携帯大手3社の第1四半期決算が出揃った。NTTドコモが小幅ながらも減収を記録、ソフトバンクグループも国内通信事業が減収減益となるなど、2016年度まで好調を続けてきた各社の業績が、総務省の影響や“格安”なサービスへの顧客流出によって大きく変わりつつあることが明確になってきた。今後、顧客流出阻止に向けた顧客還元策によって、各社の業績を一層圧迫する可能性が高まっている。
7月27日に発表されたドコモの2017年度第1四半期決算は、営業収益が前年同期比2.5%増の1兆1367億円、営業利益が7.0%減の2783億円となった。好業績を継続してきた同社だが、久しぶりの減益を記録している。
その理由の1つは、2016年度に償却方法を見直した反動が出ているためだが、もう1つの要因となっているのが顧客還元策である。2017年に入ってから同社は、「シンプルプラン」「docomo with」などさまざまな顧客還元策を打ち出しているが、docomo withの契約数は開始してから間もないこともあり、好調ではあるもののまだ30万弱。シンプルプランは同社の見込みよりも少なく、40万弱程度だったという。
むしろより大きな影響を与えているのが、2016年に開始した「ウルトラパック」や「子育て応援プログラム」だ。これらのサービスは2016年度の後半から始まったものであるため、いまその影響が大きく出て減益につながっているのだという。今後はdocomo withなどの影響も増えてくることから、より減収要因は増えていくものと考えられる。
ドコモが顧客還元策に力を入れる必要が出てきたのには、2015年から2016年にかけて実施された、端末の「実質0円販売」の事実上禁止措置など、一連の総務省の施策による影響、そしてMVNOやサブブランドなど“格安”なモバイル通信サービスへの流出が大きく影響している。そして、この傾向は他の2社にも共通したものとなっており、今後大手3社は顧客還元策によって、特に利益面の増加が見込みにくくなると考えられる。
その減益を抑えているのは通信事業の好調さだ。中でも「ドコモ光」は前年同期比1.9倍の384万契約にまで拡大し、ARPUの増額にも寄与。解約率は前年同期の0.62%から、0.67%とやや上がっているが、同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は「2年前に実施したタブレットの販促の影響」と話しており、スマートフォンの解約が増えたわけではないと説明する。
また今回の決算で、もう1つ大きな変化が見られたのがスマートライフ事業である。こちらはドコモの通信事業が不振だった時期から高い伸びを示し成長をけん引してきたのだが、今期は減収減益を記録している。その要因は、グループ会社であるD2Cの取引形態の変更による一時的なものであり、他の事業は順調に成長しているとしている。
だが吉澤氏によると、スポーツ動画見放題の「DAZN for docomo」など新規サービスの顧客獲得コストが先行して出ていることも、業績悪化に影響しているとのこと。先行投資を確実な収益化につなげられるかが、課題の1つになるといえそうだ。
そしてもう1つ、ここ最近同社の利益を押し上げてきたコスト効率化に関しても、今期は120億円と、年間目標となる900億円と比べると踏み込みが足りない印象を受ける。2017年度から本格的に吉澤氏の体制に移行しているだけに、顧客還元が必要になるなど外的要因が多くなっているとはいえ、減収・減益につながる要素が増えているのは気になる。一連の施策を先行投資として今後の業績向上につなげられるか、引き続き注視する必要がありそうだ。
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