電通は2月23日、日本の総広告費と媒体別・業種別広告費を推定した「2017年 日本の広告費」を発表した。
同社によると、総広告費は緩やかな景気拡大に伴い、通年で前年比101.6%となった。世界経済の回復と企業収益の拡大、雇用環境の改善や円安株高など景気を後押しする状況が整う中、特にインターネット広告費の好調が全体を押し上げる結果になったという。市場全体としては、さまざまな局面でデジタル・トランスフォーメーションが進み、それぞれの媒体特性を生かした統合的なコミュニケーション活動が顕著になったと分析している。
媒体別にみると、「新聞広告費」(前年比94.8%)、「雑誌広告費」(同91.0%)、「ラジオ広告費」(同100.4%)、「テレビメディア広告費」(同99.1%、地上波テレビと衛星メディア関連)を合計した「マスコミ四媒体広告費」は、同97.7%となった。一方、「インターネット広告費」は、モバイルでの運用型広告・動画広告が伸長し、前年比115.2%の伸びとなったほか、「プロモーションメディア広告費」は、屋外、POP、展示・映像ほかが増加したものの前年比98.5%だった。
業種別(マスコミ四媒体、衛星メディア関連は除く)では、全21業種中6業種で増加。主な増加業種は、「不動産・住宅設備」(前年比108.9%、一般住宅)、「エネルギー・素材・機械」(同108.0%、ガス自由化関連)、「情報・通信」(同101.7%、ウェブコンテンツ、スマートフォン)、「自動車・関連品」(同101.5%、2BOX、軽自動車、SUV)などが挙げられる。
一方、減少した業種は、「家電・AV機器」(同88.6%、電気掃除機、電気理容・美容器具)、「精密機器・事務用品」(同88.8%、腕時計、デジタルカメラ)、「流通・小売業」(同90.3%、総合スーパー、コンビニエンスストア)、「官公庁・団体」(同91.9%、広告団体、外国官公庁)、「ファッション・アクセサリー」(同92.0%、カジュアルウェア)などとなっている。
総広告費の推移を媒体別にみると、特にモバイルにおける運用型広告、動画広告の成長が加速した「インターネット広告費(媒体費+制作費)」が、1兆5094億円(前年比115.2%)と4年連続で二桁成長となった。
媒体構成比も23.6%と、前年から2.8ポイント上昇。「インターネット広告媒体費」は、1兆2206億円(同117.6%)と、2016年より1828億円の増加となった。媒体費が初めて1兆円を超えた2016年に引き続き、2017年も媒体費は好調に推移していることになる。「インターネット広告制作費」も2888億円(同106.1%)と前年に続き、堅調に推移している。
このうち、運用型広告費は9400億円(同127.3%)。メディア側において予約型広告から運用型広告へのシフトが前年よりさらに進んだ結果、媒体費全体における運用型の構成比は77.0%と、全体の4分の3を超えるに至った。
特に、前年に続き動画広告が拡大。生活者のモバイルシフトが進み、メディアやプラットフォーマー側で動画広告メニューを拡充した結果、市場が順調に拡大した。運用型広告領域においては、モバイル向け動画広告が活況を呈し、成長をけん引している。
運用型広告をブランディング目的で活用する動きが活発化しており、従来、予約型広告利用が主だった自動車や通信などの業種で、運用型広告の活用が進んでいる。また、これまでマスコミ四媒体広告の利用率が高かった食品や飲料といった業種においても、インターネット広告の活用が進みつつある。
同社では、海外で発生したブランドセーフティ問題をきっかけに広告価値毀損への関心が高まったことを受け、各メディアやプラットフォーマー側ではその対応策が進んだとしている。また、広告主側においても、アドベリフィケーション計測のためのベンダー活用が進んだという。
広告制作費については、プロモーション(販促)ページの制作費が増加すると同時に、ソーシャルメディアのための広告制作費・制作関連(システム運用)費も増加。コンテンツの制作トレンドは、オウンドメディア完結型からソーシャルメディアなどプラットフォームとの連携型にシフトした。動画広告の制作費は、動画広告元年といわれた2016年からほぼ横ばいで推移。バナー広告の制作費は久々に増加したという。
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