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スピーカ、シェアエコ、仮想通貨--LINE出澤社長が振り返る2017年

藤井涼 (編集部) 井口裕右2017年12月29日 10時00分
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 LINEにとって、2017年はまさに“人工知能元年”だったといっても過言ではない。3月にはスペイン・バルセロナで開催されたMobile World CongressでクラウドAIプラットフォーム「Clova」を発表。そして、10月に「Clova WAVE」、12月に「Clova Friends」と相次いでスマートスピーカを発売し、GoogleやAmazonに先駆けて日本でいち早く市場に参入した。


LINE代表取締役社長の出澤剛氏

 このClova事業を含めて、LINEは2017年をどのように駆け抜け、そして2018年に臨もうとしているのか。同社の代表取締役社長である出澤剛氏に聞いた。

2017年は「Clovaに始まり、Clovaに終わった」

――まず、1年を振り返ってみて、LINEにとって2017年はどのような年でしたか。

 何があったかを思い出すのも難しいくらい忙しかったですが、一言で言えば「AIの1年」でしたね。人工知能のClovaを発表して、これを搭載したスマートスピーカを2機種リリースしました。結果的にClovaに始まり、Clovaに終わった1年だと言えるのではないでしょうか。“第2のLINEを作る”という思いで2016年の秋くらいから動き出して、2017年に最も大きな動きになりました。

 またその間にも、さまざまな事業展開がスマートポータル戦略の中であり、ビジネス面でも広告収益が順調に成長して、多くの新しい挑戦ができた1年だったと思います。

――スマートスピーカ2製品を市場に投入してみて手応えはいかがですか。

 まず、このタイミングでスマートスピーカを出すということに意味がありました。スマートスピーカや音声インターフェース、そしてAIの領域はデータの量が勝敗を分けます。また、近い将来さまざまなデバイスに通信機能や音声認識機能が搭載されていくことを考えると、マーケットエコシステムはスマートフォン市場以上の規模になる可能性を秘めています。そうなると参入が遅ければ遅いほどやはり厳しくなるので、市場の初期段階からアプローチしていることが重要だと思います。

 リリースしてからの反響を見てみると、ユーザーの方々には想定通りのご利用をしていただいていますし、販売数も当初見込みのイメージ通りに推移しています。いろいろなユーザーの声をいただきながら、日々新しい発見をして事業を推進していますね。


スマートスピーカ「Clova WAVE」

――スピーカという本格的なハードウェアを手がけた点も、2017年の大きな変化ではないかと思います。品質保証やアフターサポートなど、ウェブサービスやソフトウェアとは異なる苦労があるのではないでしょうか。

 全く新しいことでしたので、思った通り大変でしたね(笑)。当然、ソフトウェアとは全く異なります。投資する金額も領域も異なりますし、プロダクトのライフサイクルも違います。ただ、今ではノウハウが蓄積されてきて円滑に事業を回せているので、2018年も新しいラインアップを投入するなど、大きな挑戦をしていきます。

「コミュニケーション」をキラーコンテンツに

――日本では主にAmazon、Google、そしてLINEの3社がスマートスピーカを本格展開していますが、消費者はどのような点でClovaを選んでいると思いますか。最近では、Clova Friendsで音声通話をするCMが印象的ですが、やはりコミュニケーションを軸に訴求していくのでしょうか。

 潜在的にガジェットが好きな方は、オンラインで商品を購入する場合が多いですが、Clovaはオンラインよりも量販店での売れ行きが好調です。そういう意味では、オンラインと量販店で購入する顧客層の違いはあるのではないかと思います。また、LINEのブランドイメージや、LINEを音声で使えるという点に魅力を感じて購入する方も多いのではないでしょうか。

 ご存知の通り、LINEの根幹にあるのはMAU7100万人がつながるプラットフォームであり、友人、恋人、家族、仕事仲間など、実世界の人間関係がすべてLINEでつながっていることが強みだと思います。このコミュニケーションを起点する考え方は、ClovaのみならずLINEのすべてのサービスで共通しています。必然的に、LINEでのコミュニケーションが楽しめるという点が、Clovaにとってのキラーコンテンツになっていくと思います。


