ミクシィ木村氏「コミュニケーションの分野に命運を賭ける」--決算は減収減益

 ミクシィは5月10日、2018年3月期通期(2017年4月~2018年3月)の決算を発表した。売上高は1890億9400万円(前年同期比8.7%減)、営業利益は723億5900万円(同18.7%減)、経常利益は727億1700万円(同17.8%減)、純利益は417億8800万円(同30.2%減)となった。減収減益となり、売上高も予想を下回ったものの、営業利益、経常利益、純利益は予想を上回った。

 また、四半期ベースで見ると、売上高は536億5800万円(前年同期比16.4%減)、営業利益は245億100万円(同24.6%減)、経常利益は245億1100万円(同24.3%減)、純利益は166億6200万円(同20.7%減)となった。

 第4四半期では、「モンスターストライク(モンスト)」において年末年始キャンペーンの実施やユーザー還元施策を実施。ユーザーの回帰を図った結果、エンターテイメント事業の売上高は513億8800万円(第3四半期は383億600万円)と、第3四半期の売上高を上回った。一方で、メディアプラットフォーム事業ではチケットキャンプの問題により、売上高は22億6900万円(第3四半期は38億7200万円)と、大きく減少した。


ミクシィ取締役執行役員で、6月に代表取締役社長に就任予定の木村弘毅氏

 ミクシィ取締役執行役員で、6月に代表取締役社長に就任予定の木村弘毅氏は、今後の経営方針として、「ミクシィに最も必要なことは、得意領域に経営資源をしっかりと集中させていくことだ」と語った。また、経営方針のポイントとして、事業ドメインの定義と、定義した事業ドメインでの事業遂行に適した体制の再構築の2点を掲げた。

 「我々の事業ドメインは"コミュニケーションサービス"」と語った木村氏。過去10年間、ミクシィの業績を支えてきたのは「モンスト」とSNS「mixi」だ。木村氏によると、「この2つのサービスは、かなり似通った事業」だという。両サービスの月辺りのアクティブユーザー数を見ると、指数関数的に上昇する曲線を描いている。木村氏は、これらのサービスはコミュニケーション体験を届けるものの延長だとし、「知人が知人を誘う、バイラルな拡散が無ければ起こり得ない」と指摘する。意識して発生させることが困難なバイラルコミュニケーションに対し、「知見を持っている」と自信を見せる木村氏。今後はモンストやmixiの成功に鑑み、バイラルコミュニケーションが発生する事業領域に対し、集中して事業展開をしていくとした。


モンストとmixiのアクティブユーザー数グラフ

 木村氏は、これを踏まえた今後の事業展開として、モンストなどのデジタルエンターテイメント、「XFRAG PARK」などのライブエクスペリエンス、「みてね」「minimo」などのメディア、出資やコンテンツ開発を含むスポーツ領域、ウェルネスの5つを掲げた。


事業を展開する5領域

事業展開マップ

 2つ目の経営方針となる体制の再構築については、役員の構成を見直す。事業展開を図る5領域それぞれに対し、執行役員を充てるほか、マーケティングなどを横断的に管轄する執行役員も配置する。また、チケットキャンプ問題への対応策として、社外取締役を3人に増やし、第三者委員会から指摘されたガバナンスやコンプライアンスの対策を強化とする。

 2019年3月期の事業戦略では、5つの事業ドメインにおいて、150億円を投資するとした。内訳は、モンストを含むデジタルエンタメに110億円、メディアに15億円、ライブエクスペリエンスとスポーツに各10億円、ウェルネスに5億円。モンストを核としたデジタルエンタメは大きく投資を行い、競合に対し優位性を保つ。新規領域については、事業を検証した後、段階的に投資額を増大し、将来の収益拡大に向けた準備を進める。


2019年3月期の事業戦略

 デジタルエンタメ・ライブエクスペリエンス領域では、モンストの国民的IP化を目指し、カードゲームや派生ゲームなど、さらなる多面展開を進める。モンスト5周年企画として、協力プレイの更なる強化やプレイ環境を変えるようなアップデート、YouTubeアニメや劇場版アニメの新作公開も目指す。また、新IPの立ち上げも予定。モンストで培った多面展開のノウハウを活用し、新IPを生み出し、新たな事業の柱を構築していく。

 このほか、スポーツ領域ではコミュニケーションサービスの展開を、メディア領域では「みてね」の展開国拡大を予定。ウェルネス領域では、京都大学との産学連携プログラムを進め、新たな運動プログラムを開発する。

 2019年3月期通期の業績予想は、売上高1750億円、営業利益と経常利益はそれぞれ480億円、純利益は310億円を見込む。減益については、モンストやチケットキャンプの売り上げ減少によるもののほか、各事業領域への先行投資によるものだとしている。


2019年3月期通期の業績予想

 木村氏は「コミュニケーションの分野にミクシィの命運を賭ける」と抱負を語るとともに、現代社会については「ITの発達により、本来あるべきコミュニケーションが失われている」という懸念をあらわにした。この問題に対し、コミュニケーションに関する社会的課題を解決に向けた新たな事業やM&Aに対し、3~5年で1000億円を投じていくというミクシィの中長期的な方針を語り、「それが私たちにしか提供できない価値」だとした。

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