一方で、苦境に陥ったのが独立系のMVNOである。キャリアからMVNOに移る顧客が急減したため、これまで順調に契約数を伸ばしてきたMVNOの勢いが止まってしまったのだ。
MVNOの停滞ぶりはあらゆる側面から見て取ることができる。たとえば、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が展開する、個人向けモバイル通信サービス「IIJmioモバイル」は、2016年まで四半期ごとに5万人近い純増数を記録していたのだが、2017年に入ってからは純増数が急減。2018年3月期第2四半期決算では、四半期の純増数がついに1万を割り込んでいる。
こうしたMVNOの停滞ぶりを受け、9割以上のMVNOにネットワークを貸し出しているドコモの純増数にも大きな影響が出ているようだ。ドコモは10月の決算説明会で、MVNOの契約数が予想を下回ったことなどを理由に、2017年度の携帯電話純増数予測を220万から130万へと、100万近く引き下げたことを明らかにしている。
そしてこの落ち込みは、ついにMVNOの破たんという結果も生み出した。「FREETEL」ブランドでSIMフリースマートフォンや、MVNOの通信サービスを提供していたプラスワン・マーケティングは、経営不振から9月に楽天に通信事業を5億円で売却。だが、それでも経営を立て直すことができず、12月4日に東京地方裁判所に民事再生法適用の申請をした。
同社は4月に消費者庁から、ウェブサイトに誤認を招く表記があるとして景品表示法違反の指摘を受けたことで信用を落とすなど、身の丈に合わない無理な施策を多く展開していたことが、破たんに至った要因の1つといわれている。だが、キャリアから流出する顧客が急速に減少したことで、想定通りの契約数を獲得できなくなったことも、破たんにつながる大きな要因となったことは確かだろう。
厳しい様子を見せるMVNOが増えた一方で、プラスワン・マーケティングから通信事業を買収した楽天の「楽天モバイル」は、合計で140万契約を獲得するなど順調に規模を拡大しているほか、ケイ・オプティコムの「mineo」も、積極的なキャンペーン攻勢で順調に契約獲得を進めている。そのため2018年は、MVNOの“勝ち組”と“負け組”が明確に分かれる、淘汰の時代に突入する可能性が高いといえるだろう。
そもそも700社近くに膨れ上がったMVNOのすべてが、狭い市場の中で生き残るというのは現実的ではない。体力が弱い中小のMVNOを中心に、撤退や規模を縮小する事業者が出てきても、何らおかしくはない。
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