2018年も継続しそうなAppleとQualcommの訴訟合戦--Appleニュース一気読み

 Appleは2017年になって、Qualcommのチップ提供とライセンスを抱き合わせにし、ライセンス料をデバイス価格全体に対して課していた問題に対して異を唱えて係争してきた。しかしこの争いは当面解消されないかもしれない。

 Qualcommは7月に、Appleが省電力化に関連する技術を違法に利用したとしてAppleを訴えていた。しかし今回Appleは、同じバッテリ寿命に関する特許侵害でQualcommを訴えている。対象としているのはQualcommのSnapdragon 800とSnapdragon 820。これらのプロセッサを利用しているSamsungなどのスマートフォンメーカーは対象としていない。

 実際、Qualcommとの訴訟で、SamsungやIntelはAppleに味方し、ライセンスの仕組みに対して反論しているグループを形成しており、その連隊に水を差さない配慮をしているとみられる。

 その翌日、さらなる訴訟がQualcommから出された。iPhone Xに搭載された、画面をスライドしてアプリを切り替えるインターフェースについて、Palm Preを模倣していると指摘し、iPhoneがQualcommのイノベーションの上で成り立っている、という主張を補強する狙いが透けて見える。

 Qualcommは2014年に、PalmからwebOSやユーザーインターフェースに関する特許を購入している。Palm Pre自体は2009年に登場し、iPhoneキラーと目されたが、当時は思った効果を得ることはできなかった。

 Palm Preに搭載された同社の特許には、カードベースのマルチタスキングシステムが搭載されており、また画面をタッチしてカメラのオートフォーカスをする機能などもある。

 Qualcommは現在、Appleからのライセンス料の支払いを受け取れていない状態になっており、業績への影響も出ている。Appleは多くのスマホ関連パーツメーカーにとって最大顧客となっていることが多く、特にハイエンド向けの製品のみをラインアップしていることから、パーツも上位モデルを活用する例が多い。自社の利益を守りつつ、良好な関係を保つことが求められているのが現状だ。

 しかしそうした関係を一方的に断ち切る可能性もある。A11 Bionicでは、Appleは独自開発のグラフィックスへと切り替え性能向上をアピールしたが、その影で長年Appleにグラフィックスコンポーネントを提供してきた英Imagination Technologiesとの契約は打ち切られ、Imaginationは身売りする結果となった。

 iPhoneの電源管理に関して、今週はもう1つのニュースが出てきた。日本経済新聞が伝えた2018年にiPhone電源管理チップを独自に製造するというものだ。電源管理チップはメインプロセッサ、モデム、メモリに次ぐ主要で価格の高いパーツで、電源管理チップは、iPhoneを正常に充電し、エネルギーを過剰に消費しないようにするのに重要な役割を果たす。現在の電源管理チップのサプライヤーはDialog Semiconductorだが、この報道で同社の株は11月30日に36.83ユーロから20ユーロ台前半へと大幅に下落している。

 Appleはすでにメインプロセッサを自社開発に切り替えており、モデムについてはQualcommと係争しながら、Intel製チップを採用し、また自社開発に向けた動きも見せてきた。自社開発チップには独自の名前を与えており、メインとなるアプリケーションプロセッサには最新のA11 BionicのようにAシリーズを毎年更新しながら、Apple TVやHomePodなどのデバイスにも採用している。

 Apple Watch向けにはS3などのSシリーズを用意し、デュアルコア化、GPU搭載など高度化が進めている。またAirPodsやBeatsのワイヤレス製品に搭載したワイヤレスチップW1は、W2としてApple Watch Series 3に採用された。加えて2016年に発表されたTouch Barを搭載するMacBook Proには、macOSと連携する独立したOSで動作するT1チップが搭載され、Touch Barの制御とTouch IDのセキュリティ管理を行っている。

 例えば、LTE通信にも対応するモデムとしてWシリーズが進化したり、より高度にデバイスと連携する電源管理チップを準備することもあり得る。引き続き製造はTSMCなどが行うことになるだろうが、iPhoneの競争優位性を自由に設定できる優位性の確保は、すでにAシリーズの自社設計から明らかになっている。

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Macのセキュリティホールと、iOSの通知関連による不具合

 Appleのソフトウェアエンジニアにとって、先週は胃の痛くなるような1週間だっただろう。特にセキュリティに関連する問題の修正に追われたmacOSは、悪意のない開発者によるセキュリティホールの指摘に、安堵もしていたかもしれない。

 macOS High Sierraには、マシンの管理者権限を持つ「root」にパスワードなしで入れてしまう脆弱性の存在が指摘され、これの修正アップデートがすぐに用意された。この問題は、UNIXをほんの少しでも知っていれば、非常に重大な問題であることが認識できるほどの問題と指摘できる。

 Appleは書簡の中で、ソフトウェア開発に関するプロセスの見直しを明言している。また12月2日以降、通知関連のバグでiPhoneが再起動を繰り返してしまう症状についても、アップデートによって改善されている。

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