数年前、「Oculus Rift」によって大々的にCESに再登場した仮想現実(VR)は、実に衝撃的だった。あれほどの衝撃は、その後おいそれとは訪れない。2017年にVRハードウェアの売り上げが鈍り、流行も落ち着いてくると、次にはAppleとGoogleのフレームワークを利用するスマートフォンアプリによって拡張現実(AR)が盛り上がりを見せ始めた。一方、新次元の「複合現実」(ホログラフィックを用いた仮想と現実の融合)という夢も、いまだ実現していない。「Microsoft Hololens」はあるし、Magic Leapの動向も気になるが、先週のCES 2018では新しいものは登場しなかった。
それでも、ARとVRについては新たな発見や傾向、語るべきことがあった。本記事で振り返ってみたい。
おそらくVRの業界は、一般の人にヘッドセットを使ってもらう、まして買ってもらうのは容易ではないことに気づいている。そこで、HTCは「Vive」ハードウェアをもっと熱心な層や、企業向けに絞りつつある。それが「Vive Pro」だ。ディスプレイの解像度が上がり、装着感も向上している。動ける範囲も広がり、Intelの「WiGig」無線アダプタを使えばコードをなくすことさえできる。PCとつながった状態から解放されるということだ。
Vive Proの価格は発表されていないものの、安くはないと予想される。それでも、真に一線を画すような待望の機能向上によって、VRを前進させている。最終的にはヘッドセットとしての価格もこなれてくるだろう。
一方、モバイルヘッドセットはトラッキング技術が向上しそうだ。LenovoとGoogleが共同開発しているVRの「Mirage Solo with Daydream」にはカメラが追加され、PCのVRと同じように、少し歩いたり動いたりできるようになる(詳細は後述)。
VRの問題点も、解消されつつあるようだ。VRゲームをしながら、実際に家具でつまずかないようよけることは、まだできない。VRヘッドセットにカメラが付いても、しっかりと現実世界を見られるわけではない。Occipitalは、ヘッドセットに付けたステレオカメラを使って、現実世界についての情報をVRに取り込むというデモを披露した。筆者も試したが、周囲の室内が常にリアルタイムでスキャンされ続けるので、現行のViveやOculus、Microsoft、「PlayStation」などのVRヘッドセットより認識しやすかった。おそらく、OccipitalのVR/AR SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と地図作成の同時実行)システムは今後のVRヘッドセットのひとつの形になっていくのではないだろうか。広いリビングルームで「ホロデッキ」のような仮想空間を歩き回る場合でも、動きやすくなるだろう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」