイルとヤフーとの連携を推し進めるソフトバンクと比べると、こうした点は明らかに遅れていると言わざるを得ず、いち早い対処が求められるところだ。

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