2017年も多くの波乱が巻き起こった携帯電話業界。総務省による指導や、MVNOの躍進に対して防戦一方だった大手キャリアが、一転して反転攻勢をかけ、顧客流出防止策を大幅に強化した。その一方でMVNOが苦戦し、経営破たんに至った企業も出てきている。さらに年末にはMVNO大手の楽天が、“第4のキャリア”として携帯電話事業に参入することを表明するなど、2018年も業界の大きな変動は続きそうだ。
2017年の携帯電話業界をひと言で表すならば、「キャリアの逆襲」といえるだろう。ここ2〜3年の動向を振り返ると、キャリアにとっては不遇の時期が続いていたが、さまざまな取り組みを進めることで、ようやくその状況を脱することができたといえる。
キャリアが長く苦戦を強いられた理由は総務省にある。万単位のキャッシュバックが飛び交う不毛な顧客争奪戦を繰り広げていた大手3キャリアに業を煮やしていた総務省が、2015年に安倍晋三首相の料金引き下げ発言をきっかけとして有識者会議を実施。そこで得た結論から、端末の「実質0円」販売を事実上禁止するなどキャリアの商習慣にメスを入れるガイドラインを制定した一方、市場競争を加速するべくMVNOの参入を促進した。その結果、キャリアは競争停滞で新規顧客の獲得が見込めなくなっただけでなく、MVNOへの顧客流出が加速するなど、一方的な防戦を強いられることとなったのである。
だが、2016年から2017年にかけて、キャリアはこうした状況を打開するべく、MVNOへの顧客流出を阻止するための施策を次々と打ち出してきた。その1つが、低価格で利用できるサブブランドの強化だ。中でもサブブランドの先駆けとなった、ソフトバンクの「Y!mobile(ワイモバイル)」ブランド学割施策の強化による若年層の獲得や、ヤフーとの連携強化によるサービス面の強化など、2017年もさまざまな施策を打ち出して顧客獲得を進めている。
またKDDIも、2016年に続いて傘下のUQコミュニケーションズの「UQ mobile」の強化を進め、積極的なテレビCMや店舗展開で販売を拡大。さらに1月にはMVNO大手のビッグローブを傘下に収めるなどして低価格サービスを充実。自社グループ内から顧客が流出しないための取り組みを強化している。
そしてもう1つは、従来より通信料を引き下げた料金プランの提供だ。NTTドコモの「docomo with」や、KDDIの「auピタットプラン」「auフラットプラン」がそれにあたり、いずれも端末の値引きをしない代わりに、毎月の通信料金を安くする仕組みをとっている。docomo withは10月時点で約70万、auの新料金プランは11月に300万を突破しており、これらプランはユーザーからも好評のようだ。
これら一連の流出防止策によって、キャリアおよびその傘下企業から、独立系のMVNOへと顧客が流出する状況には一定の歯止めがかかったようだ。実際、MVNOへの顧客流出に最も危機感を抱いていたKDDIの代表取締役社長である田中孝司氏は、11月2日の決算説明会で「2016年に比べると減少率は結構下がってきている。アンダーコントロールな状況になりつつあるんじゃないか」と話している。
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