 実際、Clova WAVEでは家族通話やLINEの音声読み上げ機能などを訴求ポイントにしており、購入されたユーザーのうち多くの方にご利用いただいていますし、お子さんがLINEを使って家族とコミュニケーションをしたい場合などにもお使いいただいているようです。小型のClova FriendsはよりパーソナルなLINEの使い方ができるので、キッチンで音声通話をする際などにお使いいただけます。また、LINE MUSICのユーザーが簡単な設定で音楽を楽しめる点も好評ですね。

 一方、Clova WAVEは赤外線リモコンに対応しています。日本ではまだインターネットに接続できるスマート家電やスマート照明は普及が進んでいませんが、従来の赤外線リモコンで動かす家電も音声インターフェースで操作できる点は、わかりやすいユーザー体験であり、強みになっていると思います。

 Clovaは今後もさらに進化していきますが、固定電話が減少して音声通話をする機会も減っている中で、LINEアプリを使いこなすのに苦労されるお年寄りの方や、まだLINEアカウントを持てない小さなお子さんが、音声インターフェースで家族や親戚とコミュニケーションできる機会を提供できるのではないかと思います。

 米国ではスマートスピーカの普及に2年くらいかかっていますが、実際のところスマートスピーカならではのキラーコンテンツが登場しておらず、製品の差別化が生まれていないという課題もあります。私たちはそのキラーがコミュニケーションだと考えており、今後ディスプレイ搭載モデルなどが登場すれば、その強みはさらに明確になると思います。

――スマートスピーカで音声などのデータが溜まってくれば、ゆくゆくはユーザーの“癖”を理解して、行動を先読みしてサービスを提供する「コンシェルジュ」のような役割も果たすようになると思います。

 Clovaに関しては、スマートフォンが使えないシチュエーションや、さまざまな理由でスマートフォンが使えない人に対してコミュニケーション手段を提供するというのが、1つの個性になるのではないかと思います。また行動の先読みもスマートスピーカの強みになると思いますが、一方で表現力というのも大きなポイントになってくると思います。無味乾燥なスピーカではなく、声をかけたくなるような個性をデバイスで表現することで使い続けてもらう必然性を生み出し、そこで蓄積された経験からユーザーのかゆいところに手が届く存在になっていくのではないかと思います。


「Lコミュニケーションがキラーコンテンツになる」と出澤氏

――GoogleやAmazonは、すでに数多くの外部パートナーのサービスをスマートスピーカ向けに提供しています。スマートフォンと同様に、いかにプラットフォーム上にコンテンツを充実させるかが重要になりそうですが、LINEではどのようにアプローチしていくのでしょう。

 今の段階でオープン化の動きなどには至っていませんが、多くのパートナー企業と話をしていて、順次拡大していく予定です。まずはLINEの中で運営しているさまざまなサービスと連携させながらスキルを増やしていき、ゆくゆくはパートナー企業のサービスとの連携なども拡大させて、エコシステムを構築していきたいと考えています。

 一方、ハードウェアについても自社開発のものだけでなく、ソニーをはじめさまざまなメーカーからClovaに対応したデバイスが登場する予定です。スキルとハードの双方でClovaのポテンシャルを拡大していき、ユーザーにとっての利便性、精度の向上、必然性の創出という全方位でスマートスピーカの可能性を生み出していきたいと考えています。

――11月には、国立情報学研究所とAIに関する共同研究をすると発表しました。どのような狙いがあるのでしょうか。

 先程申し上げたとおり、情報リテラシーが充分に備わっていないお年寄りやお子さんはスマートスピーカを必然的に使ってもらえる方々ではないかと思っています。国立情報学研究所の喜連川優所長も「せっかく研究するからには社会的な課題にアプローチしたいよね」という考えをお持ちで、両者の狙いが一致したところから共同研究を進めることになりました。

 特定の領域でしっかりと成果を生み出していくことを大事にしながら、教育、公共インフラ、高齢者・弱者支援、生活サポート、防災、子育て支援など、研究テーマを絞り込んで進めていきたいと考えています。国内最高峰の研究機関とご一緒することで、私たち自身のレベルアップやClovaの進化にもつながればと思います。

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