デジタルトランスフォーメーション(DX)を実行しようとする際、新たな業務やプロセスを組織にどう組み込んで定着させるのか、組織のサイロ化や人材の不足をどう解決するのかは、重要かつ難しいイシューと言えます。本稿では、解決策の一つとしての“外部パートナー活用”の実態に関するデータを参考に、電通デジタルが考える、成果に結びつく外部パートナーの活用方法や役割について事例を交えながらご紹介します。
電通デジタルが委託し、Forrester Consultingが実施した調査(電通デジタル委託 Forrester Consulting社 ソートリーダシップ報告書 2017年8月「日本におけるデジタルトランスフォーメーションおよびデジタルマーケティングに関する実態調査:2017年度」)によると、「現在、自社のデジタルトランスフォーメーションの進捗度はどの程度か」、という質問に対して「達成」が11%、「取り組み中あるいは計画中」が78%という結果でした。さらに、「達成」と回答した企業における「重要視するデジタル改革実行上の要素」に踏み込むと、「主要なデジタル・テクノロジーの実装」(49%)に次いで「デジタルトランスフォーメーション戦略に則した組織の再編成」(46%)「組織におけるデジタルイノベーションの文化の育成」(44%)となっています。「デジタル改革の成功」と、「デジタル・テクノロジーの業務への落とし込み」や「組織改革」が不可分な関係にあることがここからわかります。
しかし多くの企業にとって、組織改革の重要性は認識するものの、実行までの時間や意思決定の問題など、そこに“ジレンマ”が存在するのもまた然りです。その解決策としては、まずプロジェクトをスモールスタートで試行する、最低限必要な業務プロセスや役割を定義し、内部機能や外部パートナー活用で始める、などが考えられますが、外部パートナー活用は果たして有効な一手となりうるのでしょうか。
上記を見てみると、現在外部パートナーを活用している企業は53%で、かつ、デジタルトランスフォーメーションで成果をあげている企業(=Hiデジトラ企業)ほど、外部パートナーを有効活用できていることがわかります。では具体的にどの領域において外部パートナーを活用し、成果をあげているのでしょうか。Hiデジトラ企業と、成果を出せていないと回答したLowデジトラ企業を比較すると、両者の外部パートナーの活用領域に差があることが浮き彫りになりました。
サービスそのもののデジタル実装は外部パートナーと共に両者取りくんでいるものの、Hiデジトラ企業はLowデジトラ企業よりも「ビジネスモデル変革」や「ビジネスプロセスの再設計」を重視し、積極的に自らのあるべき姿や現状のビジネスプロセス自体を変革しようとしています。一方で、Lowデジトラ企業は比較的既存業務の改善や立て直しに注力していることが推察できます。
また、次のデータを見ると、ゴールの明確化や戦略設計をパートナーと共に行っている企業も多く、企業内部にはない客観性への期待や、ボーダレス化が進みテクノロジ等によって一夜で競争環境が変化するこの時代において、自社で戦略設計を完結することの難しさが推察されます。
デジタルトランスフォーメーションの推進による「企業の持続的な成長」というゴールに向けて、企業はどのように外部パートナーを活用していくべきでしょうか。逆に外部パートナーはどういうバリューを企業に提供すべきでしょうか。ここからは、先述の調査結果も踏まえ、必要とされる外部パートナーの役割・提供機能を、整理してみたいと思います。
まず、外部パートナーについて論じる前に、組織やプロジェクトでデジタルトランスフォーメーションを実行する際の課題と、解決方法をいくつかのケースから整理してみましょう。
ケース(1)
組織をまたぐプロジェクトが立ち上がったが、結局各組織の役割から抜け出せず、頓挫した
この場合、多くはそもそものプロジェクトの目的やゴールがメンバー間で共有されきっていない、ということが課題の本質ではありますが、無論、それはそれでとても難しいことです。組織を横断するデジタライゼーションプロジェクトの場合、誰も取り組んだことのない課題に対してチャレンジすることも多いため、うまくいくのかどうか、という成否の部分にばかりフォーカスが当たり、その説得に時間を費やすことも間々あります。
この解決のためには、
ケース(2)
新たなデジタル戦略が掲げられ、実行を任されたが、何をやっていいのか正直わからない
このような「戦略と実行の分断」の場合、「戦略だけが立てられて実行計画にまで落とし込まれていない」「経営に現場の課題感が反映されておらず、現実味もなく自分ゴト化しない」などの状況が推察されますが、いずれの場合もプロジェクトの設計者は
ケース(3)
担当するブランドでアプリを作ったら、別の事業部からも似た機能をもつサービスが出た
「ありたき顧客体験」を設計していないか、組織間で共有していないケースです。アプリケーションや一つのサービスを作ることを最終目的とせず、自社ブランドと接点がある人全てを顧客と捉え如何に顧客体験全体をデザインし、ブランド全体でそれを実現し顧客に価値を提供してくか、ということを目的とすることが、組織がバラバラに動かないために重要になってきます。
これらのケースから、デジタルトランスフォーメーションプロジェクト実行上の重要ポイントとして、「組織のサイロを壊すためのハイブリッド人材の活用」「戦略と実行のシームレス化」「ありたき顧客体験を共有した上でのIT・施策導入」が挙げられます。ただし、これらを全て自社で解決することは難しい場合もあります。その際、デジタライゼーションの最終目的を共有できるか、戦略にとどまらず実行フェーズでも併走できるか、顧客視点に強みを発揮するか、などのチェックポイントで外部パートナーを検討すべきでしょう。
これまで組織をまたいだプロジェクトの難しさについてお話しをしてきましたが、デジタル環境によって、マーケティング4P自体もまた変化してきており、勢い、マーケターそのものに求められるスキルも変化してきています。
上記にあるように、「モノ」から「コト」へ、「事業のサービス化」が求められる中で、4Pの要素は密接に関係を強めてきており「それぞれを個別最適で順を追って考える」ではなく「連携していることを前提とし同時並行的に検討し、実行に移さねばならない」という難しさをはらんでいます。
「統合的に考えることの重要さ」はデジタル化する前と変わりません。しかし、たとえばアプリクーポンなどニーズと消費が同時に生まれる世界がデジタルによって実現可能になっていて、それを具現化するためには、リアルタイム・ライトタイムな4Pの運用、つまり「マーケティングの運用」を、データ戦略との整合やシステム部門との連携を行いながら一人ひとりの顧客に対して相対しながらやりきらなければいけない、マーケターやマーケティングチームにとってはとても要求の高い状況だと感じています。このようなフルスタックのナレッジが要求されるデジタル時代下のマーケティングにおいては、外部のパートナーで機能補完しながら「マーケティング運用」することが企業側には求められ、また、外部パートナーにおいては、それに対応する人材を質・量ともに備えておくことが重要となるでしょう。
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