リブセンスは、不動産テック業界で異色の会社だ。アルバイト求人サイト「ジョブセンス」(現マッハバイト)からサービスをスタートし、2015年に提供を開始した「IESHIL(イエシル)」は、IT業界に長く携わってきたスタッフが中心となって立ち上げた不動産情報サービスだ。
いい意味で不動産業界と距離を置き、テクノロジでできることの可能性を追求してきたリブセンスが、どういった経緯で不動産業界に飛び込み、IESHILを成長させてきたのか。リブセンス不動産ユニットのユニットリーダーである芳賀一生氏に話しを聞いた。
――主に求人と不動産という2つの領域でサービスを提供されていますが、会社設立時は求人情報サービスが主軸だったのでしょうか。
リブセンスは、Human Resources(HR)ビジネスからスタートした会社です。設立当初からSEOに非常に強みを持っていたため、広告費をほとんど使わずにサービスの認知を拡大してきました。
アルバイトが決まれば「お祝い金」を提供。今ではよくあるサービスの1つですが、リブセンスがアルバイト市場において初めて取り入れました。また、多くの求人サイトが掲載料を受け取る形で運営していたのに対し、掲載は無料で、応募や人材獲得ができた段階で利用料をいただく「成功報酬型モデル」によるサービス提供もアルバイト市場初となりました。
このお祝い金や成功報酬型の仕組みを不動産に横展開したのが、2010年にサービスの提供を開始した賃貸情報サイトの「DOOR賃貸」で、不動産物件の市場価値や治安、地盤などの評価をオープン化し、不動産査定価格などの情報を提供しているのがIESHILです。
――不動産情報サービスを開始しようと思ったきっかけは何だったんですか。
私自身は2015年に新規事業の立ち上げメンバーとしてリブセンスに入社しました。実は不動産事業だとは知らずに面接を受けたところ、弊社代表の村上が、「今、不動産が面白い」と熱く語っていまして、どうやら不動産の事業を始めるらしいと(笑)。
それまでヤフーやAmazonといったIT企業を中心に働いていたので、不動産業界のことは全くわからなかったのですが、新しい事業の立ち上げに関心があったことと、自分の中にある不動産業界のイメージからITが参入できる可能性が大きいと感じて、IESHILの立ち上げを担うことになりました。
――不動産業界に対する当時のイメージは。
不動産業界のことを勉強させていただきたいと思い、日米不動産協力機構(JARECO)に参加したり、不動産業界の方たちと話しをさせていただいたりしたのですが、調べていくうちに情報の非対称性など、少し歪みのある業界なのかなと思い始めました。
当時は不動産業界に明るくなかったこともあり、IT業界にいた自分からすると「なぜこれができていないのか」と感じることが多かったですね。例えば、不動産情報交換のためネットワークシステム「レインズ(REAL ESTATE INFORMATION NETWORK SYSTEM)」もオープンデータになればいいなと素直に思いましたし、なぜ売買における価格などの成約情報が不明なのかという疑問もありました。
その疑問を不動産業界の人にぶつけてみると、業界の慣習や商習慣があり、なかなか上手く進まないと仰っていたのです。さまざまな方と接点を持ち知識を増やしながら、日本の不動産業界の現状を理解していきました。
ただ、米国の不動産業界を見ると、不動産情報システム「MLS(Multiple Listing Service)」の仕組みがしっかりと動いていて、データに対する意識が日本とは全然違う。さらにZillow(ジロー)やREDFIN(レッドフィン)といった不動産テック企業の活躍もあり、平等でオープンな業界になっているんですね。そこはリスペクトすべきですし、こういう環境に変えていきたいと思いました。
そこで、不動産において最も重要な情報である「価格」をオープンにしていきたいという思いが強くなり、IESHILの開発に踏み切りました。
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