携帯電話大手3社の第2四半期決算が出揃った。決算自体は前四半期と大きく変わりはないものの、その内容を見ると、格安スマホなどを展開するMVNOへの顧客流出に苦しめられてきたキャリアが、反転攻勢に転じている様子を見て取ることができる。大手キャリアの逆襲はどこまで続くだろうか。
NTTドコモの2017年度第2四半期の決算は、売上高が前年同期比0.5%増の2兆3001億円、営業利益が6.3%減の5488億円で、2四半期続いての減益決算となった。その主因は前四半期同様、前年度の償却方法変更の影響によるものだとしている。
今四半期の決算で業績よりむしろ注目されるのは、携帯電話の契約数である。契約数自体は前年同期比3%増の7536万と伸びてはいるものの、その伸びは前年同期と比べ約半分に落ちている。
そして同社は今回の決算で、携帯電話サービスの純増数予想を年初計画の220万から130万へと大幅に引き下げたことを明らかにしている。その理由について同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は、2016年旺盛だったスマートメーターの需要が一巡したこと、そしてMVNOの契約数増加が想定を下回ったことを挙げた。
一方でドコモ自体の契約数は減っているわけではないという。スマートメーターやMVNOはARPU(1ユーザーあたりの月間売上高)が低いと見られるため、ドコモ自体の契約者が減ることを考えれば、純増数の減少が業績に与える影響は大きくはないだろう。ただし、同社の契約数の伸び悩み傾向こそが、業界全体の動向変化を表している。
それは、MVNOの加入者獲得に大きなブレーキがかかっていることだ。MVNOの9割以上はドコモからネットワークを借りてサービスを提供しているが、そのドコモがMVNOの伸び悩みを理由に契約数を下方修正したことから、大手キャリアからMVNOへと流出する顧客が大幅に減少している様子を見て取ることができる。
ここ最近の動向を見ると、MVNOの伸び悩み傾向は顕著に表れている。9月には「FREETEL」ブランドのプラスワン・マーケティングが、経営悪化にともないMVNOによる通信事業を楽天に売却したことを発表している。また、11月7日に発表されたMVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)の決算を見ても、個人向けサービス「IIJmioモバイル」の四半期ごとの加入者獲得が1万を切るペースにまで落ちている。
そこに影響しているのは、キャリア側の顧客還元強化によるつなぎ止めや、サブブランドへの注力など、MVNOに対抗すべく打ち出してきた施策が大きな効果を発揮するようになったからだろう。ドコモもここ最近、顧客還元策や「ドコモ光」とのセット契約などによる囲い込み施策など、顧客流出防止に向けた動きを強めている。
もっともドコモの場合、MVNOが他社の顧客を奪って成長してくれれば収益増加につながるため、MVNOを完全に敵と見なしているわけではない。しかし、ライバル他社のサブブランドに対抗するためには守りを固める必要があるのもまた確かで、悩ましい状況が続きそうだ。
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